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避難を遅らす「正常性バイアス」 その1

     今 私たちの国が 防災心理学で言う
    「正常性バイアス」に強くとらわれている


正常性バイアスとは「思い込みによって、頭が非常事態であるという認識に切り替わらない状態のこと」を指します
事態は正常であるというバイアス=偏見に捉えられ、事態を正しく認識できないことです
 
これは防災心理学では常識とされていること

現代人は 命が危機に晒されるような経験をほとんどしないため、
いざ危機に直面しても、それを危機だとは認識できないことが多い

例えば避難警報がいきなりなると「誤報」ではないのかと思ってしまうのが、
典型的な正常性バイアスです

そのため 正常性バイアスというロックを解除しないと
人は避難行動を開始できない
そのため災害を免れられないことがあります
 
正常性バイアスとともに、人の避難を阻んでしまう心理的壁として、
同調性バイアスというものがあることも防災心理学は指摘しています

同調性バイアスとは周りのあり方に同調してしまうこと
自分は危険だと思っても、周りが退避行動をとってないと、それに同調してしまい、自分も危険回避行動をとらなくなってしまうことです
 

具体的な例
1981年10月31日午後9時すぎ神奈川県平塚市で
防災無線から突然次のような市長メッセージが流されました
「市民の皆さん、私は市長の石川です 
先ほど内閣総理大臣から大規模地震の警戒宣言が発令されました
私の話を冷静に聞いて下さい」
実はこれはあってはならない誤報でした
市役所関係者は市民のパニックが起こってしまうと真っ青になったといいます
 
ところが、パニックはまったく起きませんでした!
当時、平塚市の人口は218,185人
警戒宣言を知ったのは全市民の20.1%の約42,000人でしたが
警戒宣言を信じたのはそのうちのたった3.9%(約1560人)
半信半疑が10.0%(約4,000人)
全く無視したか信じなかった人が約36,000人
実際にこれは誤報だった

 
正常性バイアスと同調性バイアスが同時に働いた例

2003年2月18日 韓国テグ市で起こった地下鉄火災
放火による火事でこのとき乗務員が
「小さな事故なので、少しの間お待ちください」
と放送したことに対し、多くの乗客は信じがたいことに、
車内に煙が充満し始めているのに、次の放送を待っていた
そうして逃げ遅れてしまった
 
このため196人が死亡し、174人が負傷して、
今なお後遺症に苦しんでいるそうですが、
このとき、車両内の死者は142人
つまり火災が発生しているにもかかわらず、
多くの人が逃げ出さないまま、車内で亡くなってしまった
他の人が逃げ出さないので、
危機を危機として認識できないままに悲劇が拡大してしまった
 
つづく




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