星を盗む男 (7)
- カテゴリ:映画
- 2011/11/26 18:03:01
「おいおい、そうだねぇって……」
その台詞を言い終わった後だったか、先だったか良くは覚えていない。
けれどそのあたりからひとつ、またひとつと次々と光が流れた。
そして遂には、全天に星が流れ始めた。まるで空が揺らされているかのように…。
男は、驚いたように訊ねてきた。
「おい!? これは、一体??」
「流れ星のバーゲンセールだ!」
「は?」
「と、でも言いたいが、そうじゃない」
?だらけの男に、少し勿体つけて説明してやった。
「これがローゼンファイルの正体。 流星嵐さ」
口をあんぐりと開け、呆然と空を眺めている男の耳にそっと囁いた。
「盗むには、ちょっとだけスケールがでかすぎたな」
驚いた様子も見せず、少しの沈黙のあと男は言った。
「そうだな…。 ちょっとだけな」
二人して、星のシャワーを浴びていると、男は素朴な質問を浴びせてきた。
「しかしなんだってこんなものを、ローゼンファイルだなんて言ったんだ?」
「ローゼンファイルなんて言ったのは後世の連中さ。 彼が言ったわけじゃない」
「しかしこんなものを絵に隠す必要がどこにある?」
「さあな、もしかしたら…。叶うと思ったんじゃないか?」
「ん?」
「昔から言うだろう、流れ星に願いを託すと叶うって」
「ああ」
「これだけ流れれば、盲目の少女の星を見たいって願いが叶うんじゃないか?」
「まるで御伽噺だな」
「この流星嵐はおそらく300年周期なんだ。流星の極大の時間は僅かだ、そしてその時が都合よく夜だとは限らない。
恐らくハンナの見た流星嵐の極大は昼間だったのさ。
天文にも精通したローズ博士は、それを知った上で青空を見上げさせたんじゃないか?」
「なるほど、真昼の流星に願い事をしたのがあの絵ってことか!」
「そういうこと。一般人には見ることが出来ない流星でも、彼女なら見えていたかもしれないな」
すこし考えるように、目を閉じた男が、ぼそりとつぶやいた。
「300年か…人類はあれから成長したのかねぇ?」
「そうだな、酒と煙草の味がわかる程度には、なったんじゃないか?」
俺は、それきり口をつぐんだ。
男も無言で、星を眺めていた。
全ての音が闇に吸い込まれたかのように静寂が訪れた。
会話は途切れ、ニ人して無言で天体ショーに見入っていた。
盲目の少女と一緒に…。
どれだけ、そうしていただろうか?
再び男が口を開いた。
「確かにこれだけあれば、願いのひとつくらいは叶いそうだな」
「案外ロマンチストなんだな、聞かせてみなよ どんな願いだい?」
「さしずめ今ならウィスキー1杯ってとこか? ここはちょっと冷える、体を温めたいね。…もっとも」
すこし、恨めしそうに続けた。
「さっきの金があれば、一杯なんてケチくさいことは言わずに済むのだが
この星空の星みたな数の札束だったんだよな?」
「ああ、そうだな」
ロマンの欠片もないようなセリフを、男は子供みたいに空に向かって叫んでいた。
「なあ、ちょっと手を出してみろ」
「ん?」
男は、素直に手のひらを天に向け胸の前に出した。
「あれだけあれば、ひとつこぼれることもある…だろ」
俺は男の目の前でスターダラー札をひとつ振って見せ、手のひらの上に乗せた。
「抜け目のない奴……。ノーチェイサー?」
男は笑いながらぼそりと聞いてきた。
俺も、クスリと笑いながら答える
「ああ、ノーチェイサー」
2人は、お互いの肩を叩きあいながら、星降る闇に消えていった。 (完)
長々と読んでくれたんですね。ありがとう~
綺麗な夜空の情景がうかんでくれると良いのですが
元々、彼らのお金ではありませんしねw
きっと今頃、ウィスキーをロックでやっているはずです。
そんなに願い事があるのですかw
叶うといいですね~
ロマンチストの恭ちゃんらしい締めだね^^
んだね・・。なるほどww。