■近代文藝之研究|時評|今の文壇と…(6)
- カテゴリ:その他
- 2011/10/06 23:40:53
■近代文藝之研究|時評|今の文壇と新自然主義 (6)
吾人は假に之れを名づけて純粹なる自然主義と呼ばう。要するに寫實的なるものは、事象の結撰及び之れが表白に於いて常に現實らしくといふ一念を離れず、哲理的なるものは同じく常に箇中に理趣を深からしめんといふ一念を離れず、純自然的なるものは同じく微妙なる靈機合期の瞬間を捉らへんといふ一念を離れず、而かも此等みな客觀の事象に執して、事象の現實的なるを傷はざらんとする寫實的態度に於いては同一である、之れをすべて自然主義と呼ぶのは此の理に外ならぬ。
さて吾人が茲に特記せんとするのは此の第三種、純自然主義の説である。此の派にあつては、事象を結撰するの前、必ずしも現實らしくと意識せず、また必ずしも理趣深くと意識せず、此等の意識をばむしろ一種の邪念として斥ける、必竟私意の作爲が之れから生ぜんことを恐れるのである。然らば作家は何を心の標的として此の際に於ける自己の態度を定めんとするか。其の直接の答は消極的である。曰はくたゞ無思念と。私念を去るなり、我意を消すなり、能ふべくんば我れの發動的態度の一切を抑へて、全く湛然の水の如くならんと工風する。
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*註1:吾人は假に之れを
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:要するに
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
*註3:微妙
「微」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bi_kasuka.jpg
*註4:茲に
「茲」の俗字体(か?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg
*註5:此の理に外ならぬ。
原本ではこの読点で行末となっており、また本書では改行後の文頭に一字の空白を置く記述法となっていないため、ここで改行が行われているかは不確かだが、前後の文脈の流れから改行とした。
*註6:説である
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註7:結撰するの前
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註8:必竟
「畢竟」の当て字。
*註9:消極的・消す
「消」の旧字体。旁の「ナオガシラ」は「小」。
*註10:一切を抑へて
原本では「一切を抑へて」とあるが改めた。
*註11:全く
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
ほとんど古文じゃないですか@@ こぶんよりもいと難しく読解困難です
水の如くってお酒を想いだしちゃいますよね 上善水如っていうお水のように素直なお酒なのです
色気よりも食い気で・・・・ 自然主義ですので お腹がすくまま 食欲の赴くまま^^