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■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(2)

■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義|一 (2)

輓近我が文壇に自然主義の這入つて來た光景も亦た「日の出前」と呼びたい。茲では文壇の夜あけがたに、何時となく東山の第一峯から鮮やかな一道の光を射上げて來た。萬物は一濟に頭を回らして之れを見つめてゐる。中には早く既に若い日の息に感じて歡呼の聲を揚げるものもある。自然主義といふ一語の被らされる限り、小説も何となく清新なものゝやうに思はれ、議論も何等かの新暗示が其處に期待せられるやうになつた。作に於いても論に於いても、自然主義といふ一語が不思議に今の文壇を刺戟する。殊に新代の人に對しては、此の刺戟力が鋭い。此の事實だけでも、十分の考察に値する現象である。さて續いて昇る日影、我が文壇の前途は何であらうか。



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*註1:輓近
「輓」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ban_hiku.jpg
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註2:文壇
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
「壇」の俗字体。「旦」が「且」。

*註3:這入つて
「這」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註4:日の出前・前途
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
「途」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註5:茲では
「茲」の俗字体か(?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg

*註6:一道
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註7:既に
「既」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg

*註8:被らされる
「被」の俗字体(か?)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hi_kaburu.jpg

*註9:小説
「説」の旧字体。「言」+「兌」。

*註10:清新な
「清」の正字体。「月」が「円」。

*註11:新暗示
「暗」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/an_kurai.jpg

*註12:鋭い
「鋭」の旧字体。旁は「兌」。

*註13:十分
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

(2014/09/04/初校)




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