お涼の活躍9(忍者物語)29
- カテゴリ:30代以上
- 2012/04/28 15:50:52
其れは2日前の事だった。
与一達は突然のお涼のみんなの命を助けるの言葉に驚いた。
立原がまた襲ってくると言う。
みんなを男山に連れて行く。
もう、男山で人が集まれる場所を見つけてきたと言う。
あの地獄のような2年前の悲しみを
再現したくないと言う赤鶏寺の和尚様の頼みだと言う。
一緒に協力してほしい。
真剣に説得するお涼にこの何日かの動きを見ていて、
何かはあると思っていた。
昔からお涼を訪ねて来ていたのは忍者達だ。
彼らは正太と佳代に手裏剣を教えた。
高い所に登る体の使い方を教えた。
正太と佳代は遊びの様に其れを吸収していった。
与一にとってこの国の領主が
誰に変わろうがそれはよい。
だが、あの何も関係ない
街道側に住んでいただけで
一家を殺されて家を燃やされた事は許せない。
2度と繰り返したくないから行動すると言う和尚が
協力してくれると言う忍者との橋渡しに
お涼を選んだとしてもおかしくない。
2年前の惨劇を覚えている正太も
子供を産んで母親になった佳代が、
わが子を救うためなら何でもすると言い出す。
やれる事はやろうと一家で決意した。
与一は白くなったお涼の頭を撫でながら、
何もかも一人かぶりやがってと、
痩せた小さな肩を見ていた。
与一は眠れなかった。
一人の見覚えのある男が気が付くと傍にいた。
与一はお涼を起こそうとすると、
その男は首を振った。
ゆっくりと与一の迎えに座った。
言葉を選びながら、
何かを考えながら、何度か上を見上げて
口をごもって居たが、
一つゆっくりとため息をつくと話し始めた。
「他の奴が良くやってくれたと言っていた。
すまなかったな。
お前さん達の手を借りる事になって。」
それからしばらく黙って、
与一の目をじっと見て口を開いた。
「他の奴が正太を欲しがっていたが、
大工の腕も良いと言う話じゃないか。
無理して来る世界じゃない。
そうなったら、俺達は止める。」
与一はうなづいた。
それから、彼は優しい顔になって言った。
「必要な時間が来たら起こしに来るので、
其れまで寝てくれ。」
そう言うと去って行った。
与一は静かに目を瞑った。
一時して起こされて、町は立原の残党が残っている、
今日一日は此処に留まれと言うので其れを長に伝えた。
そうと決まれば女達の動きは早い。
相談して今日は2回の食事と決めた。
子供達を起こしてアケビ、キノコ、山ブドウ、魚と
食料探しに出した。
集まっては段取りを決めている。
寒かった壁の補強を始めた数人もいる。
お涼に女達からの割り当ては来なかった。
明らかに疲れているお涼を
女達が話し合って
年寄り、乳呑児を抱えた母親らと一緒に
役割から外したのだ。
そこでお涼は
鳥の糞を見つけてアケビの種があるなら、
この辺りにアケビの木があるはずだと
子供達と一緒に食料探しをしていた。
と、その時である。
からんからんと音がなって、
味方の忍者が一斉に走り去った。
お涼も向かった時には、忍者どうしが戦っていた。
男達も武器を手に
こっちの方向だと教えあって向かった。
着くなり、忍者の次に着いた正太が佳代が
持って居て貰っていた蓑を
渾身の力と集中力で一人の忍者に其れをふりなげた。
其れが人が来始めた為に逃げかかっていた
忍者の一人の背中に刺さった。
こっちの忍者は深追いする必要もなく
蓑を背中に挿したまま、遠くなって行く敵忍者をみていた。
少し逃げ切った所で其の忍者は振り返って、
こっちを確認した。
法被を着た正太と槍を持った元足軽で
服装は猿股にたくし上げた裾の腰に木立がある。
そのあとから、仕込み杖を持って走ってくる婆。
そうなのだ、お涼の髪の毛は此の数日でみるみる白くなった。
誰が見ても、60過ぎの婆である。
そしてその後に来て
シノを手拭いで手に縛り付け居る法被の男。
その後ろから鍬を持った男の
集団が来るのが見えた。
其の後、蓑を刺したまま、
もの凄い速さで彼らは消えた。
立原領主は事前に入れていた忍者が
やっとの思いで女山を抜けて
戻ってきた報告を聞いたり、
男山に行かせた忍者の報告を聞いた。
両方とも字源軍が絡んでいるという事だった。
男山に居た色々な民衆の姿の
忍者からすると
字源領主はかなり前から忍者を入れていて
すっかり領民に溶け込んでいたという事になる。
此れはあの2年前から
始まっていたのかもと推測した。
そして立川が動き出したので
先に取ったという事だろうと結論付けた。
当面は動かず様子見になった。
いや、ず~っと後にはなるかも知れないけれど、
其の前に話は終わります。
何も書いて無いけど、お涼ちゃんの一番のショックは自分が間違えた事でした。
字源領から城への街道沿いの人が邪魔だと取らないで、
元の街道沿いの人を男山に誘導したのです。
考えて見れば解る事。
男山に遠い人は立原軍が攻めて来ると解れば字源領に逃げますから。
お涼達の元の家も字源領の方が近かったのでそうしたでしょう。
忍者に取って任務に失敗したのが一番のショックだったのです。
その時に多くの白髪になりました。
でも、その後に米問屋の時に其の白髪の婆が
裾をたくし上げて割って入ったので
なんだなんだ???と人々は思ったのです。
それでお涼の失敗は帳消しでしょう。
だから、お涼を送った忍者はまた戻らなければならなかったし、
送ったのも一人だけだったのです。
送ったのも、お涼は気を張っていて気が付かなかったのですが、
見る限り、任務の失敗にショックを受けていて、
よたよた状態だったのです。
頭の中も真っ白だったのでしょう。
でも、まだやらなければならない男山の人を無事に返すと言う事まであったから
男山に上ったのです。
見る限り、誰かが付いて居た方が良いと判断せざる得ない状態で。
其れでないと領内の混乱を考えると人を割ける状態では無かったのです。
開いているはずの街道がパニックになった人でごった返して居ましたから。
忍者どうしの闘いに成るとしても、どうかなぁ、私情で闘うとは思えないので
憎んだり、軽蔑したりはするかも知れないが、
自分達も似たり寄ったりの事をやってきているので、
金で雇われて人を殺す。
強盗殺人と変わらないですから、
お互いに地獄で合う身ですから、
私情を挟まないと闘わないと思います。
白髪に・・・ショックや過労で一気に老け込むとも聞きますが
正太を忍者が欲しがっている
でも止めるよといった忍者・・・
とうとう忍者同士の戦いになるのでしょうか?
それもまた想像するに高速の戦い?侍戦とは違うのだろうナァ・・