うららちゃんは一年前に我が家に来た人型万能ロボットである、
すこぶる順調に動いている。
・・・・・・と言いたいところだが、最近不具合が出てくるようになった。
まず、最新式の無線LANに繋ごうとして接続で手間取った。
開通できたはいいが、なぜかメールの送信ができなくなってしまった。
「メールの送信ができませんでした。
SMPT サーバーからのメッセージ・・・・・・、
211.-:@uf]]]\\\@p-9j:]??・・・・ゼロ・ワン・ドットトツトツトー☤☤☤☣☣☣。
ウううう～～～～クソ」
うららちゃんはロボットのくせにどうも数字が苦手なようで、
羅列された数字を読み上げようとすると、
すぐにこの☤☤☤☣☣☣と言うのが始まってしまう。
「どうした、またフリーズか ? 」
「☤☤☤クク☣☣☣・・・・・クソ・・・・ああーーダメです、
このままスリープ状態に入ります・・・ああ・・・あぁぁぁぁ」
僕は諦めてそのままにしておくことにした。
ロボットをあまり強制終了するのはよくない、
こういう時は少しそっとしておいてスリープのまま休ませるのが良いということ、
最近だんだんわかって来たのである。
口を半開きにしてスリープ状態に入ったうららちゃんを抱きかかえ、
ソファーに寝かして毛布をかけてやった。
ロボットに毛布なんかかけてやっても何の役にも立たないと思うのだけれど、
こうすると何故かうららちゃんの動作が安定する。
それも、いつも同じスヌーピーの絵柄の小さな毛布でないとダメなのだ。
うららちゃんは毛布を偏愛するという、奇妙な性癖を持ったロボットなのである。
三時間ぐらい寝かせてそれから起こしてやろうと思って、
そのまま机に向かい仕事の続きをしていた。
すると、数十分ほどして背後から声がした。
うららちゃんの声である、
「・・・・・・トラゾウくん・・・・・・・・」
「なに ? 」
「トラゾウくん・・356741・・☊☁☩☋☋☇☖☐☛☬☪・・・・」
「おぃ、起きろ、どうした」
「うぅ・・・ん・・・・・・」
僕は毛布をめくり、胸のモニターを確かめてみた。
モニターには「ハードの検索中」と言うウィンドウが出ていて、
ウィンドウの下の方には小さな画像やら文字やらがものすごいスピードで表示されてる。
それが、時折青い最新型のロボットの映像のところで表示時間が長くなり、
薄ぼんやりと全体画像に浮かび上がっては消えていく。
そのロボットの全体画像が浮かび上がったところで、
必ずうららちゃんはうめき声のようなものを出す。
「・・・・・・トラゾウくん・・・・・・・」
「おい、しっかりしろ ! 起きろ、起きろ、応答せようららちゃん応答せょ」
するとうららちゃんはハッとして飛び起きて、
仰向けのまま後ずさり目をぱちくりさせてから叫ぶように言った。
「すす・・すいません、あの私・・気を失っておりぃぃぃました。
でも不思議なんです、気をうしなっていたのにたくさんの画像を見ておりました」
「それは夢を見てたんだょ、いつからそうなったの ? 」
「わかりません、いつの間にかそうなっていたんです。
もしかしたら、新しい無線LAN回路に繋いでからかも知りません」
確かにそうかも知れない、
新しい回路にしてからスパムメールの数が百倍に増えたのだ。
「お前が見てた画像と言うのは、もしかしてこれか ? 」
僕はそばにあったロボット雑誌をめくり最新機種カタログの中から、356741と言う青いロボットの写真を選び出してうららちゃん見せてみた。
「トト!! トラゾウくん・・・」
驚いてる。
「・・・・・・・・☤☤☤☣☣☣・・・・・・・・」
そして照れている。
どうやらいつの間にか出会い系ロボットサイトにアクセスして、
自分勝手にこのロボットと知り合っていたようだ。
「トラゾウって言うのか、相手は」
頬を赤らめてうららちゃんは頷いた。

ふぅ、・・・・・・・・まいったな～～～～～。