「忍者物語」子供編3
- カテゴリ:30代以上
- 2012/06/14 02:11:16
★コーデはお涼10歳で最初の仕事の頃です。
時々村に帰っては子供時代の服を着て
久しぶりの村を堪能してました。
本編
路賃とどっこいどっこいの金だが、
女だと女郎屋に売れるだろうと思ったからだろう。
だが3人とも、一斉に女郎屋とは別の道の
自分の村に向かって走り出した。
色々な村を抜けて、景色が変わりだすと
その子の心境に変化が出た。
どうやら自分は殺される様ではないようだ。
しかも女郎屋に売られる様でもない。
川で採った焼き魚を周りの大人の真似をして、
食べて、くるまったササに入った水を飲まされた。
最後の村を抜ける前に買っておいただんごを食わされて、
放尿をしたいと言うと其の辺りでして来いと言う。
既に縄は解かれている。
逃げようと思えば逃げられるが、すぐに捕まるだろう。
其れよりも、取り上げられた琵琶と三味線を
ちゃんと持ってきてくれているかが心配だった。
二人の男達が談笑をしている。
寛太と言う名を言って、どこの部屋にするかと言う事が話の内容だ。
三味線と琵琶が見当たらない。
心配そうに辺りを見渡すと見透かした様に
順平がその子を優しく引き寄せて言った。
心配するな、三味線は既にもう一人が先に村に持って行った。
そう言うと頭を軽くたたいた。
順平は子供の扱いに慣れていた。
夕菜の目に涙がたまった。
其の行為で一気に緊張がほぐれてしまったのだ。
まだ11歳の小娘だ。
母を殺され、逃げ回った日々。
隠れて腹がすけば、暗くなっても開いている食事処に
初めて入った。
大人しかいない所へ子供が来れば、誰もが見る。
其の内の誰かが金の為に侍に言うかもしれない。
一人でも席を立てば逃げ出す覚悟で蕎麦をすすった。
平気な顔をしなければ、泣けば尚怪しまれる。
其れが当たり前の顔をして、蕎麦を食べ終わると金を払った。
金勘定はできる年齢だった。
釣りを貰うような大金を出せば怪しまれる。
小銭を出しての支払いまで気を使った。
母親もそして匿っていた縁者達も
殺されたであろう事は推測が付いた。
家から左程遠くない丘の上の草むらから
多くの侍達が家を出入りするのを見ていた。
暫くすると侍達が数人残して、いったん引き揚げた。
母親は最初に布にくるまれて二人係で抱えられて
運ばれて行ったあれだろう。
逃げなさいと常に言われていた。
金も着物の色々な所に縫いつけられていた。
子供が大金を出すと怪しまれるからと
別に小銭入れも袂に縫いつけられて、
其れを解いて其処から出しなさいと言われていた。
金勘定も教えて貰っていた。
一人でも生きられる様に琵琶と三味線は
小さい時から教え込まれていた。
誤解から、ある男に執拗に追われていると聞かされていた。
父親が其の男の父と母と兄を主君の命令で殺していた。
腹違いの彼は忘れられて助かったと言うが
その男が別の主君に使えて其の者達と一緒に
父を殺した上に自分達も探していると言う。
常に死を覚悟の物心がついてからの生活で在った。
鼻をすすりながら、
夕菜は順平がくれた訳の解らない実を食べていた。
甘い果肉であり、初めて食べる果実で在った。
その頃には名と歳は言っていた。
其れまで殺されるのなら、名乗る必要も無いと
毅然と言い返していた。
殺さないで村へ連れて行くと言っていた事が
本当だと解ってから、夕菜に変化が在った。
其処で生き延びていれば何時か親の仇が取れると
子供ながらに決意をした。
やはり年の頃はちび達と一緒だった。
「夕菜、上手いか?」順平が聞くと
夕菜は素直にうなずく事が出来た。
「後ひと踏ん張りで村に着くから、
それまで体力をつけとかんとな」と言うと
もう一つ同じ実を手に渡した。
それから、また部屋割の話の戻った。
どうやら、自分が入れられる部屋には4人で入るには
きついと言う事らしい。
同じ様な境遇の人間が
其処に閉じ込められているのだろうか?
其処ではどんな処遇をされるのであろうか。
不安が絶えないが、
切られる事は無いようである。
もし、彩夜とお涼の関係がうまく行っているのであれば、
順平もこの子を連れて帰ろうとは思わなかったであろう。
お涼と寛太が余りにも仲が良すぎるのが原因なのか、
彩夜が長の娘である事が原因なのか、
大人の前でもお涼が彩夜に足蹴に使われている姿が
目に入ってくる。
そんな関係では一つの班として将来仕事をさせる事が
出来る様になるとは思えない。
大人の中に一人だけ初心者の
実力の無いものが入っての仕事は、
其の一人の初心者が足手まといになり
其の班を致命的に弱くする。
つまり一人が其の子に付くために
人数が一人減ったと同じ事になる。
簡単な仕事なら良いが、
難しい仕事の時は戦力を落とす原因になる。
其れよりも同程度の年齢のグループを大人が一人率いて、
簡単な仕事から覚えさせた方が将来的に使える物が出来る。
何か手を打たなければと思っていた所なのだ。
夕菜はあっさりと受け入れられた。
既に長は怪我で現場に出られらない。
現場の其々の班の棟梁が現状を知っている。
既に合議制が取り入れられていた。
夕菜が楽器が器用に使えると言う所が
くノ一達の必要としている人材と合致したのだ。
既に関所を通りやすく擦る為に
薬売りの手形は手に入れてあった。
薬問屋も危険な個所に薬を売りさばいてくれる人材は
必要であった。
薬問屋が出している通行手形が彼らに手に入りやすい事は
お互いの利益が合致していた。
更に人々の娯楽を支える芸一座を入れないと
領民達の楽しみにしている娯楽を取り上げる事になる。
偽物は兎も角、本当の芸人一座は通りやすいのである。
其の為に生半可な芸だと見破られる。
それなりの腕が必要であった。
お涼と寛太が食料探しに出ている数時間。
彩夜は先輩くノ一から踊りを習っていた。
山での実践を今から仕込むよりも
彩夜には別のくノ一として仕込んだ方が仕事になるとの
くノ一達の判断で在った。
勿論、雨で食料探しが中止になった時は
寛太もお涼も三味線を彩夜と一緒に教えられた。
3人とも、それには難儀していた。
にわか仕込みで通用する楽器ではない。
偽物が本物かはすぐに解る。
10歳頃から寛太は更に実践の
厳しい訓練を習い始めていた。
お涼と彩夜はそれより軽めの
訓練をくノ一に受けていた。
10歳になると明らかに男と女の体力の差が
出来て来る。
ギリギリまで仕込むとなる同じ訓練では
寛太が手の抜き方を覚えてそれが生涯
手抜きをする精神力が出来上がる。
其れだと忍者として使いものにならない。
反対に女児に強引に最後まで男と
同じ訓練をさせると
女の特性を生かしたくノ一としての
仕事の時に柔軟な動きや言動に
妥協性がなく、
手練手管を使う事に拘りが在って
苦痛になる。
詰り男の下に女が居ると立場に
業と身を落として下から男を
言葉巧みに持ち上げて
煽てる行為を仕事だと認識させるまで
時間が掛かるのだ。