■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳(18)
- カテゴリ:その他
- 2011/06/04 22:06:02
■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳 (三)(8)
獨乙人の所謂ブロートナイト即ち商賣讐の嫉妬非常に強く、上中下層を通じて競爭者と見れば打ち倒さんとするの慾心盛んなり。勿論淺薄なる教育はあり、また例外の少數家に立派なる人々も無しとは言はねど、大學仲間以外に出づれば精神思想方面の興味は索然として缺乏し、大學内にすら商賣的精神は瀰蔓して、到底我等が倫敦、巴里、羅馬等にて味ひ得る如き、精神上の興味ある歡待、乃至思想美に對する寛宏自由の熱心等、大都市に於ける生活を快くするものは一もあることなし。勿論何所に行くも偏狭固陋の徒は無きに非ざれど、此等の大都市にありては欲するまゝに之れを超脱して思想の軟風爽かに大氣をゆするあたり、高尚なる悦樂の境に入り、男女は商工俗務の爭鬪に累せられざる邊に相逍遥するを得べし。
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*註1:獨乙人の
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
なお、この段は前ページにつづき、「ゴッス(=エドマンド・ウィリアム・ゴス)」の文章からの引用部分のため1字下げとなっている。
*註2:所謂・何所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註3:商賣讐
「讐」の字部分の印字状態が悪く判読できかねるため、仮に「讐」の字を当てた。訓みは「しょうばいがたき」と推測したものの、まちがいである可能性もあるので下記 URL の原本部分を確認の上、注意されたい。なお、「ブロートナイト」の意味・謂われについても不勉強のため、よくわからない。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/cf_syoubai_x.jpg
*註4:強く
「強」の俗字。旁が「口」+「虫」。
*註5:上中下層
「層」の旧字体。「曽」が「曾」。
*註6:通じて
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註7:競爭者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註8:淺薄
「薄」の旧字体。「クサカンムリ」+「サンズイ」+「甫」+「寸」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/haku_usui.jpg
*註9:精神
「精」の正字体。旁の「青」の「月」は「円」。
「神」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。
*註10:大學内
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。
*註11:熱心
「熱」の俗字体(か?)。「執」+「レンガ(レッカ)」。下記 URL の文字は作字したもの。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sakuji_netsu.jpg
*註12:大都市
「都」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/to_miyako.jpg
*註13:超脱
「脱」の旧字体。旁が「兌」。
*註14:高尚なる
「尚」の旧字体。「ナオガシラ」は「小」。
*註15:悦樂
「悦」の旧字体。「リッシンベン」+「兌」。
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
きぐるみ着てるけどね