調子に乗って腐ってみました その4
- カテゴリ:自作小説
- 2012/01/23 19:51:29
腐った美女と野獣です。
朝が来て、夜が来て、時間はあっという間に過ぎて行く。
ベルの反応があまりに普通の人間に対するものと同じなので、うっかり自分が化け物だと言う事を忘れそうだ。
ベルが水差しを持ったまま何もないところで蹴躓いておれを水浸しにしてくれたり、ベルが階段を踏み外しておれを下敷きにしてくれたり、色々あったがまあ楽しい一週間もあっという間に過ぎた。もう…ベルを帰してやらないとな。
「え、帰ってもいいって…あの、それはどう言う・・・」
自分の服の裾を握りしめ、ベルが細い眉を下げて問いかける。
「どう言うも何も、最初に言ったでしょ? 娘が来たら結婚を申し込む予定だったんだよ。お前じゃそう言う訳にいかないじゃん」
そう。元の人間に戻るには、結婚の申し込みを受けてもらわなければならない。…正直、ベルがいてくれれば、元に戻れなくてもいいかなと思わなくもないんだけど、それはおれのエゴだし。
「じゃあ、あの…俺はもういらないんですか?」
泣きそうな顔でベルが言う。なんでそんな顔でそんなこと言うかなあ。帰したくなくなるじゃないか。
「そう言う事だ。あ、そうだ。お前がここで着ていた服もおれには必要ないものだから、記念に持って帰っていいぞ」
こんな化け物と暮らした記念も何もないものだが、持って帰って少しでもベルがおれの事を思い出してくれたら…そんな事を考えてしまった。
ベルが屋敷から去って一週間。
屋敷の中は寒々しく、バラは華やかさを失った。
何をしてもつまらない。何を食べても味気ない。最近は食事をする気力もなくなってきた。
なんでベルを帰してしまったのだろう。ベルだってこの屋敷で楽しそうにしていたのに。
…いや。例えそうでも、家族の元にいる方があいつにとっていいに決まっている。だからこれで良かったんだ。
そう思い込もうとしても、心に開いた空虚な穴は埋まりそうにはなかった。
この穴を埋められるのはベルだけだ。
おれは雑多なものがしまい込んである部屋をひっくり返し、あるものを探した。
会いたい相手の顔が見られる、魔法の鏡だ。
これでせめてベルの様子が見られれば…。
一抱えもある重い鏡を苦労して部屋へ運び込み、テーブルの上へ置くと早速手をかざし、呪文を唱える。
すると鏡の中心に、ぼんやりと一週間ぶりに見るベルの顔が映し出されて来た。
どうやら食事中のようだ…が?
ベルはおれが持ち帰らせた絹の服ではなく、ここへ来た時と同じような薄汚れた麻の服を着ており、食卓を囲む家族の給仕をしていた。
楽しそうに食卓を囲む家族とは対照的に、無表情で黙々と給仕するベル。
あいつ、あの家の長男じゃなかったのか?
そうこうする内、ベルが手を滑らせて水を姉と思われる女の膝にこぼしてしまった。相変わらずドジな奴だな。
ウチの屋敷でもさんざんやらかしたドジの数々を思い出して頬が緩んだ瞬間、信じらせない事が起こった。
服がぬれた事に腹を立てた姉が、こともあろうにベルを蹴ったのだ。
『まったく役に立たない子ね。あんたなんか化け物に食べられてしまえばよかったのに』
忌々しそうに姉が言葉を吐き出すと、その隣に腰かけている別の姉が『何バカな事言ってるの』と、それをたしなめた。
『お父様の商売が失敗して召使いも雇えない今、ベルがいなかったら私達、自分で何もかもしなくてはならないのよ』
と言う事は、ベルはやはり召使いではなく、この家の家族なのだろうか。
終わる予定だったのに、文字数制限の壁がorz
切なさ感じていただいてありがとうございます^^
表現力あまりないので、その辺が一番心配^^;
ベルは、原作でもわりと不幸だった…気がします(うろ覚えι)
ジュンさん、今晩は。
切羽詰まっている中、ありがとうございます^^ゞ
えー、あんな姉食ったら消化不良起こしますよw
薔薇は…薔薇は…どうでしょう?^^;
まりあさん、今晩は。
過分なお言葉ありがとうございます^^ゞ
多分、原作が良いからそう見えるんではないかと^^;
学生時代、国語は超低空飛行でしたしι
作家なの?
わたしには無理だよ。才能あるんだね
やっぱり背景に薔薇なんぞちりばめるような展開になるのでしょうか・・・気になります。
そして飄々とした喋り方がまた素敵です♪
ベルさん、実はシンデレラっぽい暮らしだったのですね。
ガラスの靴は置いてこなかったけど、野獣さんは
見つけ出してくれるでしょうか。