飛び立つ船
- カテゴリ:自作小説
- 2012/02/12 23:08:09
セミューレの滝から「エーテル」を持ち帰ったボクたちは、アマテラス様に会いに行った。
スコットは何故か嬉しそうだ。
銀の扉を開け、玉座の間へ進む。
美しい長い赤髪、やさしい黒い瞳でボクたちを包んでくれるかのようだ。
「姉さん!スコット、ただいま帰りました」と、スコットは嬉しそうに報告し、跪く。
「よく帰った!!」と、アマテラス様はほほ笑む。それを見てから、
「エーテルを持ち帰りました。アマテラス様…何か新しい情報があって、呼ばれたと、聞いていますけど。どんな情報でしょう??」と、ボクもスコットに習い、跪く。
ニナもそれに習い、跪いた。
「うむ。それがな…ギルバードという男がそなたたちに会いたいと、行っておるのだ。何でも空飛ぶ船を作ったと、言うのだ。そして「エーテル」を持ってきて欲しいとな」
「空飛ぶ船?それは星の船のことではなくて…ですか?」
「ああ、星の船のことでは無い」
「その男は何者なのですか?」
「セシリーの友人だそうだ。そう言ってもらえればわかると、言っておったぞ」
「セシリーの?」
「ああ、そうだ」
「わかりました。一度会ってみましょう。その男はどこにいるのですか?」
「港町カチュアにいる。では健闘を祈る」と、アマテラス様は席を立たれる。
アマテラス様が退出された後、ボクたちはさっそく港町カチュアへ向かった。
セシリー、セシリーと言えば、レコムンドだ。…今は開放された黒騎士たちと、セシリーで、町は以前の活気を取り戻しつつある。
セシリーは皆から選ばれ、町の長となった。それに新しい住人も次々と訪れていると、聞く。
功を奏したのは、スコットの力だ。ここガブリエルと同じ「サンクトゥス」(聖なるかな)の魔方陣を施したことが、町の評判を高めた。
第二の奇跡の町として。
何よりも幾何学の複雑な文字の刻まれた魔方陣を記憶していたスコットのお手柄でもあった。
第二の奇跡の町、レコムンドの町長の知り合い?ギルバード…。
ヨシュアがなかなか完成させることのできない空飛ぶ船をいち早く完成させたとはどういうことだろう?
ボクたちはガブリエルから東へ進んだ。途中カヌーに乗って湖を渡り、湿原を抜けて港町カチュアが見えてきた。
海鳥の声がさっそく聞こえる。
がやがやと、町の人たちの声が、本来なら聞こえるはずだが、ガブリエル以外の町はヨシュアの魔力によって滅びたのだ。
そんな町に誰がいるのか?それでも人は住んでいるのか?住んでいるなら、魔方陣の力で、復興を手伝うことができる。
淡い期待を胸にボクたちは町へ入った。