大阪城の甲斐姫
- カテゴリ:勉強
- 2012/03/10 16:28:52
福井城の一件は、当然秀吉の耳に入ることとなります。
秀吉は、三成を呼び出し甲斐姫のことを聞くことにしたのでした。
「三成、会津の地では甲斐姫なるものが大活躍だったそうだのう~」
「そのようですねぇ」
「彼女を側室に迎えようと思うのだが どう思う?」
三成くんの脳裏に、忍城での恐怖がトラウマとなって蘇ります。
あんなの敬愛する関白様のお側に置くわけには行かない!
「甲斐姫ですか。お止めください!気性は荒く猛獣のような女ですぞ」
「なんじゃ~そうなのか」
秀吉の興味が、急速に引いていくのを感じた三成くんは心の中でガッツポーズ。
しかし安心からか思わず秀吉のNGワードを口滑らしてしまいます。
「そうです ま、顔はいいんですけどね」
途端に秀吉の顔つきが変わります。
「ほうほう美人なのじゃな! 決定! 三成、ちょっと行って連れて来て」
「いやいや、全然美人なんかじゃないでござるよ~関白さんの趣味ではないでチェスト~」
完全にてんぱってしまった三成くん。
それを見て秀吉は、伝家の宝刀を抜きます。
「三成、今この世は誰の都合で動いてる?」
「それはもちろん関白様の都合でございます」
「じゃ、ワシ駄々こねるね」
「え?」
突然ごろりと寝転んだ関白様、手足をジタバタさせはじめます。
「連れて来て連れて来て連れて来て~~連れて来てくんなきゃヤダヤダヤダ~つまーんなーい!」
こうなってしまっては、もはや手遅れ。
三成くんは覚悟を決めて会津に向かいます。
福井城へついた三成くん。
早速、氏長・甲斐姫と顔をあわせます。
「というわけで、秀吉様のお召しだ。 大阪城に来て貰えるな?」
「話はわかったのですが、姫がなんというか?」
「参ります」
「いや待て、暴れるな! 話せばわかる! そうだろう? ……え? 来るの?」
甲斐姫の意外な返事に、少々取り乱してしまった三成くん。
「あ、コホン ……本当に?」
「ええ、関白様に逆らえば、お家がどうなるかわからぬ甲斐ではありませぬ」
素直に来てくれるのは、ありがたいが
狂犬を城内に放つ様でもあり、少し複雑な三成くん。
それでも、秀吉様に褒められる~と上機嫌で大阪城へと戻っていったのでした。
こうして、秀吉の側室となった甲斐姫。
秀吉も彼女をいたく気に入ったようで
一晩で実家は下野国烏山へ移封。石高は倍増したという。
その様子は、『ひとりの妖女、一、二寝の間に三万石の地を進退す』
と太閤記に記されています。
その後は、秀吉の息子秀頼の娘 奈阿の教育係として過ごしますが
その最中、大阪夏の陣が起こり豊臣家は滅亡。
家康の娘 千の助命により出家することを条件に命は助けられることになります。
しかしこれは建前の話。
豊臣の血を完全に絶やしたい家康は、密かに暗殺者を放ち奈阿を殺そうと謀っていたのでした。
武勇に優れた甲斐姫は、そのことを想定しており
周りの者、そして自分自身も武装し愛刀波切を手に構えながら大阪城を出て行きました。
この用意周到な甲斐姫の機転のおかげで、暗殺者は手を出すことが出来ずに
奈阿は無事に東慶寺へと辿りつき、そこで余生を過ごしたとされます。
さて、この甲斐姫。現代のあるものに名前を残しているのをご存知でしょうか?
忍城のある行田市の湿地帯は、古代蓮の里として観光者を楽しませています。
この古代蓮、甲斐姫たちより更に古い1400年~3000年前ほどの蓮を現代に復活させたもので
行田蓮と呼ばれています。
この行田蓮を現代の蓮と掛け合わせ、新しい蓮を作るという試みが近年盛んに行われており
その成果のひとつに、甲斐姫の名前が与えられたのです。
今も昔も浮き城に咲く一輪の花。
なんともロマンティックな甲斐姫のお話はこれで終わりです。
現代では、なかなか理解できないことですね。
甲斐姫は、武勇に隠れがちですが、東国一の美女とも言われるので
秀吉がほっとかなかったのでしょうね。
一晩おねだりしただけで、石高倍増は、他の家臣に
「けっやってらんねーわ!」とか思われたようで、秀吉没後の衰退に繋がったとさえ言われています。
まさに、傾国の美女といったところでしょうか?
忍城攻めで、三成が陣取った丸墓山も、さきたま古墳群のひとつです。
行田のB級グルメといえばフライですかね~
お好み焼きっぽい食べ物だった気がします。