■近代文藝之研究|時評|東西新文藝の對比(8)
- カテゴリ:その他
- 2012/04/04 23:54:33
■近代文藝之研究|時評|東西新文藝の對比 (8)
しかもなほ之れがために東西を打つて一丸とした新畫風が起こつて、東西の別が薄らがうとはまだ容易に思はれず。啻に東西の別が薄らぎさうにないのみならず、其のいはゆる日本美術の特質といふものすら、我等の眼から見れば、動々もすれ技巧樣式の皮相に止まつて、根本の精神に存する特色に觸れて居らぬ嫌ひがある。例へば夫の閑寂といふ一種靈妙の味ひの如き、最も多く我が過去の文藝に存する特質たるに拘はらず、其の消極的にして單一なること、言はゞ佛教思想の寂淨なる一部に本邦固有の穩和、小化、可憐の風致を加へたやうな趣は、尚ほ多く歐人に研究せられて居ない。
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*註1:しかもなほ
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:新畫風
「畫」の俗字体(一説に本字とも)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ga_kaku.jpg
*註3:起こつて
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。
*註4:啻に
「啻」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tadani.jpg
*註5:動々もすれば
訓みは「やや(もすれば)」。一般には「動もすれば」で「ややもすれば」と訓む。
*註6:技巧
「技」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/waza_gi.jpg
*註7:精神
「精」の正字体。旁の「青」の「月」は「円」。
「神」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。
*註8:嫌ひ
「嫌」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ken_iya.jpg
*註9:過去
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註10:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註11:消極的
「消」の旧字体。旁の「ナオガシラ」は「小」。
*註12:佛教
「教」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_oshieru.jpg
*註13:本邦
「邦」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hou_kuni.jpg
*註14:尚ほ
「尚」の旧字体。「ナオガシラ」は「小」。
*註15:研究
「研」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ken_togu.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
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