† アリスサークルイベント † 【Ⅰ】
- カテゴリ:サークル
- 2012/03/18 20:34:21
【 ラスト×ラスト 】
第一章 † 終わりの涙/ラスト・ティアー
「 さよなら 」
もう誰も、覚えていない。
響くノイズが、一人の少女を消し去った事を。
もう誰も、覚えていない。
一人の少女が、みんなの輪の中で楽しそうに笑っていた事を。
__金色のチェーンのネックレスの、一枚の真っ白なトランプ。
それは一体、誰のモノ?
もう誰も、覚えていない。
"記憶"から、"世界"から、少女は消えてしまった。
__あの日誰かが、「あ!」と叫んだ。
それは一体、誰のモノ?
もう誰も、覚えていない。
―――はずだった。
消えたはずの少女は、少女とたくさんの時を共にした者達の記憶の中に、確かに"居る"。
確かに"そこ"にある微笑みは、きっと誰にも、
――届きはしない。
__誰も、 だれにも ?
*****
「不思議の国†アリス」 サークルのイベントを、此処に開催したいと思います。
サークルメンバーは奮って参加求む!
部外者だって覗きおk、面白そうだなと思ったら私か「流風」に話し掛けて見てください。
物語のはじめの場所はいつもの森。
時間は、フランが消えてから丁度一週間立った、あの時間【フランが消えた瞬間】。
さあ、はじめよう。←
レイジャ「――…、……お嬢…様……ッ」
―――ゴォォォオオオン……、
突如響き渡った重々しい鐘の音に掻き消される。
耳が痛くなるほどの大音量が森中に木霊して、視界が霞んだ。
世界が歪んで、足元が暗く消える。
――少女の姿は、闇に飲み込まれた。
そして次に皆が目を開けるとそこは、明るく温かい陽の光が差し込む広い庭園だった。
複数の楽しそうな笑い声が聞こえて、その中には、懐かしい声が知らない声と混ざっていた。
――灰色の髪の姉妹がそこにいた。
一人はフランに、一人はネレーチェにそっくりだった。
歪な音に思わず目をぎゅっと瞑る。
狂ったような笑い声が、やけに恐ろしく感じた。
落ち着いて目を開けると、今度は少女の叫び声。
そして、見慣れた様な髪の色。
まさか、と驚き思わず立ち止まって少女の走って行った方に振り返る。
ぐしゃり。と嫌な音がした。
鼓膜を撫でる、歪な音。
クロウ「…どこ行く気だよ…レイヴン…?」
――俺を、置いて。ひ、ひひ、ひはははははははは!!!!!
どしゃ。と何かが絨毯に崩れ落ちる音。
びりびり、と紙を破ったような音が立て続けにして、
「お前は俺の味方だよなァ…?なァ?ひひ、ひはははははは!!!!」
レイジャ「――…」
ひたすら走った。
誰も、何も言わなかった。
ひたすら走って逃げた。
背後から、殺人鬼の笑い声が迫っているような気がして。
__フラン、シェリカ、クロウ、レイヴン、セーラの亡骸をあの広いお屋敷に、置き去りにしたまま。
―――やがて。
どこまでも白い景色の中、幼い少女が泣き叫びながら走ってくる。
それは悲痛で、どこまでも悲しくて痛いほどの絶叫。
ぱたぱたと軽い足音がして、ふわりと少女は皆の横を通り抜け、走り去っていった。
__真っ白な服を着た、灰色の髪をした、小さな女の子だった。
何か言いたげに口を開く。
しかしそれは言葉にならずまた口を噤んだ。
レイジャの強い言葉から、言いたいことを察したようで皆に続き入り口へと駆けて行った。
((ま、まだこれからですか!では、頑張ってもらわなくてはw ラビファイト(
リートンをダルアンに任せ、逃げていった皆を見送ってから入り口で立ち止まりラビンに振り返る。
殺人鬼は飽きもせずに自分だった少年を蹴飛ばしたりして狂った笑いを響かせ続けていた。
――こうなる事は、解っていた
「さあ、早く行きましょう」
強い口調でラビンを睨みつける。
まだ物語りは終わっていない。
いいや、これからなんだ。
こんなところで立ち止まれない。
((
あかーんwwww
まだこれからだぜww
ふらふらと皆について行っていたのだが、ふいに足を止める。
――いっそのこと、俺も殺されてしまいたい。
フランがいないくらいなら、死 ん で し ま っ た 方 が マ シ だ 。
立ち止まって感情のこもってない瞳でボーッと床を見つめる。
((ラビがなんか病んでr
シェリカを降ろすと少しの間目を瞑った。
