融解。―パラレル―
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/16 18:42:16
#-0
少女は言った。
「―――排除します」
短い黒のポニーテールが揺れる。
血を垂らしたような紅い制服のスカートが翻った。
風になびく空色のネクタイリボン、真っ白な半袖セーラー服の襟元に飾られた、漆黒のバッジが何か異質だった。
振り上げられる白銀の輝きを放つ二振りのライトセイバー。
少女は舞っていた。
20階立てのビルよりも高い蒼い宙(そら)を。
甲高い魔獣の断末魔が響き渡った。
飛び散る真っ赤な液体の中、華麗に着地する少女。
すると割り込む、もう一人の少女の、
「あれー?終わっちゃったのー?」
間延びしたやる気のない声。
「…“02―ゼロニイ―”…何してたの…?」
咎めるような一人目の少女の声。
もう一人の少女の額で真ん中分けにした長い前髪と肩の少ししたまで伸びる後ろ髪が血の匂いを帯びた風に揺れる。
「ん?…寝てた」
なんの悪気もなく答えるもう一人の少女――“02”。
「…」
最早呆れすぎて答えることさえ出来なかったのだろう、一人目の少女は黙って02という少女を睨みつけていた。
人形のような無機質な顔立ちで、言動もどこか人間味が欠けていた。
「ま、倒したんだしいいじゃん。【本部】戻ろ」
だが一人目の少女はゆるゆると左右に首を振った。
毛先から滴る血。
「えー…何で?てか怪我してんじゃん“01―ゼロイチ―”」
―――そう、彼女達に名前は無い。
便宜上呼び分けるためにつけられた名は、左頬に刻まれた“数字”だ―――
「任務中。大丈夫、返り血」
「でも終わったじゃん。あぁ、なら良かった」
ああ言えばこう言う。
不毛な言葉のキャッチボールに飽きたのか01は口を噤んでしまった。
軽く肩を竦め、02は自身の首の後ろを指差しながらこう言った。
「ねぇ、“プラグ”抜いてくれる?」
彼女たち二人の首の後ろには、何かおかしなものがささっていた。
黒くて10センチほどの細長い、まるでパソコンのメモリースティックのようなモノが。
「…本部とまだ繋がってる。抜いたら壊れる」
「えーーー…」
瞳孔で真紅の点滅を繰り返す機械的な瞳を01が静かに見据え冷静に言った。
「…それにまだ任務中。倒してないのが残ってる」
「えーーーーー!?」
01が目に入りそうになった返り血を拭きながらそう言うと、すかさず抗議の声を上げる02。
直後――、再び魔獣の咆哮が轟いた。
思わず耳を塞ぎ縮こまりたくなるような歪んだ鳴き声に、02はびくりと肩を震わせた。
01は平然と咆哮のした方角を見つめていたが。
「行くよ、02」
「へいへい」
鳴き声に近づくにつれ、だんだんと増す緊張感。
しかし未だ見えない標的に苛立ちさえ覚える。
高層ビルたちの間を二人の少女が恐ろしい速さで駆け抜けてゆく。
微かにそのビルの間から顔を出す水色の空に浮かぶ太陽が、やけに遠く見えた。
霞むような動きと速さで、彼女達の駆け抜けた数秒後に巻き上がるソニックブームが固いアスファルトに傷をつける。
――と、
「―――ッ…!?」
01の身体が、ふわりと何かに持ち上げられた。
とてつもなく太くて黒っぽい緑の、鱗がてらてらと輝く何かに。
だが浮いた、と感じたのはほんの一瞬だった。
気づいたら物凄い勢いで背中からアスファルトに叩きつけられていた。
凄まじい衝撃で息が詰まり、一瞬意識が飛びそうになる。
「ちょっ」
流石に慌てる02。
唐突に辺りに影が落ちた。
再び襲い掛かる01を攫ったそれを跳んで避けると、アスファルトを蹴り一気に跳躍した。
標的の全貌がハッキリと視界に捕えられた。
ライオンの頭に山羊の胴体と蛇の尻尾を持った巨大な、歪んで歪なその姿。
キマイラ。
「めんど…」
ぽつりと零れた台詞が、キマイラのおぞましい鳴き声に掻き消された。
鼓膜が破れそうだ。
顔をしかめながらキマイラの背に右足で着地し、宙返りしながらひらりと地上に舞い戻る。
馬鹿みたいに辺りを見回し吠え立てるキマイラの注意が逸れている隙に、01に駆け寄った。
「01、起きてる?」
適当な台詞に聴こえるが、本人は十分本気だ。
「…ッ、大丈、夫…」
背骨が悲鳴を上げていたが、なんとか02に抱き起こしてもらい弱弱しく微笑んだ。
だがしばらくは接続が不安定で立てそうに無い。
「…休んでて、」
言われなくてもそうするつもりだったが、大人しく頷いた。
駆け去る02の背中を見送っていると、自分でもよく解らないものがこみ上げてくるのだった。
字数制限とか馬路ウザイと思います。←
3話分まで完成してるので三日に渡り公開していきます。
実はサークルはこの小説が原作となって出来上がったものです。
是非感想いただけると嬉しい限りです。
面白い小説なのです(`・ω・´)+゜
続き、待ってます。
続き楽しみにしてるね^^
シキロさん、待ってました小説!!
01さんが私は大好きです←
続き待ってます!!
超クオリティ高いww
何か本気で褒め言葉しか湧かない。
こういう系の小説私好きだし、
続きも読みたいと思いますb