『精霊の世界、星の記憶』第12話「凍りゆく…」②
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/18 21:55:43
第二章 アプリコットの野 「凍りゆく花の野」②
星史の頭の中に、急にセフィロスの力のない声が小さく響いた。
星史はその声を聞こうと、ローズ・フローラとつないでいない方の右手を額にあてた。
「セイジ!!」
とシルビアとローズ・フローラが同時に言った。
「ぼくは、大丈夫。大丈夫だから、心配しないで。声が聞こえるんだ」
と星史はシルビアとローズ・フローラに言う。
そして、微かに頭の中に響く声を聞こうと精神を研ぎ澄ませていった。
「セイジ……」
――大丈夫、ちゃんと聞こえているよ、セフィロス。
「セイジ、セフィロダが完全に凍りついてしまう。妹のセフィロダは蝶や蜂、花たちの主、わたしが樹々たちや森の昆虫や動物たちの主のように。セフィロダはわたしよりも弱ってしまっている。わたしが融かせればいいのだが……」
――どうすればいいの?
「精霊たちは生き物たちの命、そして人の思いから生まれている。人の思いは精霊たちを殺し、そして誕生させたりもする」
――人の思いから?
「そうだ。強い闇の人の心に負けぬよう、セフィロダは自らをこのアプリコットの野に埋めたのだ。この大地を凍らせぬように。愛の花でいっぱいにしたいと……。すまない、セイジ……セフィロダはカトゥル・フイュが……あとはお願いする」
――セフィロス?……、そうか、力を使ってまた……。最後よく聞こえなかったけど……、大丈夫、たぶん……。たぶんじゃだめだ!「ケ・セラ・セラ」、何とかなる! 何とかしないといけない!
セフィロスとの会話が終わり気がつくと、心配そうにシルビアもローズ・フローラも、そしてフリージアも星史を見つめていた。
「ごめん、セフィロスの声が聞こえていたんだ」
と星史は穏やかに言った。
「セフィロス様が?」
とシルビアが聞くと、星史はうなづて、
「うん、妹のセフィロダさんが完全に凍りついてしまうと言ってた。セフィロダさんを融かしてほしいって、そうすればたぶん……」
と答えた。
すごい勢いで何か大声で叫びながら、こちらに飛んでくる精霊がいた。
冷気の中で舞う銀色の長い髪が、氷の粒にきらきら光っている。