お涼の話の続きです。(忍者物語)其の18
- カテゴリ:30代以上
- 2012/04/16 23:36:16
今回はお涼、京へ旅達から。
3人の旅はある意味不思議な旅でした。
そしてお涼に最大の変化を齎した旅でした。
お鈴は魅力的な子でした。
ちょっとした膝崩したしぐさ、髪を好く時の顔の傾け方。
足袋をはく時の裾の持ち上がり方。
よろけ方、汗を拭くしぐさ。
正太より、寧ろ与一の方がドギマギしていました。
お涼に取れば見え透いたしぐさで鼻で笑う程度です。
だが、お涼が正太は当然、与一にも見せて無いしぐさです。
旅支度で与一が男は俺一人と言う気概から、シノをさらしにまいて
兵児帯に忍ばせたり、
両刃鋸の小さなのをさらしにまいて
袖に忍ばせて、
旅の荷物を風呂敷に巻いて一人で背負いました。
鈴は仕込み三味線。
お涼はいつの間にか作っていた仕込み杖。
3人の中で女二人が実は怖い存在でしょう。
現に何回か盗賊に合いましたが、
お涼の仕込み杖の構え方。
鈴のがらりと変わった目つきで仕込み三味線を抜くしぐさで
逃げてゆきました。
手練れの忍者が仕事場に行く途中にかかわる必要はありませんから。
与一もシノをさらしにまいて兵児帯に忍ばせる時に
其れらしき構え方をお涼に付け焼刃で習います。
京が近づくにつれてお涼の心は流行りますが、
其れと比例して、怪我をしていた足と庇っていた足が腫れあがってきます。
京に近づくにつれて旅籠で一泊する日と、
茶店で休む時が多くなりました。
実際に寛太と合うと意外な程、お涼の心は落ち着いて来ました。
すっかり和やかな父親の顔をして鈴を迎えたのです。
鈴を3人で住むつもりだった1年前に買った一軒家に
案内しました。
呼び寄せ様としていた矢先のお隅の死の知らせでした。
明らかな男の一人所帯に、
お涼と鈴の旅の疲れを癒す所か、大奮闘の大掃除が始まります。
与一とお涼の泊まる部屋は何とかあっても布団はありません。
其の間にお涼は与一が棟梁から預かった宮大工の所へ案内して貰って
ついでに近くの旅籠を予約して貰いました。
掃除についでに必要な物の買い出しでまたかと思う京の
一見さん扱いに、お涼は掃除をしながら考えます。
与一が宮大工の所に通っている間に、
寛太に聞いた彩夜の女郎屋の場所を聞きます。
寛太は律儀にお隅の所へ行く途中だったのか
村を訪ねて居ました。
其の話はお涼を訪ねて来た顔見知りの忍者から聞いていました。
その時、彩夜の所からの情報を村に伝えて居ました。
お涼は寛太があの村で彩夜について行って女郎になった女全部に手を
付けていたと言う笑い話程度の話を聞いていました。
だからこそ、お隅の所へ1年に一度は通って居た事は以外でした。
彩夜の女郎屋で寛太が知らないと言う夕奈の住居を聞きます。
寛太の律義さと言うか、素人女に手を出さないと言う主義なのか
夕奈の所は一度も顔を出さ無かった様です。
夕奈は京の中ほどにある間口一件ほどの小さな家で、
其れでもこざっぱりとして奥に部屋が二つ程ある小奇麗な家で
弟子を数人持って更に子弟子をその下に幾人かいる
三味線の師匠になって居ました。
寛太と鈴の話をして、
鈴を京女に仕立て上げて此処で住める様にとの申し出に、
京で住む事の難しさを知って居るだけに
そして京の公家もどきに扮したお涼が
子供ながらにどれだけ苦労したのかを知った夕奈は
あっさりと其れを引き受けました。
此れで安心したお涼は宮大工の所に数日いただけで
目つきが高揚している与一と一緒に帰りの途に付きます。
其の帰り道、ふと見覚えのある村へ続くけもの道を見つけた
お涼は夢中になって其処へ入り込みます。
そしてあっちを見ながら、顔をゆがめて立ちすくみ
走り出すとまた、声にならない声を出して顔をゆがめました。
寛太と一緒になって追手から逃げた場所でした。
