■近代文藝之研究|時評|動的美學(6)
- カテゴリ:その他
- 2011/12/04 23:38:58
■近代文藝之研究|時評|動的美學 (6)
リップスの思想も之れと似てゐる。例へばドーリッシュ式の圓柱などについて言ふも、其の形は常に其の用途目的に應ずるものでなくてはならぬ。圓柱が有する動は、其の圓柱の意義を示すものでなくてはならぬ、と言ツてゐる。但しリップスは更に一歩を進めて、斯かる動は、また自然の約束と矛盾してはならぬと説く。自然の約束は之れに合する時は動を助ける譯であるが、之れに背行すると、阻礎の結果を生ずるからである。
以上の見方は、全く誤とは言へぬが、不完全と思ふ。美快感に要する動の約束は、之れが我等人間の要求する動の方式に合する所に成り立つ。我等人間が要求する動の方式とは、是れが或る過程によツて完結したものとなる〓[#「こと」合略仮名]である。今試みに此の完結の過程を擧げると、第一、凡ての動は開始過程(Anfangsstadium)を有してゐなくてはならぬ。即ち是れによつて我等の心力(Willensimpulses)を喚起し統一するものである。第二は件の心力が動き行く活動本部(Kraftstelle)である。第三は終結過程(Endstadium)で、是れによツて前來の動が完結せられる。
--------------------
*註1:ドーリッシュ式の圓柱
ドーリア(ドリス)式円柱のこと。イオニア式、コリント式と並び称される古代ギリシャ建築の様式のひとつ。パルテノン神殿に代表される。
*註2:用途
「途」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註3:更に
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg
*註4:進めて
「進」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註5:説く
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註6:全く・不完全
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg
*註7:誤とは
「誤」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/go.jpg
*註8:要する・要求
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
*註9:合する所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註10:過程
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「程」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hodo_tei.jpg
*註11:完結したものとなる〓
「〓」は「こと」合略仮名。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gouryaku_koto.jpg
*註12:喚起
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。
*註13:終結
「終」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/owaru.jpg
*註14:前來
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

-
- 銀の雪王子@ゆう
- 2011/12/05 01:02
- 研究の先生ですよ、勉強と教養身に付くみたいですから
-
- 違反申告