Nicotto Town



『精霊の世界、星の記憶』第12話「凍りゆく…」②

第二章 アプリコットの野




「凍りゆく花の野」②



星史の頭の中に、急にセフィロスの力のない声が小さく響いた。

星史はその声を聞こうと、ローズ・フローラとつないでいない方の右手を額にあてた。

「セイジ!!」

とシルビアとローズ・フローラが同時に言った。

「ぼくは、大丈夫。大丈夫だから、心配しないで。声が聞こえるんだ」

と星史はシルビアとローズ・フローラに言う。

そして、微かに頭の中に響く声を聞こうと精神を研ぎ澄ませていった。

「セイジ……」

――大丈夫、ちゃんと聞こえているよ、セフィロス。

「セイジ、セフィロダが完全に凍りついてしまう。妹のセフィロダは蝶や蜂、花たちの主、わたしが樹々たちや森の昆虫や動物たちの主のように。セフィロダはわたしよりも弱ってしまっている。わたしが融かせればいいのだが……」

――どうすればいいの?

「精霊たちは生き物たちの命、そして人の思いから生まれている。人の思いは精霊たちを殺し、そして誕生させたりもする」

――人の思いから?

「そうだ。強い闇の人の心に負けぬよう、セフィロダは自らをこのアプリコットの野に埋めたのだ。この大地を凍らせぬように。愛の花でいっぱいにしたいと……。すまない、セイジ……セフィロダはカトゥル・フイュが……あとはお願いする」

――セフィロス?……、そうか、力を使ってまた……。最後よく聞こえなかったけど……、大丈夫、たぶん……。たぶんじゃだめだ!「ケ・セラ・セラ」、何とかなる! 何とかしないといけない!

セフィロスとの会話が終わり気がつくと、心配そうにシルビアもローズ・フローラも、そしてフリージアも星史を見つめていた。

「ごめん、セフィロスの声が聞こえていたんだ」

と星史は穏やかに言った。

「セフィロス様が?」

とシルビアが聞くと、星史はうなづて、

「うん、妹のセフィロダさんが完全に凍りついてしまうと言ってた。セフィロダさんを融かしてほしいって、そうすればたぶん……」

と答えた。

すごい勢いで何か大声で叫びながら、こちらに飛んでくる精霊がいた。

冷気の中で舞う銀色の長い髪が、氷の粒にきらきら光っている。


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