Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


契約の龍(31)

 「おお、そう言えば、そなたが倒れた、と聞いてとんできたのだが…「龍」がらみだったのか?」
 「ええ。ジリアン大公に「龍」への接触の仕方を見せていただいて、一緒について行ったら、「龍」に食べられかけましたの。慌てて逃げてきたんですけど、力を使い果たしてしまって。……もし、アレクが「力」を分けてくれなければ、今頃はハース大公の隣に並ぶ羽目になっていたかもしれませんわ」
 「「龍」に、食べられかけた、だと?人に力を貸さないばかりでなく、そんなことまでするのか、あれは」
 「龍」が、力を貸さない?
 「…陛下。恐れ入りますが、それはいったいどういう…」
 国王が、「しまった」、という顔をする。
 「……貴公は、クリスティーナの「金瞳」の事は知っているのだな?」
 かなりよく知らされていると思うので、うなずいて返す。
 「ならば打ち明けてもよいと思うが…ここ数年、「龍」が魔法の行使に応じないのだ。今現在、王族のだれ一人として、「金瞳」の力を使えるものがおらぬ」
 「誰ひとりとして?陛下ご自身も、ですの?」
 「ああ。もともと大して使えていたわけではないが…最近では全く、だ」
 一つ当てが外れた。本人が使えない、と言っているのに、やって見せてくれ、とはいえない。
 「それは……他国に知られたら、かなりまずい事態では?」
 「まあ、魔法学院を擁しているおかげで、人材には不足しないし、今のところ事を構えたがってる近所はいないので、大丈夫なようだが。…外交担当には感謝しないとな。…感謝、といえば、貴公にも、随分と世話になったようだ。感謝する。これからも、どうかよろしく頼む」
 「お父様。ついで、と言ってはなんですけど、お願いがありますの」
 ここぞ、とばかりに、クリスが最終兵器を繰り出す。
 「…お願い?」
 「もう一人の王族…クレメンス大公に御目通り願いたく存じます」
 「クレメンス?フィンレイの事か?…だが…」
 「大公が現在意識不明、という噂があるのは存じておりますわ。魔法学院での事故がきっかけだ、ということも聞き及んでおります。学長の話によると、お父様よりも殿下の方が魔法の才があった、ということも」
 「…そなた、まさか、この事態はレイが引き起こしている、などと…」
 「大公殿下が、ご自分の意思で引き起こしている、とまでは考えておりません。でも、事故の時に……何かがあって、そのせいで「龍」が異常をきたしているのかもしれない、とは考えられないでしょうか?」
 「クリスティーナ……」
 王が苦い顔をする。
 「……そういう意見は、あの事故の当時からある。だが、あれ以降、誰一人として、「龍」に接触することが叶わないのだ」
 「ですから、私が」
 「そなたを失うわけには、ゆかないのだ。わかるな?「金瞳」を継ぐことができるものは、もう、そなたしか」
 「ですが、陛下。「龍」があのように荒れたままでは、いずれ…いえ、今でも「金瞳」は意味のないものになっているでしょう?」
 「……」
 「お願いです、私に、やらせてください」
 「……」
 「私一人では戻って来られるかご心配でしたら、引き揚げ役として、アレクを同行したい、と考えています」
 引き揚げ役って……そこまでは聞いていないが。
 まあ、昨夜のことを鑑みると、仕方のない事ではある、か。
 「……昨日は、「龍」に接触する事ができたのだな?」
 「はい。昨日は、ジリアン大公を守りつつの撤退だったので、かなり消耗してしまいましたが、一人でだったら、もう少しうまく戻れた、と思います」
 「彼の支援があれば、さらに安全に戻れるのか?」
 「その、見込みはあるかと」
 「……考えておこう。これが最大限の譲歩だ」
 「ありがとうございます」
 クリスが破顔する。
 「ところで、この休みはどこで過ごす予定かな?マルグレーテがそなたに会うのを楽しみにしているのだが」
 「……それは、許可を出す交換条件、という事でございましょうか?陛下」
 「レイに会いたいのなら、王宮に来なくてはならんが。なんならそちらの彼、アレクといったかな、貴公も同行して構わないぞ。部屋は余っているからな」
 ひとの休みの予定を、勝手に決めないでいただきたい、と思ったが、口に出すのは、我慢した。どうせ聞いてもらえる訳もないし。

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