そしてダルアンに素直に付いて行った。
ちらりと後を振り返った黒兎は、名残惜しそうにフランを見た。
彼が、何故か一人だけフランのことを「お嬢様」と呼んでいたのが頭を過ぎった。
ダルアン「…置いていきなさい」
ミューナの手首を引っ張った。
軽く俯いてシェリカに黙祷を捧げると、低い声でそっと囁いた。
出口に向かって走り出そうとするがどうしてもシェリカのことが忘れられない。
何とかシェリカと共に出て行きたいのか、抱きかかえ、
1人の少女では歩くスピードしか出せない。
ダルアンの声にようやくハッと我に返る。
今どんなに大変な状況か、やっと理解したようで。
よろ、よろとふらつきながらも出口のある方に歩きだす。
リト「―ひぁっ!!?」
まさか抱きかかえられるとは思ってもいなかったようで間抜けな声が出る。
恐怖のあまりろくな言葉も発することができず、お礼を言う事も出来なかった。
ただ、抱きかかえた人物の顔を覗き込もうと顔を上げる。
狂想の渦が皆を巻き込もうとする。
――その時。
どさ、と何か重いものを落としたような音が、狭い入り口の方から微かに聴こえた。
それはお菓子やら何やら、たくさん食べ物の詰まった籠だった。
そこに立っていたのは、真紅のツインテールを持つ、あの懐かしい番犬だった。
そのうしろに、真っ黒な兎の耳を持つ真っ赤なパーカーを来た、不機嫌な兎も立っていた。
烈しく息を切らし、たった今駆けつけた二人は惨劇に言葉を失うばかり。
__ 間 に 合 わ な か っ た 、
ダルアン「――逃げるのよ!!!!!!!!!!早く!!!!!!!!!!!!!!!!」
血を吐くように、ふと我に返った少女が叫ぶ。
懐かしさに再開を喜ぶ時間も無い。
レイジャが屋敷に駆け込んで、一番近くに居たリートンを攫う様に抱きかかえた。
まさか今日はじめて会った人物にここまで感情的になれるとは。
シェリカをぎゅっと抱きしめると熱い涙が彼女の頬を伝った。
「なんでっ・・・・・」
泣いている彼女には時計屋のクロウの声を聞くこともしなかった。
咽せ返るのような濃い血液の匂い。
次々と目の前で人が倒れていく様を見て表情が恐怖に染まる。
逃げろ、なんて言われてもがたがたと足が震えて思うように動かなかった。
一方の兎も、相変わらず立ち尽くして逃げる気配すらない。
レイヴンが子供のようにセーラに縋って泣いていた。
ぴくりとも動かないセーラのトランプが真っ赤に染まって、
ぱしゃ、と哀しいほどはかない音を立てて真っ赤な薔薇の花弁に変わった。
シェリカ「―――、 、 」
最期に、何かを呟いたように見えた。
しかし既に、ミューナの腕の中で事切れていた。
さぞ哀れだったろう。
さぞ滑稽だったろう。
証拠に殺人鬼は、発作でも起こしたのかと言うくらいにヒステリックに高笑いを響かせていた。
クロウ「……………は………く、……逃げろ……」
死に掛けた少年が、さっさと自分を見捨てろと言う。
泣きながら、恐ろしいほどの寒さに怯えながら。
ルーヴェに反発した――途端、
自分のものではない血が掛かった。
「シェリカさん!?」
シェリカの顔を見ながら、シェリカの血を浴びながら
ゆっくりと抱きしめた。
まさか、目の前で4人の血が流れるとは――、
それに、まだシニタクナイだろ?!」
自分に言い訳するように、ミューナに取り付いて半狂乱になってわめいた。
楽しそうに、殺人鬼が瀕死の少年を突付いて罵倒を浴びせている。
「僕等の中からもう一人死人が出るんだ!!!!!ッ僕は!!!まだシニタクな」
ぶつりと。
悲鳴が途切れた。
ぶしゃあっ、とミューナにふきかかった。
真っ赤な真っ赤な、温かい液体が。
「…ぃ?」
自分の悲鳴が途切れた理由を理解する前に、彼女はミューナに崩れ落ちた。
恐怖に目を見開いたまま、自分が心臓を串刺しにされたことに気づく前に。
__4人の血が、流れた。
昔からこいつは嫌いだった
狂って思考がわけのわからないものはみんな嫌いだ
ルーヴェ「だからといってあのクロウは俺たちが相手できるようなもんじゃない・・・」
ミューナの言葉に反論ちいさくつぶやいた
シェリカの一言に驚きが隠せなかった。
自分は死にたくないが、だがほかの人も死んでほしくない。
彼女はふと思った。
あと1人の血が流れるのでは―――?
