✪調律師 (後)
- カテゴリ:30代以上
- 2012/01/20 11:25:28
釈然としないまま時は過ぎて行きました。
あの洋館を訪れてから、何日も雨が続いています。
仕事に出てもピアノの音が、なんだかくぐもって聞こえます。
首根っこが重く、食欲もない。
私は三日続けて注文の仕事を断ってしまいました、
屋根をぽっぽっと叩く雨音が家じゅうに響いています。
うす曇りの夕方、洗濯物を取り込んでいるとドアベルが鳴りました。
「お届けもので~す」、郵便配達で請求書の束と小包が届けられました。
小包の差出人には見覚えがなく、
包装紙を開けると何やらこうばしい匂いが漂ってきました。
添えられた手紙を開いた途端、私は息を飲みました。
十年前のお礼からその手紙ははじまっていました、
あの電車横転事故で助けた少女からだったのです。
{あの横転した電車の中で見ず知らずのあなたに助けていただいて、
まだ小学生だった私はろくにお礼もいえませんでした。
あなた様のお怪我は大丈夫だったでしようか。
私の火傷はその後何とか安定しました、
今年の春に調理師の免状をいただく事が出来ました。
夕べチョコレート・ケーキを焼きました、今私が出来るせめてものお礼です。
スポンジのつなぎにチョッピリ工夫を凝らしてあります、
これからも新作が出来るたびにお届けしようと思います。
もしご迷惑ならば二度とお送りはしません。
本当に、本当にありがとうございました}
私は手紙を閉じて、ケーキを冷蔵庫にしまいました。
元来、私は甘いものが好きではないのです。
夜中になっても寝付かれず、
私はステレオに前に座り古いレコードを取り出しました。
学生の頃よく聞いたピアノソナタ、一枚が終わるとまた別のレコードをかけました。
久しぶりに聞くその音は以前と同じで、キラキラと光を振りまくように聞こえました。
それでいて、どの演奏のピアノもすべてそれぞれが違う輝きを放っているのでした。
三枚目をかける前に、私は冷蔵庫を開けチョコレートケーキをつまみました。
四枚目、五枚目とかけているうちに窓から朝日が覗きました。
皿のチョコレートケーキは、ほとんどなくなっていました。
甘いもの嫌いの、食わず嫌い。
一枚一枚のピアノの音の、違う個性。
私は思い出しました、お昼過ぎ道具を持ってあの洋館を尋ねました。
目の見えない老婆は少し驚いていたようですが、
何も言わず私を居間へ通してくれました。
私はピアノの前に膝をつき、音合わせをはじめました。
他のピアノにはない響、
それぞれの音が見せる表情を一瞬でも聞き逃すまいと息をひそめて。
ピアノの囁きは、はじめはおずおずと。
そのうちに大胆に、私の耳に流れ込んできました。
やがて私が最後のA音をポロンとはじくと、
老婆は涙声で
「おじいさんの音だ、やっとおじいさんに音になった」
言いました。
視力のない目にはたくさんの涙と微笑を浮かべて、
「あなたの腕はなんてすばらしい魔法の手なんでしよう、
もしよろしければ、何か一曲聞かせていただくわけにはまいりませんか ? 」
私は軽くうなづいて、そして指の足りない両手で、
子供の頃に習った短い練習曲を軽やかに奏でました。
もっと言って・・・。
ブラボーさんは天才でね!!
あぶらかたブラボー・・・。
指がたりなくてもおじいいさんの音を再現できる。
心と魂をこめるってこういうことかな。
上手い・・・ヨーロッパ旅行進呈。
魔法といえばチョコレートケーキにも魔法かかってたのかな?
おじいさんの音再現するのは骨だったでしょうねー^^;
気にいってもらえればさいわいでし。
やっとぬくもりのある音を調律できたのですね。
ウレピーでしね。
「正しい」だけがすべてじゃないんだね。
「正確」なことが人を感動させるものじゃないんだね。
レコードは雑音が多いけど、CDにはない優しさや迫力を伝えてくれるもんね^^
でも、それを感じることはできても表現するのは難しい。
彼女は本当に腕のいい調律師さんですね^^
幼い時、聞いた音とか・・・ね。
長い旅は続く・・・・。
ひとりひとりみんな違うからネ。
真心って・・とどくものさ。
でも・・・
ホンモノ=心に響くもの
きっとさ
探すの大変だけど、あるよね?????
そうよね、私は私(*^^*)
彼は自分の通った人生を、この仕事に注がられる原動力にしている、或は
結果的にそうなっているのだね。(泣けてきちゃったです・・)
なので、おばあさんの記憶をも感じとれたのだね。
魔法の手。実は 魔法は 結果的に備わってくるものかもしれないね。
キラキラビーム…命中でし。
深いなぁ
チョイきゅーんときました(*¨*)チョイダヨ チョイw
私も書き直してポロリ。
また読んでね~~。
寒い夜に、少しは暖まったかな~~~。
私の勝手な小話でし。
暖かくなりました。ありがとう^^
以前好きだった人が調律師でしたが
寡黙な方でした。
いろんな音を聞いてたのかな・・・
私は好き嫌いはありましぇん。
耳に残るあなただけの音。
星ひとつは貰えるかな~~~。
聞きなれた音色ってあるょね。
ピアノによって微妙な音色。
きっと優しい音色なのでしょうね。
いつか聞かせてくれますか?
なんだか 胸が熱くなったよ〜><
ありがと〜〜〜〜〜ww
おばあさんの耳にだけ残っとる音かぁ…(´ー`)
ホッとした気分になれたよっ♥
他のピアノにはない音、って、どんなだろう?
でも、良かった。
めだたし、めでたし(^^)