あそこで寛太が背負っていたお涼を投げ飛ばして振り向いた時に
顔が血だらけの寛太の姿が、
あそこで寛太の背中越しに手裏剣を投げたが振り向いた寛太の
返り血を浴びたびっしょりの服の胸の所が切れて血が滲み出て居た事。
もう少し、もう少し、後少し行けば村へ続くエリアに人が入ったと
村に警告音が鳴る仕掛けの場所に付く。
寛太に肩を背負われながら、
片足で必死に飛ぶお涼を離した寛太が振り向きざまに振り上げた刀で
追手の首が吹っ飛んで、お涼の足元まで転がって来た事。
刀の返り血を振り切る寛太の背中の着物がパックリ割れて
切られた傷が見えた事。
「あ~ぅ、うう・・」声にならない声を押し殺すお涼は
強く自分を抑えている何かに気が付きます。
与一はお涼の様子から山賊に連れまわせれて乱暴されて
殺されかけた場所だと思いました。
「今度は俺が居る。俺が居るから大丈夫だ!」
何度も言い聞かせる与一の声と強く抱きしめる与一の腕が
胸が、お涼を正気に戻させました。
黙々とお涼は元の街道へ戻りました。
その夜、旅籠でお涼は与一に抱かれながら泣きました。
「もう、怖くない俺が居る。いつでも俺が居る」
決して忍者には在ってはならない感情の一つをお涼は感じてました。
其の夜からお涼は少し変わりました。
お涼は弱くなったのです。
甘えて、男に頼る楽さも覚えました。
例の女一人だと、ゴキブリが出ても、ムンズとスリッパで瞬殺を試みますが、
男が居るとキャーキャー騒いで、「こわ~ぃい」と言う奴です。
「恐怖」を知ったのです。
其れを乗り越える訓練を自分を鍛える事によって
更に現場に慣れる事によって、更に棟梁や兄弟子に叱咤される事によって
乗り越えて来たのに、お涼は少し鈍かったので、手練れた人達の其処までの現場に
出る事は少なかったのです。
お涼にとってはいきなりの現場だったのです。
「くノ一」はその代わり諸国漫遊の旅一座で身を守る、美人局で情報を得る。
扮装をして、中に入り込む。踊りや唱、曲芸で、他国に入り地図を作る。
社会科の図書館、病院、畑などの地図記号と似た様な記号を使った
地図を作ります。
家の中に入り込んで間取りの平面図を書きます。
噂話で庶民の様子、大店と領主の繋がりなど人間関係を調べます。
あの後、お涼は勿論怖かったと言う感情は消して居ました。
其れは佳世が恐怖を自分を無くす事で消した様に。
大人だから、傷を治す間にまた自分より下の物の手前
平然としている内に消えていました。
でも、寛太に傷を負わせた後悔、初めての長い死の恐怖。
と、其の後の与一達の生活では落差がありすぎました。
余りにも平和すぎた日常。
其の落差の中でお涼はあの時、我を失い森をさまよった、
そして「恐怖」を感じた事に
泣ける胸を見つけたのです。
お涼が子供の頃にお前の家は此処だと大人の女達が
抱きしめて、甘える事を教えて、泣く場所を教えてくれたように。
最初から厳しい訓練をした訳ではありません。
自分の家は此処だ、居場所は此処だと幼いうちは愛情たっぷりに育てます。
信頼関係が無いとチームは組めませんから。
家族が一番のチームですから。
たぶんそれが村のやり方だったのでしょう。
其れとも、其の村が元々はどこかの纏った所に居た人達だったのかも。
其れが落人として、隠れ住んだのかも知れません。
最初にかなり前にコーデで忍者を作った時から、
お涼は手練れた「くノ一」のイメージは無かったです。
真面目な訓練生かな
その後、足が悪いのは話の中に時々出てきていましたが
お涼ちゃんの心の中はどうなったのか気になってました
「くの一」ですから感情は面に出さないし、きっと強い心で
乗り越えたのかなと思ってました。
でも、その現場に行ってよみがえったのですね・・・
与一さんが居る
さて・・・どのように変わったのか・・・?