Nicotto Town



続ワンコ侍 (上)


夜空の星が瞬く影で 悪の笑いがこだまする

街から街へと泣く人の 涙背負って始末旅

今宵も奴らが 天に代わりて悪を討つ


時は江戸 仁湖斗藩にて、見事悪を倒したご隠居一行。

されどご隠居たちとはぐれたワンコ侍は空腹に耐えかねていた。

行き倒れてしまうのか!そんなワンコを待ち受けるものとは……。


ご隠居たちとはぐれて数日、ワンコ侍は、お腹が空いていた。

「山へいくなの!キノコや木の実なんかがあるはずなの!」

ところがクマも人里に下りてくるこのご時世、山に食べ物などなかった。

ヨロヨロと仁湖斗神社の狛犬に、寄りかかるようにへたり込むと急激に眠気が襲ってくるのだった。

「も~ダメ…眠いよぱとらっしゅ~」

意識が途切れかかったその時、人の気配が近づいてきた。

「およ?兄さんこんなトコでなにしてんの?」

「…」

「ひょっとして流れ者か、何かかい?」

「…」

(ぐぅ~~~)

その時、ワンコ侍のお腹の虫が鳴いた。

「腹が減りすぎて喋れないってか」

男はクスクスと笑いながら

「ちょっとそこどいとくれ」

というとワンコ侍の寄りかかっていた狛犬の口に手を突っ込んだ。

「あったあった…。兄さんついてきな蕎麦でも奢るぜ」

粋に着流しを着た男の右手には、いつの間にか小さな巾着袋が握られていた。



「なるほどな~ご隠居とかくさんって2人を探していると」

「ずずずず~~そうなの!寂しいなの!心細いの!お腹空くの!」

ワンコ侍の食いっぷりを眺めながら、男は笑い出した。

「おっと俺は京、一般人よりちょっとだけイケメンなかんざし屋だ。 よろしくな」

ワンコ侍は抱えた丼と一緒にうなづいた。

「おっとコレの話だったな」

京は神社から持ってきた巾着袋を持ち上げ話し出した。

「仁湖斗神社にはな、都市伝説みたいなのがあるんだわ

 あそこに金置いて拝んどけば、ドコの誰かが恨み晴らしてくれるってな。

 巷じゃ仕事人なんて呼ばれてるらしいぜ」

ワンコ侍は黙ってうなづいた。

「まあ、そんなヨタ話信じるアホもいないとは思うんだが

 時々マジで金がある時があるからさ、そんときゃありがたく頂くって寸法だ」

京は巾着袋をブラブラさせて見せた。

中で硬貨同士がぶつかりチャリチャリと金属音を奏でている。

「まあこの感じじゃ、あんまり入っては無さそうだな」

京は袋を空けた。そして紙キレを取り出して目を通している。

「ん? どうしたなの?」

「アンタを飢え死にから救ってくれた娘のお話 読んで見るかい?」

京はワンコ侍の前に、手紙を放り出した。

「詐欺でだまされて有り金奪われ、父親も殺され自分も売られちまうから敵をとって欲しいってさ~」

「ま、俺のような少しイケメンなだけの一般人に渡っちまったら、どうしょもないがな」

京は顎に手を当てて、キリリとした顔を作って見せた。

「まあ、せめてもの罪滅ぼしで人助けってわけさ。 いや犬助けか?」


京とワンコがそんなことを話していると、外から悲鳴が聞こえた。

「キャ~やめて、おとっつあ~ん! 助けて~」

「城下のめぼしい娘は、全て仁湖斗様がお召しだ! 御触れを知らんわけじゃあるまい?」

「娘は、娘だけは~」

「文句があるなら藩主に言いなよ! ぎゃ~っはっはは」

にわかに、店の中もざわつき出す。

「うわ~また藩お抱えのゴロツキだよ」

「あいかわらずエグイことやりやがる」

ボソボソ声で、あちこちから声が上がる。

「仁湖斗家の当主、仁湖斗三四郎は当代切ってのエロオヤジでな

 手紙の彼女も嵌められた、ど悪党よ! あれはそこのチンピラ君だな

 何せ藩主自らが首謀者なんで、ここいらじゃ誰も逆らえないのさ」

そこまで言うと京は、チラチラとワンコ侍を見つめた。

「で、正義のお侍様としては、助けたりはしないのかい?」

「ふむふむ…でもご隠居さんがいないとたいぎめーぶんが立たないのよね」

「侍ってのは、面倒なんだな」

京は落胆した素振りも見せず、窓の外へと視線を移した。

(無念を晴らして…なのね)

ワンコ侍は、しばらく手紙を眺めていたが不意に立ち上がった。

「おい兄ちゃん? どこいくんだよ」

「食後の運動なの!」

ワンコ侍は厳しい顔をして店を後にした。

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2012/05/04 23:25
続きが楽しみ♪

さた、ワンコ侍はどう行動するのでしょうか

それは明日のお楽しみ~



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