Nicotto Town



王子様と金の毬 *腐注意報

原作は、『王女様と金のまり』とか『カエルの王子さま』とか、
『忠臣ハインリヒ』とか、いくつかの題名があるらしいですね。
私が読んだ事があるのは『王女様と金のまり』だったので、
今回はこの題名で^^


どこかの大陸の小さな国に、物静かな王子様がいました。
その王子様がある日王宮の中庭にある池のほとりで金色の毬を投げて遊んでいる時、うっかり受け止める手がそれてころころぽちゃん…と、毬は池に落ちてしまいました。
「えーと…」
王子様は口元に手を当て考え込むと、しばらくしてあたりを見回しました。
毬を拾うために棒か何かないかと思ったのですが、生憎きれいに整えられた中庭にそんなものはありませんでした。
そこで王子様は、毬に向かって精一杯手を伸ばしてみることにしました。

存在が軽視されているのか国が安定しているからか、王子様のまわりには、侍女や召使い、護衛の姿が一人として見当たらなかったのです。

「あ…」
しかし、一生懸命伸ばした指先はかろうじて毬に届いたものの、触れた指に毬は更に遠く、池の真ん中あたりへ漂って行ってしまいました。
「ああ…うわっ」
その拍子にバランスを崩し、どばっしゃんと池に落ちる王子様。
思わず大きなため息をつくと、その様子を笑うものがあります。見るとそれは、茶褐色の身体に黒い斑紋のついた大きなトノサマガエルでした。
「トロい奴だな」
その言葉に王子様が池から上がりながら唇をとがらせます。それを見たカエルが、
「よかったらおれが取ってきてやろうか?」と、言いました。
それを聞いて驚いて目を丸くする王子様。
「いいんですか?」
「ああ。ただし、その代わり条件がある。まず、あんたの部屋に連れ帰ってくれ。そしてご飯はあんたと同じ銀の食器で。寝る時はあんたと同じベッドに寝かせてくれ。条件はそれだけだ」
カエルの言葉を聞いて、王子様はにっこり笑って頷きます。
「いいですよ。そのくらいなら」
それを聞いて、カエルはぱっしゃんと池に飛び込みました。

カエルとカエルに拾ってもらった毬を手に王子様が部屋へ向かう廊下を歩いていると、それを見つけた侍女が大騒ぎします。
「王子様、なんという格好ですか。早くお召し替え下さいませ」
それからようやく王子様の肩にいるカエルに気付き、鼓膜が破れるかと思うほどの悲鳴を上げました。
「王子様、そんなきたないものを持ち込まないで下さいまし! 誰か! 早くその不気味な生き物をつまみ出してちょうだい!!」
その騒ぎに驚いたのか、カエルは「後で部屋に行くよ」と王子の耳に囁くと、ピヨ~ンと外へ飛び出して行ってしまいました。

王子様は部屋へ戻ると着替えを済ませ、まず窓を開けました。
そして侍女を呼ぶと、夕食を部屋へ運んでくれるように頼みました。
侍女は面倒だのなんだのとぶつぶつ口の中で文句を言いましたが、それでも持って来てくれることになり、ホッと胸をなでおろす王子様でした。

「あんたさー、王子様のわりには扱われかたが粗略すぎね?」
侍女が部屋を出て扉が閉まると、王子様の後ろから声が掛り、振り返ると窓際にいたのは、先ほどのカエルでした。
「カエルさん」
王子様は笑顔で窓へと向かいます。
「よく俺の部屋がわかりましたね」
「ああ。実はもう一年くらいここの庭にいるんだよ」
「そうなんですか? 全然知りませんでした」
カエルを両手ですくうように持ち上げると、王子様は部屋の中央にあるテーブルへと運びます。
そこへそっとカエルを下ろすと、自分も椅子に腰かけ、虫はあまり美味くないけど他に食べるものがないからしょうがない食べてみたけどやっぱり美味くないとか、他の池にいた時、メスのカエルに迫られて困り果て、カエルの姿のないここへ来たとか、とりとめもないカエルの話を聞きながら、城の中に大勢の人はいても普段一人ぼっちの王子様は、こんなに楽しい夜は初めてだと思うのでした。

