Nicotto Town



雨上がる

カフェから雨をぼんやり見ていた

温度差のためか、やや曇ったガラス越しに

重力に惹かれた水滴が地表を濡らしていた

落ち行く雫が描く、一条のラインはとても美しく見えた

やがて雫は地表に到達し、えもいわれぬ音を奏で消えてゆく

その光景は少し悲しく思えた

この雨が僕の過去を洗い流してくれるのだろうか?

そんな気がしていた




「ありがとうございました~」

そんな気分だったからだろうか

少し雨に打たれてみようと思った

店を後にして、傘を開く

歩道にでると、すぐに雨粒がリズム良く傘を叩いた

そのまま、少し歩くことにした

人波に逆らうように…

遥か遠くに、目を引く花柄の赤い傘が見えた

その傘は、引き寄せられるように近づいてきて

僕の傘に、触れた

不意に交わる視線 その先には

心の渇きが見せた幻影?

目の前にいるのは誰?

見間違うはずはない

確かに彼女だった

胸に、本を抱えたまま

彼女は、小さく会釈をすると

そのまま立ち去ってしまった

僕の方は、立ち尽くしたまま

視線だけは、彼女を追っていた

駅へとたどり着いた彼女は

ゲートの手前で、一瞬こちらを振り返ると

少し泣きそうな顔をして、寂しげに笑うと

傘をたたんで、消えてしまった




次の日も雨だった

僕はまた、傘を差して街に立っていた

追い求めているのは幻影?

それとも過去?

花柄の赤い傘を見つけるたびに

少し覗き込んだ

茶色のショートカットを見つけて

どうしようというのだろう?

自分でも、良くわからなかった

やがて花柄の傘どころか

全ての傘に関心をなくした

眠るように目を閉じ

それでも立ち尽くす

誰かの傘がぶつかることもなく

ただ、傘に当たる雨音だけに

集中していくと

やがて、辺り全ての音が消えていった



どれぐらい経ったのだろう

傘に大きな振動が伝わって我へと帰った

トントン 一定のリズムが傘を通して伝わる

なんだろうか?

トントン

尚もリズムは続いた

ゆっくりと振り返ると開いた傘で、僕の傘をツンツン叩いている女性がいた

(あっカフェの?)

女性は、はっきりした声で言った

「あの~雨上がってますよ?」

気が付けば、いつの間にか雨は上がっていたようだ

傘を閉じ空を見上げると

ビルの谷間には七色の橋が掛かっていた

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2011/07/02 14:09
男の人って、いつまでこうやって引きずるの?
雨上がってるのに。
虹もかかってるのに。
はっきりした声をかけた女性がいなかったら・・・気付かないよね?
(雨でなくて、恋愛という意味でね。)

・・・・・・おいっっ!!! って声かけたいわw 



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