Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


「契約の龍」(52)

 《竜族の外見について》
 大きな体(例外あり)
 硬い鱗(例外あり)
 皮翼(有ったり無かったり)
 肢(有ったり無かったり)

 ……うーむ。
 自分で書き出しといて何だが……
 さすが、最強クラスの幻獣。
 何なんだ、このとりとめのなさは。
 …というか、多分、逆なんだな。外見はともかく力の大きなモノを、「竜」と呼んだんだろうな。
 翼があるから「翼竜」。
 海にいるから「海竜」。
 火を吹くから「火竜」。
 雨を降らせるから「雨竜」。
 地を這うから、「地竜」。
 ……だとしたら、単に「龍」とだけ呼ばれるあれは、どんな力を、どれだけ持っているというのだろう?
 王国の創設以降に書かれたものでは、「龍」といえばユーサーの龍である、という暗黙の了解があって、それがどんな龍か、ということについては触れられていない。もっと古い資料を探すか、あるいはよその国の文献にあたるしか……
 目録によれば、書庫にある最も古い文献は、この学院の創設者による手書き写本で、もちろん貸出禁止。閲覧にも制限が掛けられている。タイトルを見た限りでは、求める情報が手に入る見込みは薄そうだし、……何より、読めるかどうかもあやしい。「古文書学」あたりを取っといたほうがいいかな?
 それにしても、乗り掛かった船とはいえ、なんで俺が王族の龍について頭を悩ませないといけないんだ?本来だったら、これはクリスの……
 …って、いま何時だ?
 外、暗いぞ?
 いつの間に日没に?
 夕食の時間に間に合うか?
 っていうか、昼飯も食いっぱぐれてるし。
 クリスはまだ図書館にいるのか?
 いったん部屋を出て、カウンターのあるホールの壁にかかっている時計で時間をみて、夕食の終了時間までまだだいぶ間があることを確認する。それから、並んでいる閲覧室を端から端までみて、どの部屋が使用中かを確認する。幸か不幸か、使用中の部屋は、俺がキープしている部屋をのぞくと、一つしかない。
 おそるおそるドアを叩いて中をのぞくと、クリスが椅子の上に足をそろえて座り、膝に載せた何かを読みふけっているところだった。スカート姿でそんな恰好をされてたら、即座にドアを閉めて回れ右するところだが、幸いにもひざ丈のパンツをはいている。
 「…クリス?何読んでるんだ?」
 声をかけると、一瞬こちらに目を寄越すが、すぐに本の方に目を戻す。
 「んー……ユーサーの伝記。一番分厚いのを選んだんだけど……関係ない事がたくさん書いてあって。それはそれで興味深いんだけど」
 「関係ない事って?」
 「…そうだなあ…たとえば、ユーサーが生まれた、とされている年に、ほかの国では何があったか、とか、ユーサーの生まれた日はこの日とされているが、その後の人生を考えると、占術的に言って、別の日に生まれたに違いない、とか。…胡散臭さが全体に漂ってて、おかしい。まだはじめの方しか読んでないけど」
 「興味深いのは結構だけど、きりのいいとこでやめないと、夕食を食いっぱぐれるよ?」
 「夕食?」
 「もう、外暗いし」
 「え…?」
 とたんにクリスの顔が蒼褪める。
 「続きが気になるなら、貸出手続きを取ったほうがいいな」
 「ああ…うん、そうする」
 慌てた様子で机の上を片づけはじめる。紙、ノート、ペンとインク、そして何冊かの本。
 「慌てなくても、時間はまだ余裕があるから。返す本があるなら、預かっとこうか?」
 「あ、お願いする。…こっちの山が返す本だ」
 指し示された先には、五・六冊の本が積み上げてあったが、どう見ても借りる、と言っている三冊の本の山の方が高い。
 あわただしく支度を整え、部屋を出てから施錠する。自分の借りている部屋は、貸出禁止の本が山積みになっているので、ここへ来る前に施錠済みだ。クリスが貸出手続きを取っている間に、開架室の本を戻しに行く。
 図書館を出る前に、ちらりと時計を見ると、夕食終了まであと一時間強、といったところだった。

#日記広場:自作小説




カテゴリ

>>カテゴリ一覧を開く

月別アーカイブ

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.