ぽつりとシェリカが呟いた。
これ以上此処に居たら、自分たちが血を流す事になる。
__2人の血が流れた。
「よく考えてみてよ…この世界は、≪本当の過去の世界≫なんだ。
――"もう一人の自分"に、遭っちゃいけなかったんだ」
狂った笑い声が、近づいてくる。
狂気に満ちた笑い声が。
想いを募らせていた彼女を、殺してしまった。
__殺人鬼が。
湿った、耳障りなあの声が。
閉ざされかけていた屋敷の扉を開け放った。
クロウ(殺)「こりゃまた、大勢お揃いで?
なぁ、【自分に殺される】気分はどうだ?
クロウさんよォ?!」
どどどどどどどどどッッッ、と数え切れないほどの漆黒の羽根が長剣となって、
時計屋だった少年に突き刺さった。
ぼと、と握っていた剣が力の抜けた手から滑り落ちる。
無様なステップを踏んだ少年は桐のように半回転して、横様に倒れこんだ。
無数の刃が霧と化し、おびただしい鮮血が、
少年の"命そのもの"が真っ赤な液体となって傷口から溢れ出す。
__3人の血が流れた。
ただただ呆然と立ち尽くしている。
クロウの声が聞こえてもフランから目を離す事が出来ず。
今すぐにクロウを殴りたい衝動にも駆られたが、もうそんな力もなかった。
立ちすくむその様はまるで魂が抜けたようで、人形のようだった。
リト「…っわ――!?」
自分に飛んできたわけでもないのに風を切る音が聞こえ思わず横に動く。
その飛んできた物が何なのか、確認するために目をやる。
少女に刺さった事、そして刃が消えたことに対して驚きを隠せず目を見開いている。
壊れたように笑い出す、彼はもう≪時計屋クロウ≫ではない。
その笑い声に重なるように、狂気に満ちた笑い声がどこか遠くで木霊した。
ひゅ、と微かな風切り音が不吉に鼓膜を撫でる。
ざしゅっ、と刃が突き立った。
さらさらと刃が真っ黒な霧になって消えた。
ぶしゃあっ、とただただ紅い、鮮血が溢れ出した。
レイヴン「…セーラ……?」
どしゃ、と赤毛の少女が自らの紅い水溜りに倒れこんだ。
飛び散った紅い液体が、レイヴンの頬に赤い化粧を施す。
異臭の匂いに吐き気がしたが、何とか持ちこたえる。
ただ、森の人物が同じ仲間を殺したというのを考えられなくて。
__そして。
ルーヴェのその声に、まるで"違う"とでも言うように。
今にも泣きそうな、震え声が割り込んできた。
それは、笑っているようにも聴こえた。
フランの背中から、長剣を抜き取って。
狂気の笑みを張り付かせた、その姿は。
__まるで、
"今まで忘れていたと誤魔化して隠していた事がバレて親に怒られた"、子供のようだった。
「―――…………俺…が、……殺し…たんだ………ッ」
___殺 人 鬼
ク ロ ウ 、
低く、冷たく、"現実"を口にした。
見ただけで、誰だって解る事だった。
けれど。
それを、信じたくない人が居るから。
シェリカは敢えて口にした。
微かに腐臭も漂っていた。
一体、どのくらい放置されていたのだろう。
___こんなに広いお屋敷に。たったの。一人ぼっちで。
「…ああ、リスティル様…」
力なく声を出した。
相手の顔なんか見れずに、俯いたまま。
__でも、そのフランが着ていたのは。
いつもの白い布を頭から被ったようなものではなくて、
黒いゴスロリ風の、可愛らしいワンピースだった。
セーラ「……これ。商店街の…洋服屋さんの…、一番高くて、可愛かった…先週の新作…です」
呆けたようにセーラが零した。
よくよく見れば髪の毛にも、今までツインテールにでも結っていたかのような跡が残っていた。
蒼いリボンが解けて、血に濡れた髪に絡みついていた。
