空を仰ぐ つづき
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/17 15:36:53
「やめぬか!」と、見知らぬ女性が大喝する。
スコットの動きはそれでも止まらず、剣の切っ先だけ移動させ、ボクの左肩を貫いた。
ボクは再び、左肩に傷を負った。
「それがお前の答えか。肝に銘じる」と、ボクはつぶやく。痛みは何故かあまりしない。
仮にも水の申し子…すでに治癒の力を使用しているのかもしれない。
「リルル…お前が信じてくれたようにボクもお前を信じる」と、スコットはボクから目線をそらさない。
そこに紫の衣装に身を包んだ見知らぬ女性が歩みよってきて、いきなりスコットを平手打ちする。そのすぐ後、ボクの方にやってきて、ボクも平手打ちを喰らった。
「姉さん」
「アマテラス様…。」
と、スコットと、ニナのつぶやく声を聞く。
「あんたが…主か。」と、ボクはつぶやく。
「わらわはアマテラス。フィルハーモニー家の第一王女にして、今は反乱軍のリーダー。してそなたは?」
「ボクはルゥであり、リルル・ガランド。リルルでいい。場を乱し、失礼した。だがボクには必要なことだった。それもわかってほしい」と、ボクはスコットと同じ、黒い目をした女性、アマテラスを見つめた。
「こちらこそ、失礼を許してもらいたい。兄が城下町フィルで生き残っている。確証は無い。私の千里眼が、そう告げているだけだ。それでも見に行って欲しい。千里眼が確かなら酒場の奥に兄はいる。『青い鳥』それが合言葉だ。それが通じる者がいるはずだ。兄が生きているなら」と、アマテラスは語る。
「あなたの千里眼は…信じよう。肩の傷がウソのように治っていく。これもあなたの力だろう?弟、スコットの力かと、最初は思ったが…精霊の力をあなたから感じる」と、ボクは答える。
「では行ってくれるのか?しかし、勝算はあるのか?あそこは黒騎士たちの巣窟…とても生きて帰れるとは思えぬ」
「フィルハーモニー家には「聖水」があると聞く。それをマントにでも…沁みこませればそれだけで、黒騎士の目を逃れることができる。逃げる時…そうやって逃げてきたのではないのか?」
「!!なんと!!「聖水」をかぶれ…兄の言葉の意味をそなたから聞かされることになろうとは…」
「…書物をよく読んだからね。ボクは。ハルモニアから逃げてこれたのも…ヨシュアのおかげだ。ボクの力じゃない。ボクはボクで無くなったけど…ヨシュアを助けるためだ」
「…ヨシュアとは皇帝ヴァルモンド。皇帝にはまだ人の心が残っているのか?」
「ボクが生きているのが、その証拠だ!ヨシュアはボクの友人なのだから…いや、大きい声を出してすまない」
「いや、こちらこそ悪かった。では…ニナと、弟、スコットを頼む。三人分のマントを用意しよう。みごと兄を探してきてくれ」と、アマテラスは後ろを振り向き、去っていく。