春が駆け足で過ぎ去ろうとしているある日、 ポチとチビいやもとい、メガ王女と王子はみなわが出かけたのを確かめた後、家の中をあっちへ行ったりこっちへ行ったり何かを探していました。
「お姉さん、見つかった？」
今の軒下を覗いていた王女は「まだよ。ちゃんと探すのよ」と、声をひそめて言った。
「ねー、ピーちゃんって、ほんとに軒先に居るの？」
「みなわはそう言っていたわ。冬眠って」
「…もう春だし」
「そうね～」
「ねえ、大きな声で呼んでみたら？」
「そうね、そうしましょう」
家じゅうの空気を吸い込む勢いで腹式呼吸した王女は、割れんがごとき大音響で「ピーちゃん！！」と叫んだ。
『ポトッ』
っと、軒から何かが落ちてきた。
「キー！イテッ！誰だ、そんな馬鹿でかい声で俺を呼ぶのは！？」
「ピーちゃん、そんな所に居たの？」
「キーなんだよ、ポチとチビか…」
からかいながら言ったピーちゃんの言葉に、王女と王子はすごい顔で睨み返した。
その剣幕に少しひるみながら、ピーちゃんは「何の用で俺を呼んだ？」
「だから、そのポチとチビが問題なの」
「あのね、僕たちみなわにお願いして名前を変えてもらおうと思うんだ。だけど、頼んだくらいじゃみなわは名前を変えてくれないと思うんだよ」

「キー、ふん！あたってるな。俺もそう思うぜ」
「だから、私たち考えたの」
「僕たちね、みなわに何かプレゼントを贈ろうと思うんだ。す～～～っごく素敵なプレゼントを渡したら、みなわも喜んで名前を変えてくれるんじゃないかな？」
「キィ？…その、す～ごく素敵なプレゼントっていうのは、どうやって手に入れる気だ？」
「それなの、問題は」
「僕たち、納戸とか探したんだけど、ろくなものが入ってなかったんだ」
「キキ、この会話を聞いただけでもっとひどい名前に変えられそうだぞ」
「ぎょ！」
王女と王子は慌てて周りを見回して、みなわがいないのを確かめた。
「ピーちゃんひどい！」
「こうなったら、どうしても僕たちに協力してもらうからね！」
「キー、何をする気なんだ？」
「今ね、ネットで検索したら『わらしべ』って流行ってるらしいんだ」
「キ～ィ…わらしべ？」
「うん」
「私たち、何かを持って町へ行ってわらしべしようと思って」
「キ、…その恰好でお前たちが町へ行ったら、パニックが起こるぞ」
「やっぱり」
「どうしよう？」
「キキ。お前たち、前に小さくなっただろう？ほかには化けられないのか？」
「…」
王女と王子は顔を見合わせた。
「お姉さんは、なんでも好きなものに化けられるけど、僕は小さくにしか化けられない」
「キィ、なんにでも化けられるのか？」
「…なんにでもって、ちょっと違うけど…よく知っているものならなんにでも化けられるの。でも、一回化けると、１２時間は元の姿に戻れないんだけど」
「よく知っているもの…？」
「おねえさん、みなわに化けて町へ行こうよ！」
「えっ！？」
「だって、みなわのことよく知ってるよね。みなわに化けたら、みなわの欲しいもの分かるかもしれないし」
「そうね～。そうしようかしら！」
「キキ、で、なんで俺を呼んだんだ？」
「だから、みなわの欲しいものがなんなのか、教えてもらおうと思って」
「キーイ！なもの、俺は知らん！」
「えー！どうするお姉さん？」
「仕方がないわ、私たちで探すしか」
「でも、僕たち街になんか行ったことがないし。何をどうしていいか分からないよ」
「そうね、やっぱりピーちゃんについて行ってもらおう！」
「キキ～～～！！！ええ～～～～！！！」