__それじゃあ。一体。
__このフランは。
____________誰だ?
長剣を見てつぶやいた
血の海についても少女についても別に何とも思わない
見慣れているし、知らないから
ただ気になるのは剣についてだけ
リスティル「おもしろそうなことしてるわねぇ?私も参加していいかしら?」
そこにとあるヴァンパイアがやってきた
リスティル「・・・・フラン・・・」
生臭い香りに思わず顔を顰める。
――嫌な予感がした。
ラビ「―――え?」
次の瞬間、目を疑った。
体中の血の気が引いていき、自然と体が震える。
やっとのことで言葉を絞り出す。
ラビ「フラ…ン……?」
信じられない。
信じたくない。
何故、こんなことになっているんだ?
そんな思いが頭の中を巡回しその場から動くことができず、ただ震えて溺れている彼女を見つめていた。
良いかけて、勝手に口が言葉を紡ぐのを止めた。
__すぐそこから漂ってくる、濃密で生臭い鉄の匂い。
どうして気づかなかったのか、寧ろ疑いたくなるくらいに。
"彼女"はそこに"在った"。
「…おい…待てよ…」
これが夢だったなら。
嘘だったなら。
どんなに良かったか。
もしかしたら、今にも起き上がって「おはよう」なんて呑気に笑ってくれるんじゃないか。
抜け落ちたはずの記憶の断片が疼いた。
「……こいつ…が、」
__"黒い"長剣で絨毯に縫い付けられていた。
__灰色の髪をした、小さな女の子が。
__夢みたいに真っ赤な水溜りに。
__溺れていた。
「―――フランなんじゃねーの?」
((
りょっかいーbお疲れ!
そして良いとこ←
周りを見ながら進む
サム「…」
豪邸には慣れているのか
それとも警戒心が一向に解けないのか
緊張した面持ちで歩みを勧めた
((ごめん 落ちb
いやあ凄いや。と珍しく本気で感嘆の声を漏らした。
物凄き呑気だ。
霊としてこちらに時節遊びに来るあのブラド伯爵からは到底考えられないような豪邸だ。
生前の爵位は伊達では無いらしい。
クロウ「さ、行こうぜー」
と何の遠慮もなしにお屋敷に踏み込む。
入り口の狭さから見る中の広さは異常なものだった。
たくさんのシャンデリアが客人たちを迎え、壁にかかっているカンテラが眩しく煌めいた。
…何故か、がらんとしていた。
人の気配の一つもしなかった。
ほう、と感心したかのようにため息をついて絨毯に目をやった。
外見からは予想もできないような光景に驚いている。
リト「四次元空間……」
なるほど、と呟いたものの深くは分からなかった様子。
そう言って立て付けの悪そうなドアノブに手をかけた。
ぎぎぃ、といかにもな音がして。
そこに広がっていたのは、豪奢な真っ赤な絨毯の敷き詰められた、お屋敷の玄関だった。
「ま、四次元空間ってヤツだな」
おもったまま口にしてみる
緊張感のかけらもない
サム「ここ…?」
思わず二人してビルに振り向いた。
動きまで一緒で、反応までそっくりで。
クロウ「…此処だ」
丸太小屋の前で止まった。
普通に森を横切ったら、目になんか入らないくらいに自然にそれは"そこ"にあった。
まるで森に同化するように、ぽつりと立つ丸太小屋。
その一言を
あえて レイヴンやセーラに聞こえるよう言った後
クロウについていった
……良いんだ…ッ…もう、終わるんだから…!!」
そう、終わるんだ。
長い長い呪縛から。此れから。ようやく解放されるんだ。
その為に俺は行く。
その為に、俺は此処に来た。
「さあ、行こうぜ?」
そう言って歩みを進めた。
やがて何一つ変わらない枯れ木の景色の中見えてきたのは、一軒の小さな、丸太小屋だった。
それとこれとなんの関係がある?
