お涼の活躍18お涼死す!(忍者物語)38
- カテゴリ:30代以上
- 2012/05/04 18:24:00
やわらかいタケノコだ。慎重に傷つけない様に掘って行く。
ひとつ、また一つとタケノコが籠に入る。
3つ目のタケノコを慎重に掘っている時であった。
背中が突然瞬間的に熱くなった。
あっと思って振り返った時に
首の傍を光るものが通り過ぎた。
反射的によけたが、首を数センチ切られた。
其のまま後ろ向きにひっくり返って急斜面を転がり落ちた。
ササをなぎ倒して転がり落ちる時に
ザザザーア、バキバキバキッと大きな音がして、
其のままドシャバッチャーンと誰かが川に落ちた音がした。
水車小屋で仕事をしていた人たちが、
水車を止めた時である。
なんだ、なんだ!と水車小屋から男達がかけてきた時は
上から滑り落ちて川に其のまま落ちた後と
一人の婆さんが川に半身頭から落ちている。
川は入って渡れるほど浅くない。
すぐに丸木橋まで戻って駆け付けた。
上をふり見ると誰かがすっと飛ぶように上がっていく。
見慣れ無い奴なのは解った。
急な斜面なので、そう簡単に登れないからである。
だが、普通の人より早いのは解った。
一人が川に落ちた女を引き上げて叫んだ。
「お、お涼さん、どうした、誰にやられた!」
だが、返事はない。
「戸を持って来い」と一人が叫んで、
一人が「薬屋だ。」と叫んだ。
水車小屋の戸を持って来た男と
其の男がお涼を戸板にのせると
すぐに運び出した。
与一の家にである。
その途中で人々が集まってきた。
お涼だと解ると叫び声を上げた。
与一と正太はまだ城の仕事が始まってないので
近所の修繕を頼まれて行っていた。
知らせを聞いて飛んできた。
「お涼、お涼」与一が戸板の上の
お涼の体を揺らすが返事が無い。
色が真白である。
切られた背中と首のからの血を川の水が
必要以上にどんどんとすいだしたのだ。
それでも頭から川に突っ込んだので
最初は赤かった顔が戸板で運ばれている内に
みるみる白くなった。
首からの血と言うよりも
背中からの血が戸板に貯まって滴り落ちていた。
お涼の家について、
佳代は急いで布団を引いて、みんなで乗せたが、
誰もがすでに死んでいる事は解った。
が認めたくなかった。
佳代も「おっかさん、しっかりして、おっかさん」と
しがみついて叫んでいる。
正太は現実が恐ろしくて、
布団の傍に寄れない。
認めたくない物がそこにあった。
絶対に死なない手練れ忍者のはずだった。
其れこそ、80さい、90さい、100歳と生きて、
化け物の様なお婆になって、
相変わらず人の面倒を見て、
相変わらず疲れると与一の胡坐をかいた膝に、
突っ伏すように突然延びて寝ていてはずだ。
子供が父親の膝の上で全てを預けて眠る様に
小一時間寝るとむくっと
起きて何事も無かった様に働き出す。
其れが永遠に続くと思っていた。
近所の男が無理やり薬屋を連れてきて、
「何とかしてくれ」とせがんでいた。
健三郎が知らせを聞いて飛んできた。
「誰が、誰がやった!だれだぁ!」
「見たことのない知らん奴だ。
山を最初は下りかかったが、
俺達の様子を見て急いで山を登って行った。
あんなに早く登れる奴は、忍者かもしれん。」
最初に川の向かい岸に駆け付けた男が言った。
「俺が橋を渡って、ふりむいた時そいつは可なり上を登ってた。
でも、見たことが無い奴だという事は解った。」
その時、自称死んだ大工の身内と言う
もう忍者だとみんなが解っている男が来た。
冷静な其の男もお涼を見ると一瞬、
くらっとよろめいた。
それから、自分を落ち着かせると
最初に見たと言う男に服装を聞いていた。
服装は曖昧な記憶の返答だった。
