■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に…(12)
- カテゴリ:その他
- 2011/08/21 22:06:49
■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に詣づるの記 五(1)
五
大通りに沿うて、シヱークスピーア[#「ヱ」は小文字]が專ら羅典の知識を得たといふグラムマー、スクールの前からホーリー、ツリニチーの寺地《じち》まで、殆ど此の土地を縱斷しても、三十分とはかゝらぬ。
町の周圍に散在する、菅笠《すげがさ》を伏せたやうな丘《をか》、其の間に廣がる牧場《まきば》、畠。立木《たちき》は楡《にれ》柏《かしは》、山毛欅《ぶな》、水松《いちゐ》の類が多からう。總じて緑《みどり》の廣い縁《ふち》をつけたやうな瀟洒たる小都會、その東南を限つて流れるのが、可憐《かれん》なエヴン川である。
春であつたからでもあらうが、打ち見た所、町の雅趣あるに對して、四圍の色調《しきてう》は青いといふよりも緑《みどり》である。いかにも若々《わか/\》として、新鮮の氣は森に漲つてゐる。
--------------------
*註1:大通り
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註2:沿う
「沿」の旧字体。「サンズイ」+「几」+「口」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/en_sou.jpg
*註3:前から
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註4:寺地《じち》
原本のルビは「ぢち」とあるが「じち」に改めた。
*註5:三十分
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg
*註6:周圍
「周」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syuu_mawari.jpg
*註7:山毛欅《ぶな》
原本のルビは「ふな」とあるが「ぶな」に改めた。
*註8:水松《いちゐ》
「松」の旧字体。「木」+「八」+「ム」。
*註9:緑《みどり》
「緑」の旧字体。旁が「碌」の旁と同じ。
*註10:縁《ふち》
「縁」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/en.jpg
*註11:瀟洒たる
「瀟」の正字体。旁の「クサカンムリ」が「十」+「十」。
*註12:小都會
「都」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/to_miyako.jpg
*註13:打ち見た所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註14:色調《しきてう》
「調」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/cyou_shiraberu.jpg
原本のルビは「しきちやう」とあるが「しきてう」に改めた。
*註15:青い
「青」の正字体。「月」は「円」。
*註16:緑《みどり》
「緑」の旧字体。旁が「碌」の旁と同じ。
--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

-
- 銀の堕天使@ゆう
- 2011/08/21 22:14
- かめはめはの氣欲しい
-
- 違反申告