もしセーラがレイヴンをすきでも お前が言う言わないには関係ないだろ。
…それとも
お前が単に フラれるのが怖い 臆病者 ってだけか?」
挑発するような声色
は、ははは、と俯いたまま華奢な肩を震わせる。
「セーラは…レイヴンが好きなんだから…」
ぽた。ぽた。と震える声と一緒に零れた雫が芝生に落ちた。
今すぐに死んでしまいたい気分だった。
この後に自分がとった行動を、思ったら。
ただクロウを見つめる
「……言うだけ言ってみたら?」
未来が変わるかもしれないけど―――
――いやあ良い天気だね!
――あ、そうなんですか!だったら私たちも是非!
こんなに近くに居るのに、やけにその会話が遠く感じられた。
何も知らないレイヴンはセーラの隣で笑っていた。
こんなに、近くに居るのに。
届くのに。
…初恋の。人。が。
クロウ「―――ッ…」
俯いて唇を噛むことしか出来なかった。
シェリカ「鴉氏にとっては辛い時代だよね」
それを横目で眺め、ビルの肩に腰掛けたままぽつりと呟く。
呑気に返事をする
「え?あぁ うん ちょっと散歩」
爽やか笑みを向けながら 堂々と嘘を吐く
肩にシェリカを乗せることになにも抵抗しない
かえって可愛いよね、なんて能天気に、いつのまにかビルの肩に座っていた。
全く重さを感じさせず、幽霊でも乗っているよう。
セーラ「あ、みなさんお揃いで――どこか行かれるんですか?」
人当たりの良い笑み。
レイヴンもつられて気づき、一緒に挨拶しながら近づいてきた。
視力の低下からか よくわかっていない
サム「セーラ……………」
懐かしい顔
…嫌な奴等に遭った。
一気に不機嫌顔になるが、口には何も出さなかった。
シェリカ「あれれ、デートかな?」
にししし、と気色悪い笑い方で犬歯を見せる。
「ほら、"レイヴン"と"セーラ"だよ」
怪訝そうに眉をよせるが
声は弾んでいる
ありがとな、とリアルンに軽く手を振りステッキを突きながら歩き出す。
未練も何も無い。
これから死にに行く者が出来る態度ではなかった。
――しばらく歩き、ふとその時。
あまり聴きなれない声と、ついさっきまで聴いていた声が、
前方から仲良く手を組みながらやって来る二人から発せられていた。
漆黒のポニーテールが揺れ、優しげな黒紫の瞳が楽しそうな光を湛えていた。
隣に並ぶのは、綺麗な赤毛をツーサイドアップに結い上げた深い緑色の瞳の少女だった。
今から何が起こるのだろう、と思いながらリアルンに一礼する。
今まで黙っていたクロウがそっと割り込んだ。
察したようにリアルンが頷く。
「大丈夫だ。俺が居るから」
わしゃ、とステラの頭を撫でる。
そしてもう一度深く礼をしたリアルンは、笑みを湛えたまま静止した。
リアルン「私は此処でお別れせねばなりません。
道中御気をつけを」
言葉を放った彼女の目はしっかりと今から起こる事全てを
飲み込むような目だ。
決心が付いた様だ。
ミーヴ「何か面白い事でも起きるといいですねー」
閉じていた瞳が薄っすら開く。
覗いた桃色と橙色の鮮やかな双眸は、優しさと悲しみのようなものを湛えていて。
顔面蒼白 ガクガクと震えだす
そして ローリナの肩を抱きながら真っ直ぐ
これから行く道を見るサム
ビル「血液か~ いいねぇ 結構テンションあがってきたよ?」
会った事もない人に話しかけるのには大分勇気がいるようで。
彼女の声は震えていた。
冗談めかして笑った。
おかしなことに、彼女は容姿が何一つ変わっていなかった。
リアルン「それを言ってしまっては謎解きにならないでしょう?」
くすくすと上品に笑った。
優雅に一礼すると、ふわりと長い兎の耳が揺れた。
「さあ、時間があまりありません。お急ぎ下さい」
いつもチェスをやっていたナイトメア
そう言えば久しぶりに見た
シュルゼム「・・・案内人・・・か、みるべきものとはなんだ?」
人を喰ったような笑みはあの時となんら変わり無い。
「僕は楽しそうだから遊びに来たんだ。君たちについていくよ」
リアルン「私は此処で道案内をしたいと思います。
謎解きのためのヒントを二つ、差し上げましょう」
