「もぅ、子供の名前・・・決めたの ? 」
「いゃー、それがまだで・・・・」
「何やってんのょ、それでもあなたはお父さんなの ? しっかりしてちょうだい」
私は妊娠十ヵ月の妻を持つとある文芸編集者である。
とある女性人気作家の担当になり、
今日こそは必ず原稿を頂こうとガッツを出して自宅に伺って、
部屋のソファーに腰をかけた途端そんな話になった。
とある女性人気作家は話を続けた。
「アタシが名前をつけてあげる」
「いゃ大丈夫です、自分でつけられますから」
「なに、アタシがつけた名前じゃ不服だとでも言うの ? 。
あなたね、アタシがこの仕事何年やっていると思っているの ? 。
言葉のプロょ、スーパープロフェッショナルなのょその申し出を断るつもり ? 。
あなた、それでも編集者 ? 」
「なにもそんな事言ってませんょ、まいったなーもぅなんでこうなっちゃうの ? 」
「イャなの ? 」
「は、はい嫌ではありません、どうぞ先生のお知恵を拝借させていただきます」
「そぅよ、それでいいのょ、観念しなさい。
アタシが子供の名前をつけてあげる、・・・まず亀ね」
「は ? 」
「カメょ」
「カメって、あの亀ですか ? 」
「そぅょ、カメょ、亀頭の亀、ガメラの亀」
「何ですかぁぁ～、ノロマそうじゃないですか」
「堅そうそうじゃないの、亀。
それに今カメは流行っているのょ、長生きするわょ」
「そりゃぁまあそうですが・・・・」
「それから仁ね、仁義の仁。
仁と言うか、仁義ってカッコイイじゃない」
「先生・・任侠ものとかヤクザ映画好きですからね～～」
「最近、ハマっているのよ漫画を読んで」
「仁義ですか・・? 、チョット文字のフィーリングが合いそうにないですょ。
それに、子供は女の子なんですから・・女の子の名前お願いします」
「何 ? 、女の子がイイの・・んじゃ・・・あれょ、アレにしなさい。
リリー、限りなく透明に近い・・・のリリーょ」
「はぁ、リリーですか、少しカッコよくなってきましたね」
「そうでしょ、リリーってカッコイイでしょ」
「は、はぃ」
「メモ取っておきなさいょ」
「は、はぃ亀頭の亀・ガメラの亀・仁義の仁・限れなく透明に近い・・リリーっと」
「そぅょ」
「でもりりーだと、ジャンキーになりそうじゃないですか ? 」
「って言うか、どんな女の子になって欲しいのょ ? 」
「・・・・そぅ言われましても」
「結婚は早い方がイイの ? 遅い方がイイの ?」
「どちらかと言うと・・長く一緒にいたいので、遅い方で」
「じゃ・・ノリコね、遅いのはノリコねメモとった」
「遅いのがノリコっと」
「早いのがチエね、リカはわがまま」
「先生・・何を根拠に言ってるんですか ? 」
「チエはアタシの妹だからょ、あ、そぅだブリトニーって言うのもいいね。
セクシーになるし」
「ん、何となくプロレスラーみたいじゃないですか。
もっと普通のにしてくださいょ」
「じゃートンボっていうのはどう、空を飛べるし」
「先生・・お願いしますょ、まじめに考えてくださいょ」
「じゃ、今までの全部読んで見て」
「え? はい、亀頭の亀にガメラの亀に仁義の仁に限りなく透明に近い・・リリーに、
遅いノリコに速いチエとわがままなリカとセクシーなブリトニーとトンボ」
「それを全部つけた名前にしなさい」
「そんなぁー」
「じゃないと原稿書かないわょ」
「そそ、・・・・・・・そんなぁ」