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■近代文藝之研究|時評|今の文壇と…(8)

■近代文藝之研究|時評|今の文壇と新自然主義 (8)

單なる外界の事象に非ずして、生きた事象生きた自然を結撰する、其の方法として先づ私心我念を消せんとする。要は自然の新生命を誘ひ出さんとするにある。されば延いて之れを表白する上にも、たゞ腦底に作つた自然を寫し事象を寫すといふと異なり、其の事象其の自然は、別種の生命あるもの、開眼せられたもの、從つて此の貴い生命を逸せざらんがためには、一指頭だも我意私心の作爲を以ては之れに觸れざらんと工風する。
詮ずるに純自然的なる此の派にあつては、我れまづ生命となつて新自然を作らんが爲に我れが見えざる生命となり、感情となつて合體したのである。自然といふに此の新しい意義があつて、始めて自然を絶對の宗師と仰ぐの理由が生ずる。是れが文藝上の特權であつてまた自然主義の本意では無からうか。而して今の文壇はこの種の自然主義に關して殊に心を潜むべき時となつたのではあるまいか。(明治四十年六月)



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*註1:單なる外界の
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。

*註2:要は
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg

*註3:逸せざらん
「逸」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註4:詮ずるに
「詮」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sen.jpg

*註5:感情
「情」の正字体。「月」は「円」。

*註6:絶對
「絶」の正字体。旁の「色」が「刀」+「巴」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zetsu.jpg

*註7:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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2011/10/11 00:35
俺より長い文章凄い↓

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2011/10/11 00:32
明治期の知識人は、漢文の素養の上に、欧米の言語も自在な人が一般的で、
そのため、漢文調な言い回しや難字が多く、翻訳調の文章に近いものを感じるところがあります。
漱石の文章が、現代人には比較的読みやすいのは、
漱石が落語によく親しんでいて、その語り口を積極的に取り入れたからだと推測します。
また、漱石の小説が新聞での連載小説という、一般大衆相手だったのに対し、
この『近代文藝之研究』の読者対象は、学者や文壇関係者、あるいは学生を想定しているので、
漢文調・翻訳調を特に噛み砕いて叙述することはしなかったような気がします。
ただ、抱月の文章自体は、極めて論理的な構成・叙述となっているので、
全体からまず把握するように読んでいけば、意外に明快な一面もあります。
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2011/10/10 23:48
げるそるたまの文章はまるで現国のテストを受けて日頃の勉強不足を慌てるような
そんな感覚なのです。 まあ偶然からお邪魔するようになりましたが、
やっぱりむずかしいです>< そのまま写すだけでも難しいでしょうに
良い勉強になります 今ウィキペディア見てきたんですが、抱月はトルストイを脚色
したんですね なんか思い出せそうで、のど元まででてますのにおもいだせません
松井須磨子さんとのことも有名ではあるのですが・・・・ トルストイはとても心のきれいな人で
有ったと何かで読んだ記憶がありますが、 そんな彼の小説を脚色するというのは
彼のその500人以上の登場人物の処理はどうされたんでしょうね????
ロシア文学もさっぱり……○×△□☆……でましてその上 ロシア文学なんて????
語るだけの、知識も持ち合わせず恥ずかしい限りです。



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