白い手袋の嵌められた手を顔の横に出し、ぴ、と人差し指を立てる。
「貴方方の此れから行く道に、必ず4度、何方かの血が流れる事でしょう」
悲しいことですが現実です。どうか目を逸らさぬよう。
薄っすらと仮面のような笑顔のまま続けた。
「このまま進んだ森の奥の丸太小屋へお行きなさい。
そこに、貴方方が"見るべきもの"が待っています」
うれしそうな満面の笑み
ビル「10年前…俺が1番好きな時代」
生き生きした表情
血が町を荒らした あの時期だ
そう言って振りかえろうとしたとき、まったく場違いな拍手が聴こえてきた。
サクサクと枯葉を踏みしめ枯れ木の隙間から出てきたのは、一人のシロウサギ。
そして金髪と碧眼を持つ、あの懐かしいナイトメア。
「…ようやくおでましか」
それを確認すると、す、と一歩下がるクロウ。
シロウサギとナイトメアは思い思いにクロウに挨拶をすると、皆の方に向き直った。
シェリカ「久しぶりだね、みんな?」
リアルン「覚えておられる方も少ないでしょうが」
にたにた笑うナイトメアに、慇懃に深い一礼をするシロウサギ。
懐かしい面々が、此処で出てくるとは。
んじゃ俺は10歳か、等とひとりごちている。
ラビ「ああ、そうだな。どこ行くんだ?」
くるりとクロウの方へ首の向きを変え、そう尋ねる。
ラビンの言葉を断ち切るように、あるいは切り返すようにすぱっと言った。
14歳だった彼女が4歳で、何かが狂いだした日。
__殺人鬼クロウが、殺しを始めた日。
「それを今から確かめに行くんだ」
辺りを見渡し考え込む。
しかし、結局答えは分からなかった様子。
ラビ「………此処には、昔のフランがいるのかなぁ」
ま、そこまで楽しむ余裕は無いか。と誰に言うわけでもなく呟いて灰色に染まった空を見上げる。
もしかしたら此処が自分の最期の場所になるかもしれないというのに、酷く楽観的だった。
ぽつ、と呟く。
枯れ木や自らの白い息などを眺めつつ、クロウの言葉を聞いた。
ラビ「過去……フランの、過去か」
はは、と乾いた笑いが白い息になってしばらく漂った。
「誰のでも良い、トランプをあそこに乗せると、
そのトランプの持ち主の――【過去が見られる】」
確かにある意味で、"カラクリ"かもしれないな?と冗談めかして笑った。
あたりを見渡しながら白い息を吐いた
ステラ「・・・どういう仕組みですか?これもカラクリ時計の一種なのですか?」
半ば強引に呆然と立ち尽くすシュルゼムの手からトランプを奪い取り、
滑らかな手つきで台座の窪みへ収めた。
レイヴン「…ッ…」
反論できない自分が憎かった。
自分の横を、何事も無かったかのように通り過ぎていった兄の姿が遠かった。
クロウ「俺を恨むなりなんなり、そんな事は自由にいくらでもすると良い。
でも、これから見ることは全てが真実で、現実で、本物だ」
鈍い音を立てて、かちりと時計塔の針が動いた。
荘厳で、重々しい鐘の音が鳴り響いた。
覚悟にしては重く、そして空っぽな言葉が鐘の音と重なった。
世界そのものが揺らぎだす。
陽炎の様に、蜃気楼のように。
歪んで、霞んで、鐘の音と共に、
時計塔広場は、
枯れ木の広がる真冬の森へ、姿を変えていた。
レイヴンが反論虚しく口を開きかけた瞬間、ビルの声に険しい目つきで振り返るクロウ。
「…あんな奴、王だなんて名乗る権利もねーよ。
くそったれが。逆らえるんだったら俺がとっくに殺してる」
それは、他人に見せるにはあまりに鮮やかな憎しみで。
((
無論歓迎。
見下すような目
「…まぁ俺も黒の王派だからそんなこと言えないけど。」
そういう口元は緩んでいて
「―――『なんぞ』なんて聞き捨てならないねぇ。」
((ちょっとビルくん復活させていただく。
そうしてもらわなきゃ困るんだ。
自嘲っぽく笑い、台座にそっと手を触れる。
さり気なく言った。
――なぁ。レイヴン」
ぎくりと、クロウが来た瞬間だんまりを決め込んでいたらしいレイヴンが背筋を凍らせた。
憎しみにだけに染まり堕ちた瞳をクロウに向け、俯き加減に唇を噛む。
「今更出てきて何の用だ。お前はみんなを裏切ったんだ。違うか?
