■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳(26)
- カテゴリ:その他
- 2011/06/13 21:31:14
■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳 (四)(1)
イブセンの生活は此の頃までも尚甚だ窮乏勝ちであつたといふ。然るに此の年を以て諾威國會は彼れに六百弗許りづゝの「詩人手當」を給する事を議決し、其の他著書の版權料等も増して始めて生計上全く自由の人となつた。
其の他彼れの身世に關しては其の千八百七十一年『青年結社』を作つた頃は恰も普佛戰爭の際で、自然彼れは現實社會の諸問題に多くの興味を有したと稱せられる。其の所謂社會劇即ち社會問題を中心とした作は、恐らく此の興味の結果であらう。勿論前期の作『戀の喜劇』が既に同じ傾向をば現はしてゐれど『青年結社』など以後に此の方面が一層顯著となつたと言つてよい。またイブセンは當時の思想界に重きをなす程の諸作物は自己にヒントを得る範圍ぐらゐには讀んでゐたといふ。ブランデズ氏が傳へたダーウヰン[#「ヰ」は小文字]。スチュアート、ミル。アウギュスト、コント。テーヌなどは皆イブセンにもブョルンソンにも影響を與へたと察せられる。イブセンは獨乙語に熟通し、佛伊も一通りは解したれど英語は知らなかつたといふ。
--------------------
*註1:イブセンの生活
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:尚甚だ
「尚」の旧字体。「ナオガシラ」は「小」。
*註3:窮乏勝ち
「勝」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/katsu.jpg
*註4:著書・顯著
「著」の正字体。(↓見本文字のクサカンムリが「十」+「十」なのが正字)
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tyo_arawasu.jpg
*註5:増して
「増」の旧字体。旁の「曽」が「曾」。
*註6:全く
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg
*註7:青年結社・社會
「青」の正字体。「月」は「円」。
「社」の旧字体。扁の「ネ」は「示」。
*註8:諸問題
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg
*註9:所謂
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註10:前期
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註11:既に
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg
*註12:一層
「層」の旧字体。「曽」が「曾」。
*註13:重きをなす程の
「程」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hodo_tei.jpg
*註14:諸作物
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg
*註15:影響
「響」の旧字体、もしくは正字体だが原本画像不鮮明で確定できず。
旧字体は、
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_hibiku.jpg
正字体は、
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_seiji.jpg
*註16:熟通・一通り
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
今日ゲリラ豪雨で凄かったよ天気良いのに晴天で大雨
初めてみた