■近代文藝之研究|時評|梁川、樗牛、時勢…(4)
- カテゴリ:その他
- 2011/10/16 22:31:33
■近代文藝之研究|時評|梁川、樗牛、時勢、新自我 (4)
梁川に比べれば、樗牛の追想は全く状態を異にする。樗牛の文藝も同じく色彩絢爛姿態横生は勿論であるが彼れは燃え上る〓[#「焔」の異字体]の如く、常に動いてゐた、從つて消えることも早かるべき運命を有してゐた。彼れは必ずしも一部の人のいふやうな思想の人では無い、殆ど全身を擧げて文藝の人であつたらしい。彼れは畢竟我が邦に於けるスツールム、ウント、ドラングの驍將であつた。由來彼等は文藝の理想を以て直ちに實際界を支配せんとする、こゝに矛盾が起こる破壞が生ずる。しかも是れを行るに情熱を以てするが故に、あらゆる傳來の事物は是れに觸れて〓[#「火」+「毀」]傷せられる。さて其の跡に殘るものは、荒廢の中に立つて一切を自己中より建設し來たらんとする、所謂オリギナールである、ゲニーである。
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*註1:追想
「追」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註2:全く・全身
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg
*註3:状態
「状」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/jyou.jpg
*註4:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註5:姿態
「姿」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi_sugata.jpg
*註6:横生
「横」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ou_yoko.jpg
*註7:
「〓」は「焔」の異字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/en_honoo_2.jpg
*註8:消える
「消」の旧字体。旁の「ナオガシラ」は「小」。
*註9:運命
「運」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註10:畢竟
「竟」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_tsuini.jpg
*註11:我が邦
「邦」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hou_kuni.jpg
*註12:スツールム、ウント、ドラング
原本では「スツールム、ウン、ト、ドラング」とあるが改めた。
「シュトゥルム・ウント・ドラング(Sturm und Drang)」 は、18世紀後半にドイツで起こったそれまでの古典主義・啓蒙主義に対して起こった芸術革新運動のこと。「疾風怒濤」と訳されている。フリードリヒ・マクシミリアン・クリンガーの同名の戯曲に由来する。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』(1774年)、シラーの『群盗』(1781年)、クラシック音楽では中期のハイドンなどが「シュトゥルム・ウント・ドラング」を代表する。
*註13:起こる
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。
*註14:情熱
「情」の正字体。「月」は「円」。
「熱」の俗字体(か?)。「執」+「レンガ(レッカ)」。下記 URL の文字は作字したもの。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sakuji_netsu.jpg
*註15:〓[#「火」+「毀」]傷
「〓」は扁が「火」、旁が「毀」。
*註16:所謂
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註17:オリギナールである、ゲニーである。
「オリギナール」=「original(独)」、「ゲニー」=「Genie(独)|独創力・天才の意」。
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
第九の詩はおっしゃるとおりシラーです。
σ(^Д^)は文学論の研究はしてはいません。小説もめったには読みません。
抱月の『近代文藝之研究』をテキストデータ化しようと思ったのは、
抱月という人の物の考え方の一端を知っておきたかったことと、
現時点で、世間の人が気軽に抱月の文章を実際に目にするチャンスが少ない
ということの2点がありました。
ではなぜに抱月か、ということについては、お時間のある時にでも、
こちら ↓ の URL の「はじめに」と「新・はじめに」を読んでいただければ、と思います。
http://hougetsu.jugem.jp/
いくら引き写しとはいえ げるそるたまのブログは難解すぎて、大江健三郎さんよりも
てごわそうです^^ ホント難しい 文学論を研究されてるのですか?