黒の王なんぞと手を組んで、お前はこっそりみんなの情報を売ってるんだろ?
そんなのは仲間じゃねえ。
俺の弟でもねーよ」
ある意味で、死刑宣告だった。
確かに一方的に嫌っていた。
この兄は、殺人鬼である兄とは違うと本当は解っていながら、勝手に憎んでいたから。
あまりに軽い音を立ててレイヴンが崩れ落ちた。
そこにいたのはいつもの泣き虫。
裏切り者に堕ちたカラスではなかった。
((
嫁きたああああああああ((ryry
怪訝そうに台座を見る。
シュルゼム同様、どこか嫌そうに見える。
リト「…」
状況を聞き一緒について来た。
押し黙って、俯いて皆の後ろに居る。
((乱入( なかなかできなくてすみません;
実際、話した事の無いのに覚えているのは少し物悲しい。
フランのトランプを見るとなんだか泣きそうになる。
≫再びらんぬー(
皮肉っぽく返す。
やっぱり名前で呼ばれるほうが慣れている。
「そう言うこと」
現実を見るのが怖いか?と冗談めかして笑った。
シュルゼム「・・・これか?」
フランのトランプを出したが・・・置くのには少し抵抗があった
いつもは自分がしているのに、相手にされるなんてちょっと複雑だった。
そう言って笑った、微かに震えた声で。
さらりと長いポニーテールがステラの頬を掠る。
「……ああ、約束だ」
どんよりと曇った空は、一体誰を悲しんでいるのだろう。
ブーツの踵が石畳を叩くたび、音高く響き渡る。
「この台座、何の為にあると思ってた?」
時計塔広場のど真ん中、時計塔のまん前にある、
明らかにそれだけ浮いた存在感を放つ黒曜石の台座。
結構な長身であるクロウの腹にまで高さを持つそれは直系50㌢ほどの円形をしていて、
その中央に何か薄いものを収めるような窪みがあった。
丁度、トランプが一枚、収まるような。
俯いて答えたこれはしょうがない事なんだ、理解しなくてはいけない
ステラ「・・・・そうですね、では・・・・これくらいは許してください」
クロウの頬にキスをした
ステラ「師匠に好きな人が居たのはもちろん知っています、これは僕のわがままです
・・・このくらいなら、許してくれますよね?
