Nicotto Town


✪マークは作り話でし


✪岩石倶楽部 ▲

「ほら、ちゃんとこの通りあるじゃないか・・・どう思う」
「ここに刺繍してあるの・・誰かの名前だょ」
ほつれた縫い糸の下に、かすかに文字が見える。
「・・・・・バンキッシュ博士」
「誰」
「さあ、マッキントッシュなら知ってるけど」
「それはお菓子のメーカーだろ」
私達は相談して、図鑑を持ち出すことにした。
理科教師に覚えがないと言うのなら、誰にもとがめられることはないはず。
重い図鑑を抱えて扉に歩き出したところ、
不意に姿を見せた一人の老人と鉢合わせした。
「君たち、その図鑑を持ち出しては困るよ。
これから授業で使うのだからね」
その老人は尖った鼻をして、かなりやせていた。
指などもひじょうに細く、鳥のように細長い足をしている。
上着のポケットから懐中時計をとりだして、おもむろに文字盤をのぞいた。
「時間だ、そろそろ授業をはじめようか。
君たち席に着きたまえ」
「授業ですって、今からですか」
私達は口をそろえて訊いた。
「無論、他にいつするつもりだね」
「だってもう放課後じゃないですか、じき夜になりますょ」
私達はその老人に向かって言った。
「なるほど、君たちは昼の学校の生徒か。
夜間学級ははじめてだね」
「夜間学級」
私達はこの学校に夜間部があるなんて聞いた事もなかった。
「皆、もうじき登校してくるょ。
どうだい一緒に授業を受けていくかい」
「その図鑑を使った授業ですか」
「ああ、そうだょ」
私達は授業に惹かれた、あの古びた本を使うと云うのである。
夜間学級の生徒は、ひじょうに勉強熱心だった。
わき目もふらずにノートをとっている、若い人も少し歳を取った人もいる。
鉛筆の音が教室のあちらこちらでサラサラと聞こえ、
飛び入りの私達は面食らった。
老人は例の本を教卓にひろげて、黒板に図を書きながら講義を進めている。
私達も他の生徒につられ、いつになく熱心にノートをとった。
帰り際だったために、カバンを持っていてよかったと思った。
「諸君、
シトロン・ロックの結晶から抽出できる水分は一カラット当たり一オンスである。
楕円に近い球体で断面は放射状、酸性度が強く発砲水との相性がいい。

老人の説明に耳をかたむけてると、
黒板に書いてる図は私たちはどう見てもレモンとスイカの絵にしか見えないのだ。
私達の不思議をよそに、授業は進んでいった。
「それじゃまるで冬籠りでもするのかな」
私達が私語を交わすと、まわりの生徒がいっせいに指を唇にあてた。
「さて諸君、本日の授業はこれまで。
夜道に気を付けて帰りたまえ」
授業が終わり生徒たちは素早く教室を出る、廊下は真っ暗だ。
何故かシャカシャカと爪を引くような音がした。
私達も扉に向かった、
「ところで君たち、今夜の講義をどう思ったかね」
「興味深かったけれど、どんな石の話なのかサッパリわかりませんでした」
老人はふむふむとうなづいた。
「それでは特別に標本を君たちにひとつずつあげよう」
私達は石を箱に入れてもらい学校を後にした、
私達は家まで待ちきれずに道端の街灯の下で箱を開けた。
中から出てきたのは、清々しい香りのするマルメロだった。
艶があって、重みも充分。
念のために私たちは先ほどの授業で書きうつした内容を確かめようとした、
ところがノートを見るとあれほど書いたものが何もないのだ。
私達は顔を見合わせた。

その後私たちは、あの鉱物図鑑を理科室で見つけることはなかった。
奇妙な教師にも逢うこともない、なんとも惜しいことだ。
私達は授業の内容を思い出しながらノートに書いてみた。
そう言えば、その教師が狐のような顔をしていたこと。
私達は狐に化かされたのだろうか、そんな事はない。
おみやげまでもらったのだから、二人でうなづきながら笑った。

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2012/03/12 17:25
あびにゃんこさんコメントありがとう。

よかったよかった・・。
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2012/03/12 08:12
マルメロってなんだろう?
ってことでぐぐってみました。
へぇ~~~~カリンによくにた果実!
はじめてしりました!
なんだかキツネにつままれたような話でした(・・
ぁ、そのまんまかw
不思議で楽しかった^^
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2012/03/11 18:32
こねずみさんコメントありがとう。

原点とも言えるかもね。
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2012/03/11 18:22
鉱物には地球のあれこれrが詰まっていますね
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2012/03/11 17:19
aki さんコメントありがとう。

あははははははははは・・・・・・・。
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2012/03/11 11:02
頭をマルメロ・・・坊主頭?

くだらない事を言ってしまいました・・(-_-;)
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2012/03/11 07:46
olive さんコメントありがとう。

果実でカリンの一種でし。
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2012/03/11 07:45
うらんしゃんコメントありがとう。

次の講義も奇奇怪怪・・・。
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2012/03/11 04:39
マルメロって、な~に?
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2012/03/11 02:06
夜の世界は・・・・摩訶不思議ですな。

怪し気な教授。
次は どんな講義が待っているのやら??

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2012/03/10 22:58
ふうさんコメントありがとう。

御名答・・・・その通りでし、動物たちは果実を石と呼んでいるのでし。
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2012/03/10 22:56
mimi さんコメントありがとう。

夢かうつつか幻か~~~、しかし・・手の中にはカリンがひとつ。
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2012/03/10 22:56
シトロン・ロック、どう考えてもレモンになる。
そう言えばレモン色の石って見た事ないかも。

何故だろう、読んでいて宮沢賢治を思い出しました。
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2012/03/10 22:32
おみやげ?幻だったのかもね^^葉っぱかな^^どろん*
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2012/03/10 22:15
おおちゃんコメントありがとう。

生徒は動物たちだったんですね~~~。
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2012/03/10 22:02
 ほぉ…そこに棲みついとる何かが起こしたことなんかなぁ(´ー`)

 生徒は そこらへんの彷徨っとる寂しい人?たちとか。

 お土産付きで オモロイ体験したんじゃけん良しとしよっ\(^▽^@)ノ
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2012/03/10 22:00
リトさんコメントありがとう。

マルメロとはカリンの一種なんでし、石ではないんでし。
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2012/03/10 21:54
オカルトめいたかとおもったら、なんだか、ほんゎか~な気持ちになりました^^
老人はだれだったのかな~・・・。

マルメロ?どんな石だろ??  誕生石はルビー。好きな石です^^
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2012/03/10 21:41
パンさんコメントありがとう。

グラスを傾けよう~。
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2012/03/10 21:35
マルメロ入りのお酒呑みたい♪
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2012/03/10 19:46
雪子さんコメントありがとう。

タン・タン・タヌキの金五郎~♪
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2012/03/10 19:43
たぬきだったのでは?



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