「契約の龍」(51)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/06/08 03:32:15
新学期が始まる二週間前、春期の成績が学生に交付された。
俺の方はさしあたりそこそこの成績で、とりあえず落とした科目は、無し。
クリスは……予想通り、一般教養はばらつきがひどく、「不可」もちらほらだが、魔法関連は軒並み「優」だった。一体どんな偏った教育を受けてきたんだろう?
秋期の新入生の入寮が開始すると、女子寮の入り口付近でクリスの姿を見て騒ぐ新入生が――特に女子学生に――多発したので、クリスは一段落するまでの間、寮外へ避難することになった。自主的に。
「寮の中では、スカートで過ごせばいいだけの話じゃないのか?まだ授業始まってないし、寮内は遮蔽されてるんだし」
「寮の中には、学生にくっついてる奴等がうようよいるんだぞ?そいつらを消滅させたりしたら、よっぽど問題になるだろう。「不可視」も「回避」も無しでいられるもんか」
なんでも、薄手の夏服は、呪陣を入れるのは不向きなのだそうな。殊に、王妃が好むような意匠の服は。
「…だったら、課題で使った手を使うのは?」
「あれは夏服向きじゃない。重すぎて。……でもまあ、考慮の余地はあるな。使えそうなのがあるか、探してみよう」
……といった理由で、避難先は図書館になった。
「カウンターで、私が閲覧室の使用申請をすると、職員が怪訝そうな顔をするんだ」
閲覧室で貸出禁止本を読んでいると、クリスがやってきてそう訴えた。
「……で、部屋は取れたのか?」
「…一応」
「だったら、それを俺に言うのは、間違ってる。空きがあるのに部屋を貸してくれないんだったら相談に乗らないでもない」
「…なるほど。道理だ」
まあ、正確にいえばそれも間違いではあるんだが。訴えるべきところは、職員の上司である図書館長なんだから。
とはいえ、この場合、責任の一部は俺にない訳でもない。閲覧室を一つ、長期にわたって借りっぱなしにしている事とか、クリスが調べ物があるときには、つきっきりになっている事とか。
なので、職員にかけ合って済む事なら、それくらいはつきあうべきだろう。
「じゃあ、せっかくなんで、借りた部屋の方に行ってる。騒がせてすまなかったな」
そう言って手をひらひらさせて閲覧室を出て行く。
で、クリスの部屋はどこだ?と聞こうとした言葉を飲み込む。……用があるなら、向こうから来るだろう。
400字詰め原稿用紙で300枚くらい?
とにかく、完結しないことにはどれくらいのサイズになるか…
本にしたら、ハリポタの本くらい厚くなりそうw