星を盗む男 (3)
- カテゴリ:映画
- 2011/11/11 00:55:58
シトラスの香りをまとって現れた女性。
艶やかな黒髪は胸まで達しており、
スカートではなくパンツのスーツ姿は、何処となく秘書のようで知性を感じさせた。
ひとつしか無い出入口を塞ぐ様に立っていた女は、やや半身になると手招きをしてきた。
少し挑発的な態度なのは、絶対的優位性からだろうか?
事実イニシアティブを握っているのは彼女だ。
俺のほうは、さしづめ追い込まれたネズミといったところか。
お誘いに乗るしかないだろうが、素直に出て行くのも芸がない。
何かいい手はないものか?
状況を打破すべく頭をフルスピードで回転させた。
考えることはいくらでもあった。
彼女は何者だ?
何故問答無用で襲ってこない?
差し当たっての問題はこの2つ。
勿論正体についてなど察しようはあっても答えなんて出ない。
不意打ちをしてこない理由は…。
辺りをみまわすと合点がいった。
なるほどな ここで乱闘になり絵に傷が付きでもしたら大損…ってわけか。
ならここにいる限りは安全 だが所詮は袋のネズミ。
降伏が少し先に延びるだけで、いずれは両手を挙げるしかなくなる。
となれば、篭城するよりも打って出たほうが可能性はある。
結局力技に頼らざるを得ないようだ。
(はぁ…… 面倒くさいことになった)
半分ぼやきつつ、観念してデートのお誘いを受けることにした。
ドアをでると、女はナイフを既に抜き待ち構えていた。
「あんた、意外とせっかちなんだな」
後頭部を掻きながら、ゆっくりと彼女の様子を伺った。
順手にナイフを構えるオーソドックスなメレースタイル。
素人ではない 明らかに何らかの訓練を受けた者の構えだ。
と、無風であるはずの倉庫内で、不意に風が揺れた。
(ビュン)
髪を振り乱し問答無用で女は、斬りかかって来た。
なぎ払うように弧を描くナイフの軌道は僅かに外れた。
女の顔を見るとさっきまでの理知的な表情は、なりを潜め狂気に満たされていた。
正面に対峙し、目一杯注意を引き付け瞬時に回りこむ
今、命を得んと猛スピードで迫り来るナイフを見据えると無意識に口元は歪んだ。
ぎりぎりまで引きつけ、ナイフが当たるすれすれでひらりと消えて見せた。
無論ナイフは空を切った。
だがそれで終わりではなかった。
返す刃は、再び殺意の弧を描き出す。
止まる気配はなく、同じようなリズムで何度も切り込んでくる。
狙いも正確だ。 なるほどな…。
回り込むように接近していた状態から
いきなり後退してランダムに動いて見せた。
彼女の斬撃は、その唐突の変化に付いていけず少しバランスを崩した。
時間にしたらコンマ何秒かの隙だろう
けれどその隙を見逃してやるほどお人よしじゃない。
「遅いよ」
猛然と距離を詰め、勢いそのままに刀の柄をわき腹にぶっつける。
女はわき腹を押さえながら踏みとどまった。
柄で打った勢いで刀を抜き、女に斬りかかる。
女は無理のある体制から応戦した。
キィーン
間一髪、女のガードは間に合うが大きくバランスを崩しかけていた。
なおも体制を立て直そうとする女に太刀を浴びせていく。
キィーン キィーン
刃と刃が交錯する都度、悲しい金属音が室内の空気を切り裂いた。
完全に後手に廻った彼女に、刀はまるで荒れ狂う嵐のように続けざまに襲い掛かかる。
発せられる鈍い金属音は、まるで彼女の断末魔の叫びのように倉庫内に響いた。
打ち込むこと数十回、彼女のか細い手首は、やがて堪えきれなくなり
とうとうナイフは宙に舞った。
「チェックメイトだな」
切先を額に向けると女は、がくりとうなだれ抵抗を止めた。
その瞳からは完全に狂気は消えうせ、諦めの色がありありと浮かんでいた。
「さて何から、話してもらうかな」
刀をを鞘にしまう事無く尋問を始めようとした。
その刹那、右上腕部に熱が、走った。
さらに痛みだと感じるまでには、もう2秒の時間を要した。
(仲間がいた? 何で今頃出てきた?)
瞬時に状況を理解すると
転がるようにして体を地面に張り付け、狙撃された方向を見据えた。
日が暮れて真っ暗になっている倉庫の出入口。
その闇の向こうから、男の声が聞こえた。
「こういう場合…」
声の主は、ゆっくりと闇を切り取るように現れた。
その姿は全身黒づくめ、さながら死神のようだ。
なおも男の声は続いた。
「どう見たって、あんたが悪役だよな」
いきなり大ピンチ!なのですよ~
まあここまでで半分くらい!
続きがんばります!
パンのほうも、細かいトコ修正して1ッぽんにまとめたいと思います。
3人とも同業者なのかな・・。続き楽しみにしてるね。
その文才を頼ってしょうもないお願いをしてしまってすまないねw
そうですよ、がんばって続き書くのでお待ちくださいね~
もっと読みたい!って貴女はアルバイトカテゴリーの「もうひとつの夏へ」をどうぞ~
すごぃ。。
読んでくれている人がいてほっとしました。
続きは、少しだけ時間が開くかも知れませんがお待ちいただけると光栄です。