■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳(21)
- カテゴリ:その他
- 2011/06/06 22:41:41
■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳 (三)(11)
グンナーも強いられて斷然其のヒヨールヂスを得し次第を白状す。ヒヨールヂスは驚き且つ失望せしが再び悍然として復讐を決意し、我れ死するか、我が愛を賣りしジグールドを斃すか二者一ならざるべからずと叫ぶ。而も尚ほ彼の女はジグールドに逢ひ、今一度己れと奔りて王位を得んと計らずやと説く。ジグールド心動かんとせしが遂に誘惑より逃る。今は是れまでなり殺して我が望を達せんと、ジグールドを射殺す。死に望みジグールドは、己れが既に基督教の新宗教に歸依し居るものなれば、死後といへどもヒヨールヂスとは行く所を異にする由を告ぐ。ヒヨールヂス絶望のあまり深淵に投じて死し、異教の天國ヴァルハラに昇る。盖しワグナーが『ニーベルゲン、リング』に使用せし傳説と相通ずるものなり。
[#ここで字下げ終わり]
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*註1:グンナーも強いられ
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
「強」の俗字。旁が「口」+「虫」。
*註2:次第
「次」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ji_tsugi.jpg
*註3:白状
「状」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/jyou.jpg
*註4:失望・我が望
「望」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bou.jpg
*註5:二者一
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註6:尚ほ
「尚」の旧字体。「ナオガシラ」は「小」。
*註7:逢ひ
「逢」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註8:説く
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註9:遂に
「遂」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sui.jpg
*註10:逃る
「逃」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註11:達せん
「達」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註12:既に
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg
*註13:基督教
「教」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_oshieru.jpg
*註14:行く所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註15:絶望
「絶」の正字体。旁の「色」が「刀」+「巴」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zetsu.jpg
「望」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bou.jpg
*註16:『ニーベルゲン、リング』
『ニーベルングの指環』(または『ニーベルンゲンの指環』、ドイツ語: Der Ring des Nibelungen)のこと。リヒャルト・ワーグナーが26年の歳月をかけて書いた上演約15時間を要する長大な楽劇のこと。
「相通ずる」傳説、というのは北欧神話の英雄であるシグルズの物語のことで、これがドイツの英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』ではジークフリートとして描かれている。
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
眠いね今日は。暑すぎて^^