初夢の続きは (14)
- カテゴリ:自作小説
- 2011/06/04 17:54:14
神社の森は静寂に包まれていた。
大きく傾いた太陽の描く木漏れ日は
建ち並んだ遠くの鳥居にまで降り注いでいた。
それはまるで無数の輝く天使の糸のように、白く絡み付く。
その光景はとても美しくて、
美し過ぎて、なんだか少し怖い感じだった。
初夢の続きは (14) 「my wish」
その時の松梨はいつもと少し違っていた。
なにがどう違っているかと言われると窮してしまうのだが
とにかく心のどこかに違和感が引っかかっていた。
お互い視線を合わせたまま、どれだけそうしていただろうか?
時間感覚を、沈黙が狂わせるのか
ひどく長い時間、そうしているように感じた。
沈黙を破ったのは、意外にも梅子だった。
「じゃあ、次は私行って来る!」
そういい残すと、トコトコと歩いていってしまった。
(梅子にも何か願いがあるんだったな)
しばらく背中を見つめていると、松梨が隣へと腰掛けた。
けれどお互い何を話すでもなく無言、そして無音。
彼女の長い髪が、時折風になびきサラサラと乾いた音を奏でるだけだった。
二人無言で空を眺める。
どれだけの時間そうしていただろうか?
じっと空を眺めていた松梨が突然立ち上がり、こちらへと向き直った。
そして、いきなり何かを歌い始めた。
美しい歌声、でもなんだか怖い。
ちょっと何かの拍子で触ってしまったら崩れてしまいそうで、
悲しさを内包した、ひどく儚いものにも思えた。
メロディも歌詞もわからないまま、松梨の歌にしばらく聴き入る。
なんだかわからないのに、
心の奥を鷲づかみにして、ぐんぐんと揺らされているような感覚。
気がつけば、涙がこぼれていた。
何故だかわからないけど自然と泣いていた。
けれど、それを松梨に気付かれないように拭った。
やがて歌声は止み、気がつけば拍手している自分がいた。
「松梨ちゃん、すごいんだね!」
賞賛するような声を掛けると、松梨は少し照れるように、はにかんだ。
「なんていう歌?」
素朴な疑問を口にした。
松梨は、少し考える素振りをしたあと答えた。
「…Das Lied der Trennung」
まるで聞いたことの無い言葉に頭の中が真っ白になった。
松梨はその様子をおかしげに眺めたあと、真顔に戻り二の句を告げた。
「モーツァルトの『別離の歌』よ」
彼女の言ってることは、全体的に良くわからなかった。
そしてベツリ…。訊いたことのない響きの言葉に少し混乱した。
けれど、さっきまでの歌と松梨の雰囲気からなんとなく理解した。
それは、すごく寂しいことなのだと。
「ベツリって何?」
恐る恐る訊いてみた。
松梨はそれに答えようとはせず、小さな指輪を僕の手のひらの上に乗せた。
「何これ?」
「再会のおまじない」
「ん???」
「16歳になったら、結婚できるようになったら絶対に戻ってくるから」
「???」
「約束だよ」
「う、うん」
真剣な眼差しの松梨の迫力に押し切られ
なんだかわからないままだったが、手の上の指輪をぎゅっと握った。
「約束」この言葉には強い何かを感じていた。
そう、決して忘れてはいけない何かを…。
しばらくすると梅子がお願いを終えて帰ってきた。
「悟君も、お願いする?」
と梅子に言われたが、お願いなど考えてもいなかったし
何より先ほどの松梨の行動が気になってそれどころではなかった。
「僕は、いいよ」
と、出来るだけにこやかに言った。
日は西に傾き始め、神社は静寂に包まれた。
3人揃って石段に座り、夕焼けに染まり始めた街を眺めていると
松梨が突然立ち上がった。
「お2人にお話があります」
ちょっと怖いくらいの語気だった。
いつもの、饒舌で、強引で、わがままで、それでいて誰よりも仲間想いで…
そんな松梨は、どこへ行ってしまったのだろうか?
一言も発せず、僕らを見つめ返すばかりだった。
不意にまた、泣きたいような気持ちに襲われた。
だが、どうしても涙は出てはこなかった。
泣いていたのは梅子だ。
松梨の異変を敏感に感じ取っていたのだろう。
「私、明日から違う町に引っ越します」
「え?」
僕と梅子は同時に声を上げた。
「だから三人組は今日で解散します!」
突然の事で、上手く頭が回らなかった。
それは梅子も同様のようで、口をポカーンと空けたままになっていた。
けれど、直ぐに理解したようでまたわんわんと泣き始めた。
「どこ行っちゃうの?嫌だよ!いやだよー」
「大丈夫、ちゃんと手紙は書くし離れてても友達だから」
「でも、でも~」
僕は、梅子のように泣くことも、すがる事も出来なかった。
梅子が泣きやむまで待って、搾り出すような声で
「帰ろうか」
ようやくそれを口に出すのが精一杯だった。
行きとは違い、重い足取りの帰り道、色んなことを考えていた。
梅子は、きっと今日のことを忘れるだろう。
忘れなければならない。
けれど僕は忘れない。
たぶん忘れられない。
どうしてもこれでお別れのような気がしない
なにか、とても、大切な何かをし忘れているようで…。
みたいww。1~読んだよ。
おさない頃の約束なのかな・・。思い出せないようにされていたのかな・・。
ラストは悲しくなってしまっても仕方ないような気がするね。
以前は松梨さんに想いがあったのかな?悟君は。よく分からないけれど、
お話からは松梨さんの片思いのように思える。
ラスト楽しみにしてます!!
お久しぶりです
ちゃんと書いてるね~
全部書き終わったら もう一回通しで読みなおしたいです
完結してから読み直したら変わるかも?
もうちょっとお待ちください
再会はしています。ここのパートは過去部分です。
高校生の登場人物と同一です。
実話ではありません
タウンにはいるかもしれませんが、別人です。w
1からお疲れ様でした。指輪は同じものですよ。
なぜ悟から、梅子へ?続きをお楽しみに!
ただこのとき松梨ちゃんにもらった指輪はいったい何処に行っちゃったのかしら?って
思いました。。
梅子ちゃんのキーホルダー・・夢の隠し場所・・気になるキーワードはいっぱいあるのにねぇ。。
続きが楽しみです^^
松梨ちゃんも梅子ちゃんも実はタウンに居たりする?!w(゚ o゚ )w
大切ななにかってなんだったんだろう?
うーん・・また過去の話に戻って
手がかりを探してみようか。。
ん・・・指輪?
梅子ちゃんからも指輪貰ってたけど、同じものかなぁ・・・^^;