『精霊の世界、星の記憶』第12話「凍りゆく…」①
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/15 21:52:01
第二章 アプリコットの野
「凍りゆく花の野」①
微かに切れて傷ついた頬をなでながら、星史は辺りを見回した。
強く冷たい風は、だんだんとアプリコットの野を凍りつかせていった。
それは足元からの冷気で、だんだんと足元から精霊たちを凍らせていく。
精霊たちは寒さに震えながら、顔をこわばらせていた。
一緒に踊っていたローズ・フローラの手も冷たくなって力がなくなっていった。
星史は温めるつもりで、ローズ・フローラの手を強く握りしめる。
あまりの寒さに星史も震えていたが、隣のシルビアは薄着なのにそうではなさそうだった。
「シルビア、シルビアは大丈夫?」
と星史は聞いた。
「ええ、わたしは何とか大丈夫。寒さに強い樹々たちの精霊だから。でも、アプリコットの花の精霊たちは……。」
と言葉を途切れさせたシルビアが見る視線の方をたどると、もう何人かの精霊たちは足元から凍りつき完全に氷の彫像と化していた。
あまりの恐怖に声も出せず顔をこわばらせたまま次々と凍っていき、氷り漬けになっていく。
「セイジ」
と言い、シルビアは星史を抱きかかえるように星史の背後から腕を絡ませた。
つないでいたローズ・フローラの手が急に力強く握り返してきた。
「ローズ・フローラさん」
と思わず星史が言うと、
「大丈夫よ。セイジの手が温かいから」
とローズ・フローラは目に力が入ったように力強い瞳で花園、花の野を見つめながら答えた。
シルビアと踊っていたフリージアが、
「わたしたちも凍っていくの? 花たちと一緒に……」
と不安そうな悲しそうな表情をした。
「大丈夫よ、マリ=フリージア。冷たいこの風に乗ったら、その瞬間みんな凍りついてしまうけど、今この野にはシルクがいるわ」
とやさしく穏やかに微笑みながら、シルビアはフリージアの方を見ながら言った。
「セリア・エル=シルク(シルク皇女)が?」
「そう。シルクに風を吹いてもらうわ。それに乗って、とりあえずここを離れるの」
「他のみんなは?」
と凍っていった仲間たちを見ながらフリージアが言うと、シルビアの表情が悲しそうに曇った。
「今は風に乗れる者だけでも……」
「そうよ。セリア=シルビアの言うとおりよ、マリ=フリージア」
とローズ・フローラが言う。そしてさらに、
「マリ=フリージア、わたしたちまで凍ってしまったら、どうにもならないわ。とりあえず避難して、それから考えましょう。みんなを助ける方法を、この野を元通りにする方法を」
と付け加えた。
「はい、ティア=ローズ・フローラ」
とフリージアは素直に答えた。
とても嬉しいコメント、どうもありがとうございます♪(=⌒▽⌒=)
この花の野には、花の主がいらっしゃいます。
精霊たちの役割と人間との関係が、この先わかるかもしれません(*^o^*)
凍りつく花の野を暖かく溶かす鍵は星史なのでしょうか?