朝。王子様が目を覚ますと、カエルは枕の上に仰向けになったまま、まだ寝ていました。
それを見て、昨日の事は夢ではなかったと嬉しそうに王子様は目を細めるのでした。
「ん…よお、おはよー~~~」
しばらくして、カエルが大あくびをしながら目を覚ましました。
「おはようございます」
それへとにっこり笑って挨拶を返す王子様。
「ところで朝ごはんどうしますか? 昨夜は部屋へ運んでもらえましたけど、毎回は無理だと思うので」
王子様の言葉に、カエルは答えます。
「それなら別に運んでもらわなくても、ダイニングへ連れて行ってくれればそこで食うぜ?」
「でも、昨日みたいな騒ぎにならないとも限りませんし」
「大丈夫。なんとかなるって」
カエルのとことん軽い請け合いに、王子様は多少不安を抱きつつもカエルを連れていくことにしました。


侍女が迎えに来て、王子様は食堂へ向かいます。
今度はうっかり見つかって騒がれないよう、カエルは服の中に隠しました。
食堂につくと、いつもは一緒に食事をすることのない国王が、どう言う風の吹きまわしか今朝に限って姿を見せていました。
「おはようございます。国王陛下」
席に着く前にそう挨拶をする王子様の方をちらっと見ることもせず、国王は食事を始めてしまいます。
そこで王子様も席に着き目の前に畳んであったナプキンを広げると、召使いがスープの皿を運んできました。
すると、その匂いをかぎつけたらしいカエルが、王子様の服から這い出してきました。
それを見つけた召使がびっくりして腰を抜かし、それを見た侍女がカエルに気付き大声を上げ、それに驚いた陛下の護衛が食堂に飛び込んできて、王子様に対して無関心だった国王も、「なんだそれは!」と、怒号を浴びせます。
その大騒ぎに、王子様はどうしていいかわからずただおろおろするばかりでした。
「なんだよ、うるせー親父だな」
その騒ぎの中カエルがそう悪態をつくのを聞いて、王様は護衛官に命令します。
「この無礼なカエルを叩き出せ!」
王子様はびっくりして何とか止めようとしますが、王様の命令こそが絶対の護衛官は耳を貸しません。剣を鞘ごと腰から外すとまわりの食器ともどもカエルを弾き飛ばし、カエルはべしゃっと嫌な音を立てて壁に叩きつけられました。

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2012/06/08 23:37
私はこの話し・・・御姫様バージョンで読みました~さて・・・どうなる・・・
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2012/06/06 19:59
シフォンさん、今晩は。
私も小さい頃に読んだきりで、うろ覚えなんですけどね^^ゞ
竜頭蛇尾ならぬ蛇頭なめくじ尾になりそうですが、
納得のいくラストが迎えられるように頑張ります^^
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2012/06/05 23:23
『カエルの王子さま』というのは聞いたことがあるけれど
そういえばどんなお話なのか知りませんでした。
しかもこんなところでつづきになるなんて!
すごく気になります^^
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2012/06/04 19:16
☪ りょう ☪ さん、今晩は。
原作だと、王女様自らがカエルを壁に叩きつけてたりします^^;
なかなか過激な王女様w
続き…お気に召していただけるような展開だといいんですが^^ゞ

ゐ故障中さん、今晩は。
おお、それは斬新ww
と言うか、それではどこも腐ってない気がするんですが?w
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2012/06/04 16:57
え!?
まさか、これで簡潔という、斬新なオチwww
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2012/06/03 20:41
こんばんは。
おお、新しいシリーズが。
原作は読んだことないですけど、安奈さんのお話の続きは気になりますね。
カエルさんと王子がどうなってゆくのでしょうかw



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