花
- カテゴリ：小説/詩
- 2011/07/12 13:14:54
「・・・」
音が、耳に入った
何気ない、いつもと変わらない日常の中にそっと溶けるように
静かに...かすかに...それなのに確かに聞こえた
『まぁだだよ』
そういう声を... 確かに感じた
遠い昔に忘れてきてしまった気持ちが
もう戻れない日々に置いてきてしまった気持ちが
もう取り戻す事の出来ない大切なものが
忘れたいと願っていた気持ちが
もう忘れてしまいたいと願っていた気持ちが...
時間と共に
心と共に
停めてきた想いが
冷たく深く心に沈めてきたあの頃の思い出が
静かにゆっくりと動き出す
自分の意思とは無関係に
ただ...ゆっくりと
止まっていた時を取り戻すように動き出す
涙が、溢れた
自分が泣いている事にも気付かず
ただただ涙が溢れた
懐かしさと
切なさと
あたたかな何かに心が包まれるのを感じて...
「もういいかい？」
そうつぶやく僕に
あの頃と何も変わらない笑顔を浮かべながら
「もういいよ」
そう答えるあいつの声が
振り返ればあの頃のようにまたあいつに会えるような気がして
失った時間を取り戻す事は出来ない
無くしてしまった大切なものはもう二度と戻らないと解っているのに
忘れる事も失う事も出来ずにいる僕に
もうあいつは居ないっていうのに
もうどんなに願っても会えないっていうのに...
一体どうしろって言うんだ...僕はどうしたらいいんだ...
立ち尽くし涙を流しながらそんな事を考える僕に
『もぅ！もういいよって言ってるでしょう！』
そんな...声が返ってきた
あの頃と何も変わらない調子で
あの頃のままの声が...
この世に奇跡なんてないのかも知れない
けれど
あの夏、あいつは確かに戻ってきた
あの夏のあの瞬間は夢や幻なんかじゃない
限られた時間、ほんの少しの時間だったけれど
あいつとの大切な...大切な....
また“夏”が始まる...
それも最終回、終盤を少しだけ、かもしれんけど
耳に入る曲と話の内容で心に残るものやったんで何となく書いてみた
原作がどういう話かさっぱり分からず上ので原作のいい所壊してる恐れもあるけど
その時、その触れた部分から生まれた“モノ”という事で何となく