■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳(36)
- カテゴリ:その他
- 2011/06/27 22:04:48
■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳 (五)(6)
之れに對して、少なくとも斯くの如き哲學を生ずべき原因は彼れが性向の中に存してゐると見て、而して此れに論を止めて、必ずしも之れを哲學化し普遍化することを敢てしない觀方が第四の説である。此の説に從へば、人生が果たして一般に厭世的であるか否かは知らぬが、少なくともイブセンといふ個人に取つては、人生は斯かるものである、斯かるものとより外は見ることが出來ぬ。即ち彼れの本自内に悲觀の理由が存してゐるのである。而してブランデズ氏は其の「第二印象」に於いてイブセンが氏に寄せたる手簡中の語「朋友といふものは費用のかゝる贅澤品だ。人生の天職に對して資本をおろさうとするには、到底朋友を持つことは出來ないものだ」といふ語を引いて、イブセンが性の個人的なる〓[#「こと」合略仮名]及び其の精神の寂寞といふことを證し、之れから悲觀的の思想は生ずるとしてゐる。ハーフォード氏が「寂寞の力」を以てイブセンの作の命根とするのも同じ見解であらう。
次にはブランデズ氏が「第二印象」に於いて、現代の人心を支配する諸問題四條を數へ上げた項を抄せんに、
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*註1:之れに對して、
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:普遍化
「遍」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註3:第四の説・此の説
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註4:本自内
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。
*註5:資本
「資」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi.jpg
*註6:個人的なる〓[#「こと」合略仮名]
「〓」は「こと」合略仮名。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gouryaku_koto.jpg
*註7:精神
「精」の正字体。旁の「青」の「月」は「円」。
「神」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。
*註8:次には
「次」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ji_tsugi.jpg
*註9:諸問題
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
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