・・・・・・見届けますよ、そして貴方を継ぎましょう、貴方を超えましょう」
ゆっくり進めてきましょーw
つくづく自分が嫌になる。
女の子に限らずとも、誰かにこんな思いをさせることが。
冷たく震えるその手を掴むと、安心させるように抱きしめた。
初めてだった。
でも、きっと安心なんてさせられないんだ。
((
あかーん^q^
シリアスシーンなのにめっちゃニヤけて、(ry
不安そうな顔
何が起こるのかわかんない
「お兄ちゃん…」
サム「大丈夫 ここにいるから」
不安をかき消すようにローリナを抱っこしながらクロウに続く
((うっわ いいとこだけど…落ち(涙
ぎゅっとクロウの服の袖を掴む
その手は震えていた
ステラ「・・・師匠・・・・・」
珍しく動揺した表情で
((時計塔キターww
ふわりと、優しくステラの頭を撫でた。
らしくもなく自嘲気味に笑った。
「…願ったんだろ。"忘れないで"って」
――忘れないでください、フランがそこに居た事。
「…なら良い」
この物語を、お前も楽しめる。と歩き出しながらローリナに哂った。
そして皆を引き連れてクロウが歩を、進めたのは。
――時計塔広場。
((
すっかり馴染みの場所ですな(
うんうんと頷くとステラが聞いた事に同意し、耳を傾ける。
≫ありがとー!(
思わずコクン、と頷く
さすがに元殺人鬼の真顔は怖い
聞いていたのかクロウに尋ねる
認めたくない答え
シュルゼム「覚えている、覚えていないの違いは何なのだろうな?」
いっそ自分も忘れたかった
そうすれば此処まで悩むこともなかった
適当にあしらうと、いつものように一瞬だけ悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「お前は覚えてるのか?覚えてないのか?」
真剣な顔でローリナに訊く。
此処だけは譲れない。
そう、これは。
「…俺の最期の仕事、付き合ってくれんだろ?」
((
うふふ遠慮はいらなくてよ(
キョトン、とした笑み
サム「…あぁ くそ…」
こんなことなら国民全員の名前をリストにしておけばよかった
でもそんなもの後の祭り
悔しそうに下唇をかむ
レイヴンさんとクロウさんどうもです」
今この空気にはものすごく邪魔な存在。
消えた人物と絡んだこともないのだから。
≫ありがとー!
でもやっぱ参加したいかなって。←
KYですまそ。
クロウ「…元気だよ。下の上くらいに」
元気度をそう表現すると、今にも壊れそうな曖昧な笑みでローリナに振り返った。
「………気になってんだろ、お前等。
……俺は忘れちまったみてーだけど、フランって餓鬼のこと」
しょんぼり
クロウに駆け寄り、服のすそを掴んだ
サム「…………」
レイヴンの声が聞こえた
いや 声を聞いた
一瞬ぼーっと宙を見る
ルーヴェ「あ、カラスさんだ」
その言葉だけが、妙に浮遊して、不安定に、ぼやけて聴こえた。
__そんなこと、あっていいはずが無い。
「…ねえ、」
レイヴンが、何故か切羽詰ってシュルゼムに言い寄ったその時。
クロウ「よォ、元気か。お前等」
す、とサムとローリナの隣をすり抜けて、やって来た。
クロウが。
聞き返す、意味が分からない
無言で黒馬を扱う
なにも感じず なにも理解せず
ローリナ「どうしたのー??」
てててーっ、と歩いてくる
空気の重さなど気にしていない
理解出来ない。
いや、理解したくない。
うわ言のように意味も無く言葉を零して、自分も一緒に座り込んだ。
足の力が勝手に抜けた。
「……それじゃあ…待ってよ、もしかして、それって…言いたく無いけど…
――フランに限った事じゃ、無いんじゃないの?」
シュルゼム「・・・本当に・・・知らないのか・・・・」
脱力したようにその場に座り込むとトランプをレイヴンに見せた
シュルゼム「・・誰のトランプだか・・・わかるな?」
そして大体の説明をレイヴンにした
数少ない人数しかフランの事を覚えていないこと、フランが消えたこと
必死の形相に怯えるように息を詰まらせる。
"あの"シュルゼムをこんなにまでさせる出来事を、こいつは知らないのだ。
フラフラとしたおぼつかない足取りでやってくる。
今にも倒れるんじゃないかと言うほど、元気がなく顔色が悪い。
無意識にシュルゼムの傍まで行き、同じくそのトランプを眺める。
そして、レイヴンの声が聞こえるとそちらに視線を移した。
このカラスが着たことでただでさえ驚いているのに忘れられた少女の名を口にした
シュルゼム「お前!フランを知っているのかッ!!!」
レイヴンの方を掴んで問い詰める
その表情はどこか必死で
驚くべき一声が、その呟きに答えた。
ふわりと降り立ったレイヴンには、もう当時の面影なんて無くて。
ひらひらと舞い落ちる羽根は、とある殺人鬼を連想させて。
その少女の名を口にした、その表情はどこか上の空で
クロウから受け取った真っ白なトランプを眺めていた