☆「砂の女」(安部公房)
- カテゴリ:小説/詩
- 2011/12/31 00:11:11
阿部公房は不気味な世界を描くのが得意ですが、実は不気味なだけでなく人間の心理の深い部分に触れていますし、大きなテーマが隠されている気がします。
中学校の先生が昆虫採集のため海辺の部落を訪れる。その部落は砂をかき出さなければ埋もれてしまう大変なところであった。先生は部落の人々に騙され砂のかき出しをする労働力として囚われの身となってしまう。
先生は一人暮らしをする未亡人の家に住まわされることになり、二人きりの生活が始まる。そして、ずっと囚われの生活をしてきた未亡人になぜ逃げ出そうとしないのかを問い詰めるが何の答えも得られない。
先生は脱走を試みるが、すべて失敗に終わる。その部落では生活を守るため脱走を防がなければならず、またその対策も完璧になされていた。
先生ははじめのうちは脱走することのみを考えていたが、無理であることを悟ると自己欺瞞が始まりその生活を納得するようになる。
やがて未亡人が妊娠し、そのトラブルのため脱走のチャンスが訪れることになる。
しかし、先生は自らの選択で囚われの生活に戻っていき、その後失踪宣言が出される。
動物を使った心理学の実験で、この話しとよく似たものがありますが、洗脳やマインドコントロールもこのようなものなんでしょうかね?
亡くなったときは、もう彼の作品を読めないのかと泣きました。
個人的には大江健三郎より、安部公房にノーベル賞を上げたかったです。
重要な作家だと思います
漱石ー芥川ー太宰ー三島ー大江ー春樹
という流れのみで近現代日本文学を捉えるのは
外国の大学の日本文学科の学部生のレベルではないか、と(私見)・・・
予定外に子供が出来てしまうと、逃げ出すのは『男性だけの習性』みたいですけどな^^