ワタシはニナ・ガランド・ヴァルキュリアス・・・♡
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/07 13:18:37
扉を開けると、カウンターの奥に驚く顔でボクたちを見つめる人間がいた。
だが、椅子に座ってくつろいでいるのは魔王によって操られている殺戮兵器、黒騎士たちだった。
黒騎士たちの複数の視線が一斉にボクを捕らえた。
(やばい)
そのすぐ後、さらにしゃがみこむ。
というか、ほとんど地面にキスをしている感じだ。
そのまま、前へ進む。・・・はずだった。
ニナも、スコットも同じ行動を選択していると。
甘かった。
「ワタシは…ニナ・ガランド・ヴァルキュリアス・マーティ・ヴァラサム。貴公らに決闘を申し込む。さあ、われこそはと、名乗る者は名乗りを上げよ」と、ニナはマントまで捨てて、高らかに叫んだ。
「我らを知らぬのか…我らは黒騎士ぞ。魔王によって与えられし、破壊と殺戮の力。その我らに決闘を申し込むとな」と、すぐ近くにいた黒騎士が立ち上がり、こちらに迫る。
「そうだ!決闘を申し込んで何が悪い。」と、ボクもマントを外し、姿を現して、やけになって叫び返した。
「おおい、いいのかよ。勝算はあるんだろうなぁ」と、スコットはマントを被ったまま、ボクの背中を掴んでくる。ボクはスコットの怯えた視線に向ってにっこり笑う。(心配するな…案外ボクはうまく踊るよ)。
それが通じたのか…
「……オレはスミで怯えて丸くなってるからな」と、スコットはつぶやく。
ボクは再びマントを被り、姿を消した。
「おい、ニナ…どうなるんだ?オレたち」と、スコットは動き出したボクの元を離れ、ニナの後ろに隠れる。
「大丈夫ですわ…。ワタシはルゥを信じていますから」と、ニナは目をつぶる。
その間、黒騎士たちはニナとスコットに向って間を詰めていく。ニナとスコットが黒騎士たちの殺意にさらされる。
マントを羽織ったボクは、席を立ち、動き始めたばかりの黒騎士の後ろにまわり込み、心臓部分に手を当てた。
「いでよ、レヴァンティン」
黒騎士が…召喚と同時に吸い込まれて行く。
断末魔の叫びと共に。
黒騎士たちは全員振り返った。
何故後ろから…。
きっとそう思ったことだろう。
(フェンリル、あとは任せる…。スコットの怖れを喰らい、ニナの畏怖と尊敬の念を喰らい、黒騎士の血を喰らったのだ。足りないとは言わせないぞ)
(よかろう。ラーに会うためだ。わが言霊を唱えよ)
われ、闇よりもなお暗き闇の衣纏うなり。
われ、人にあらず。
われ、魔にあらず。
われ、すべからく死を与える者なり。
憎しみと、血と、悲しみを喰らいて
鬼を狩る者なり
レヴァンティンよ、赤き武器よ。今宵は鎌となりて、獲物を狩ろうぞ…。
われ、死使(しと)なり。
ドクロの仮面を被り、鬼を狩る。
「おい・・・見ろ」
「あれは人間なのか・・・」
「・・・身体からあふれ出ている金色(こんじき)の糸のようなモノ・・・あれは何だ?それにわれらと同じ赤い瞳・・・いや、濁りなきルビーアイズ。まるで魔王様のような・・・」
黒騎士たちはそれぞれにざわめき、うろたえている。本来、死を恐れぬはずの彼らが自ら後ろへ下がる。
ゆらり・・・と、動いた。いや、動いたという表現すら的を外れている。消えた・・・。
そう表現するべきかもしれない。
きらめく赤い残像なのか、それとも黒き残像なのか
黒騎士たちが見る最後の光景はどんなものなのか
黒騎士たちは、まるでロウ人形のように固まったまま、首を狩られていくようにさえ見える。
黒騎士は殲滅した。
まだ生体反応を感じる。
われを前にして怖がってすらいない。
それどころか・・・あたたかさすら感じる。
「ラー」が宿っているかのようだ。
「女、名前は?」
「そういうあなたは『ルゥ』の中の誰なのですか?」
「われは・・・フェンリル。『ルゥ』にはそう呼ばれている」
「そう・・・ワタシはニナ・ガランド・ヴァルキュリアス・マーティ・ヴァラサム。」
「長いな・・・われは眠るとしよう。・・・ね・む・る」
そこでそのままボクは前のめり倒れる。
「ああ、ちょっと」と、ニナはボクを抱きとめてくれた。
「・・・ただいま、ニナ」と、ボクはつぶやく。
「おかえり、『ルゥ』」と、ニナは目をつぶり、ただそのままボクを支えてくれた。
血の海の中、小鳥のさえずりを聞く。
怯えて丸くなっていたスコットもやっとボクを見て笑ってくれた。
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- おおちゃん
- 2011/10/07 13:49
- これでちょっと一安心っ^^
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