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盗月Blog——島村抱月TextData——


■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に…(4)

■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に詣づるの記 一(4) - 二(1)

と獨り思ひに耽つた旅人《たびゞと》は、翌朝オックスフォードの町を越して、重ねて南へ/\と旅《たび》を續けた。
我れには此の弱《わか》き旅客の名がウヰリアム[#「ヰ」は小文字]、シヱークスピーア[#「ヱ」は小文字]であつたらしく思はれる。

      二

山の懷《ふところ》水の畔《ほとり》と、地上の住ゐは廣いが、こゝ英國のロンドンから西北《せいほく》へ百マイル許り、エヴン川の岸のさゞ波に夜毎の夢を洗はする、スツラッフォードの片隅《かたすみ》に、方《はう》五間には足るまじき一地を劃してそこを長《とこ》しへに世界の眼目とし、そこに不滅の靈火を點じた、造化の寵兒シヱークスピーア[#「ヱ」は小文字]が家は、まことに人の世の譽れかな。大英國は縱《よ》し亡びても、シヱークスピーア[#「ヱ」は小文字]は亡びぬ。此の一|地域《ちゐき》ありしが爲に永劫《えいごふ》不壞《ふゑ》なる英國も亦た幸ひではないか。



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*註1:翌朝
「翌」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/yoku.jpg

*註2:オックスフォード
この『沙翁の墓に詣づるの記』冒頭では「オツクスフオード」と促音便の「ッ」や合拗音の「ォ」は小文字表記されていなかったが、これより以降は小文字表記となっている。誤植・校正ミスとも思える不統一だが、原本のままとする。

*註3:弱《わか》き
「弱」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/jyaku_yowai.jpg

*註4:水の畔《ほとり》
「畔」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han_aze.jpg

*註5:スツラッフォード
ストラトフォード・アポン・エイヴォン(Stratford-upon-Avon)のこと。イングランド中部のウォリックシャーにある町。
[参照HP]⇒http://www.stratford-upon-avon.co.uk/static_1166.htm

*註6:造化
「造」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註7:永劫《えいごふ》
原本のルビは「えうがう」とあるが「えいごふ」に改めた。

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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2011/08/14 07:13
おお朝から難しい




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