お涼の活躍5 恐怖と不安(忍者物語)其の25
- カテゴリ:30代以上
- 2012/04/23 18:13:12
下では次から次と降ってくる味方の血だらけの
しかも使い手が切れている死体にぞっとした。
大勢の手練れ集団が上に潜んで居たと判断せざる得ない。
「ひけーっ!ひけ!ひけ!ひけーっ!」
むんずと馬の返すと凄い勢いで引き返し始めた。
其れを見て、歩兵達も我先にと逃げ出した。
どどーっ、どどどどっどどっと馬が砂煙をあげて引き返して行き、
其の後ろを多くの歩兵達が、逃げていく。
峠の関所の兵達は訳が解らないが、
突然敵兵が逃げ始めて、「深追いするな!」の命で立ちすくんでいた。
訳は解らないが勝った事は確かである。
へなへなと座り込む奴も居たが、
ほとんどはボー然として居た。
勝てる見込みの無い戦いに
少ない兵で行かされたのである。
前の領主なら兎も角、
内心従いたくない領主の為に死ぬのである。
やりきれない気持ちで、それでも全力で戦った。
全てを出し切って戦った。
この脱力感を何とかしようとした
関所番の役人頭が勝鬨を上げるぞの声に
何度も、何度も「エイエイオー、エイエイオー」と
男達の声が峠に響いた。
其の少し行った立原の領土内の男山の崖の下の所に
無数の上から転げ落とされた
敵兵の死体の山がある事は知りもしない。
女山も難儀な戦いを強いられていた。
山の中は源蔵が仕切る忍者達が
あちこちで色々な罠を作って人数を減らしているが、
それでも、それをかいくぐって来る敵兵が
領土内に入り込み、あちこちの家を襲って火をつけている。
其処へ行くと待ち構えた様に取り囲んで殺される。
反対に一人二人で山を抜け出た立原兵は
こっちの兵集団に取り囲まれてやられる。
其の攻防を繰り返していた。
関所の闘いから送れて退却の命が来たが、
それは女山全体に伝わらない。
むしろ源蔵達忍者に教えられる始末である。
勿論信用が出来ないが、
後ろに自分達の味方の立原兵が来てない事も事実である。
動揺が走る。
しかし戻るに戻れない。
後ろに源蔵たち忍者が大勢潜む女山。
死にに戻る様な物である。
忍者が言った「とっくに退却命令が出て残りは全員引き返した。」
が本当なら死しか待ってない行軍だ。
恐怖の戦慄が走るとは此の事である。
男山は もう登ってくる敵がいないと忍者が確認し、
戻って、戦っていて飯を食ってなかった男達が
興奮して震える手で何とか飯を食っていた。
前の闘いで立原軍が街道を広げる為に皆殺し焼打ちに
在った家々に身内を知り合いを持って居る者が大勢いた。
敵を取ってやったと言う興奮と人を殺したと言う恐怖が感情が
相まって、手の震えが収まらない。
返り血に合った服は兎も角 手の血さえ拭う事すら、
思いつかない。
そう言う手筈になって居たから、
カラカラと敵が来た仕掛けがなったら
鍬でも釜でも鉈でも、武器を取って駆けつける。
だから駆けつけた。
登ってくる侍を前の男が殺していたから、
自分も鍬を振り落した。
其れだけの事である。
何度も心にそう教え込んでいた。
そして、女達が泣きながら飯を目の前に出したから、
だから食っていた。
その時は来ていた。
米屋の兵が一番最初に気が付いて城に駆け付けたが
字源軍で近づけない。
関所では来るはずの退却の命令が無いので
座り込んで、休んでいた。
女山は一進一退の攻防をしていた。
男山は女が藁に隠れて乳を飲ませたり、
子供を寝かしたりしていた。
男達はやっと沢に行って返り血のついた手や顔を洗って
鍬や鉈や釜の血を洗ったりした。
一息ついた男達は長を決めて、
今後の話し合いをしようと班分けをし始めようとしていた。
女達の数人が食べ終えた椀を集めて、
暗くならない内に沢で洗おうと
空になった鍋に入れて
木に囲まれたその場所の
林を抜けた時に遠くに赤く光るものが見えた。
どこかが大火事である。
勿論あちこちが燃えている事が昼間から見ていて解るが
それにしても違う高い場所である。
一人が叫んだ「し、城が燃えている!」
その声にバタバタと男達も駆け付けた。
流石にみんなの悲鳴や呻き声を出した。
泣き出す女達もいる。
その頃、峠の関所も他と何か違う煙を見つけた。
何と城が燃えているのである。
関所は少しの人数を残して
すぐに城に駆け付けた。
男山では山は下りようという者と、
暗くなってこの急な男山を下りるのは危険だと言う意見で
言い合っている内にますます暗くなった。
お涼が気が付くととっくに忍者達の姿が見えない。
お涼は与一に飯を食う前に様子を見に行った者がいるから、
其の人達が帰って来るまで待とうと言ってと言った。
与一は其れをそれぞれの班の長に伝えた。
男山は立原側と違ってこっちは崖では無いが
這って登らなければ成らない急な山である。
誰かが立原兵が町や村にいて出会うと殺されるかもと言うと
降りようと言う物はいなくなった。
みんなで誰と言う事無く寄りそって不安な夜を過ごした。
久しぶりの午前様出て、まだ起きて待ってます。
中島みゆきの「誰の精でも無い雨が降ってくる」と言う歌がありました。
その前に沢山の身内が唯道路を広げたい為に虫けらの様に殺されてます。
長い道のりです。
其の街道沿いの広くなった道に立って、
多くの人は何を感じたのでしょう。
誰にも抗議は出来ないのです。
あの時は泣くよりなかった。
今はかたきを取って、うれしいはずなのに、恨みを晴らせて嬉しいはずなのに、
かたきとって人を殺して、
其の結果の空しさと恐怖と人を殺した興奮で震えて血走った目の男に
女が泣きながら飯を入れた椀をだまってだす。
女が泣きながら、何も言わず飯を入れた椀を出す所が
女の自分は戦えない切なさと「ご苦労様」なんて言葉で済まされない事を知って居るから、
でも、抱きしめてあげるなんていうおこがましい身に無いし
、唯、闘わなきゃならない男達が可哀そうで、でも、そんな事、絶対に言えないし。
女は泣くしかできないの。そして飯を食わせるしかないの。
其の時代の刀で闘う時に腕力の歴然とした差でしょうがないの。
「北斗の拳」の世界で、今の女の男女同権だのフェミニズムだの口を尖らして、
腕を組んで足を組んでおかっぱで言っても、通用しないしょ。
正しいか、正しくないかでは、無い時があるんだよね。
戦国時代の混沌としたあの時代は、たぶん。
死体から金目の物をその場に成ると
生きる為に農家の女も剥いだと思うし。
下剋上の時に夫を殺された武士の妻、娘は
レイプされれば自害したのに。
お涼は傷が治れば、また当然と一座に戻る。
自害なんて頭を掠りもしない。
まだ、帰って来ないんだから・・・・。(・`ω´・;)ゞ プンプン。
・・・・・そろそろ、包丁を研ぐ時間なのでこの辺で。
殺し屋で慣れているものでない限り、
自分を殺そうと近づいてくる者を殺して
返り血を浴び・・・・
平常心ではいられませんよね
そのとおりで、ただそう決まっていたからそうした。
そんな感じですね・・・戦争ははじめはきっとそう
だれも人殺しじゃなかった・・・
城の火事・・気になりますね