しかし立原の忍者以外に考えられない事だった。
「忍者にお前が負けるはずがないだろう。
お涼、違うのか?お前はこの国一の忍者だろう」と
泣きながら声をかけた。
香魚姫が八重に連れられて来た。
ショックで歩けないのである。
布団に寝かされた、明らかに死んでいる其の姿に
「ああ、ああっ」と言って手を差し伸べるが
そのまま土間に座り込んでしまった。
隣の末が来て、しばらく手を合わせていたが、
佳代を呼んで、これから用意する物をこまごまと言った。
誰かが、其処に強引に城付の医者を連れてきた。
健三郎と良太と丁作が医者を囲んで
脅迫の様に何とかしろと言っている。
死んでいると医者が言っても、
「そんなことは解っている。
だから何とかしろと言っているんだ!!」と
胸倉をつかんで唾を飛ばして怒鳴った。
「なんでだよう、なんでだよう~ぉ」と
良太が泣きながらこぶしで壁をたたいた。
人が収集が付かない位集まってきていた。
侍が一人入ってきて、
お涼に土間から手を合わせると、
香魚姫と八重を促すと其の人ごみを
抜ける様に引きずり出して、
家に連れ帰った。
数少ないと言うか、片手で余る数の読者でいてくれる優しさをありがとうございます。
それにしてもショッキングなスタートですね(;o;)
これからの話の展開が楽しみです(*^^*)
お涼は一生懸命その時、その時を不器用でも生きていく子でした。
辛い思いを一杯しました。
でも、その分、こっそり助けてくれる人が居ました。
寛太がそれとなくいて、夕奈が毅然と彩夜を詰りました。
その分夕奈が阻害されても、夕奈は動じませんでした。
プライドで芸で勝負して行きました。
大人のお隅が居ました。
そして本当に大人の男の与一が居ました。
公家でもなく、侍でもなく、金もありません。
でも、瞬時に決める所は決めれる男でした。
生真面目な男です。
昔の仲間に誘われれば女郎も買いに行きます。
自分よりベテランの年上の大工がまだ棟梁の所で住み込みで働いてます。
其の男達に女郎屋に誘われれば断れません。
お涼はそんな立場も見抜いて何も言いません。
恥をかかせないお金を持たせるだけです。
お涼の過去も与一は何も言いません。
最初に与一がお涼を見たのはお涼が15の時の旅でした。
与一の取っては高値の華です。
凄い可愛い踊り子が居るとアイドルを見る様な目で見て居ました。
次に見た時は足をひきづっているお涼でした。
見るからに辛そうな様子にもし、僕で良いならと言いますが、冷たく拒否されます。
其れでもお隅の所へ来ている時は、何かとお隅の所をうろついて
三味線なども買って見たりします。
お涼が居る時は一回幾らで習いに行きますが、お涼が居なくなると通いません。
その内にお隅はもうお涼は二度と此処には来ないと言われます。
ルートが別になるからです。
与一はお涼を諦めます。
そして次に会った時から二人の話が始まります。
二人とももういい大人の男と女です。
何もかも解ったつもりのお涼が、女になって行きます。
子供時代はあった。些細でも青春のごたごたみたいなのもあった。
でも、男を愛する女時代が無かったのです。
其れを少しずつ 感じて行きます。
子供も将来を考えて、読み書きそろばんを男は習わせたり、
佳世に縫い子の腕をつけさせます。
教育ママにもなります。
生活は決して豊かな方ではありません。
そんな日常が「幸せ」と言う事なのかも知れません。
お涼ちゃんの血?
最後の一言も言えず・・・
人のためバッカリにいつからなったのか・・・
何で斬られたのかナァ・・誰でも良かったというなら・・・残念です
これも誰かのために?なってるのか?
頑張ったね?おやすみ・・お涼ちゃん