地下神殿の石碑(命をささげる)
- カテゴリ:自作小説
- 2012/06/10 10:55:23
廃墟の奥に行くと石碑があった。
「黒の仮面と白の仮面。またはそれと対を成す神器を納めよ」
短い文章でそう書いてあった。
赤き武器と白の聖剣を納めるということは「命」を納めよということなのか?
「ニナ…引き返そうか?いや、覚悟ができていないのはボクなのか…」
「ルゥ。ワタシはあなたと死を迎えるなら不満は無い。でもこのぬくもりが消えるのは怖い」と、ニナはボクの腕をつかんでくる。
「おい、ちょっと待てよ。何で二人が死ぬ必要がある。この地下神殿が何をしてくれるって言うんだ?」と、スコットも反論してくる。
「ここで引き返せば…ボクたちは「魔王」になる。ヨシュアと同じだ。ヨシュアもそうだったんだ。父親の病気を治すために、自分が死ぬ?それで引き返した。その結果、黒い仮面に心を奪われたんだ。引き返せば…同じ道を辿る。人間は弱い生き物だ。強すぎる力は野心を。ふふふ。理屈では納めることが善であるように思える。だが、怖い。ここで終わる。それも自分の手で終わらせる。やはり怖い」
「怖いわ…ワタシも。でも、納めなくては、あなたの友人、ヨシュアさんは助からないと思う。それに世界から魔物はいなくならないと思う。世界を魔方陣のいらない世界へするためには」
「ああ、そうだな。ニナ…少し時間をくれないか?こういう時だからこそ「声無き声」に耳をかたむけたいんだ」
「はい…あなた」と、ニナはボクの胸の中へ顔を埋める。
ボクは灰色の天井を見つめた。
人生に…。外す。
思考を一つひとつ外していく。
姿勢を正して耳をかたむける。
動きを止める。
目をつぶる。
大丈夫、ぬくもりは消えはしないさ。命が終わるわけでもない。
わかるかい?
「…納めよう」そう言ってニナを見つめた。
「はい」と、ニナは青い瞳でやさしく見つめ返し、微笑んでいた。
「おい!おかしいよ。二人のいない世界なんて嫌だ!やめろよ!何を考えているんだ!考えなおせよ」と、スコットは叫ぶ。
「悪い…スコット。先のことは考えられない。今できる最善を実行する」と、ボクは石碑に手をのせた。
石碑が沈み、白い台座が現れた。
その上に赤き武器をナイフに変えて置いた。次に白い聖剣を置いた。
台座は沈む。
命を明け渡し、「死」が訪れると思ったが…そうではなかった。
「死」の先に「とても大きな光」があった。
それはとてもやさしいやさしい光。
不思議と思い出すは「ドッペルケンガー」だ。
鏡魔神と呼ばれる悪魔として怖れられていた。
だが、ほんとは違った。
「とても大きな光」だ。
「とても大きな光」が…「ドッペルケンガー」という自分を照らし出す。
そういう体験記を呼んだことがある。
あの時はよくわからなかったが…今がまさにそんな感じだ。
「死」の先にあるのは「闇」ではなく、「とても大きな光」
その光が大きすぎてボクたちは怖がっていたのかもしれない。
だが、スコットは泣いている。
「リルルーー!」
どうやらボクの身体は消えつつあるようだ。
ニナもまた消えつつある。
それは一時的なことだよってスコットに伝えた。
「え?」と、スコットは泣くのをやめる。
ボクたちは戻ってくる。
「本当か?」
本当さ…ボクたちの出会ったあの場所で待っていてくれ。
「おう!」と、スコットは笑ってくれた。
ボクとニナはお互いに微笑み、身体が消えるのを待った。
光に包まれ、ボクたちは消えた。
月日は経ち、五年の歳月が過ぎた。
「目覚めたか?やばいぜ。また黒騎士たちがこっちへやって来ている。どうする?リルル」
と、赤髪で黒目の男は聞いてくる。
「どうしましょう…また誰かが犠牲に。」と、ニナは暗い顔をする。
「…???ボクはリルルとも呼ばれているが。ルゥとも呼ばれている。それでもリルルと呼ぶならそれでいい。ボクと反対側に逃げろ。あいつらはボクが何とかする」
「おいおい、目覚めた途端、よくしゃべるところは変わってねぇな。はは、やってくるのはうちの近衛兵たちだよ。はは。どうやってここに帰ってきたのかはわからねぇけど、約束どおり帰ってきたな。おかえりだ。リルル」
「うん?ああ、ただいま、スコット」
「ただいま…スコット」と、ニナも恥ずかしげに言う。
「さあ、今日は宴会だ」と、懐かしいスコットの声が頭に響く。
やってきた黒騎士の先頭には「ヨシュア」がいた。
ボクの旅はまだ続くようだ。
完
何だか終わってしまうと、ちょっと寂しいですね。
でもお疲れ様。
物事は始めるのは簡単ですが、終えるのには努力が要ります。
がんばりましたね。
でもなんだかまだまだ旅は続きそうですね^^
なんていえばいいんだろ。今のこの世界に必要な気がしました
ありがとうw
いろいろ考えながら、今まで読ませてもらったよっ( ◠‿◠ )
これって自分で出版するってゆうか ほかの人にも読んでもらったらどぉ??
もったいないような気ぃがするんじゃけどなぁ∩(,,Ò‿Ó,,)∩
旅はずっと、続いていくんですね。
死の先の大きな光かあ。深いですね。
今日はお休みですか。
楽しいお休みをお過ごしくださいね(*^。^*)