さぁ !! ゆっくりと目を閉じて三つ数えてから開いて・・・、
そしてもぅ一度その招待状を読んで見て・・少女は言った。

妖しげなジュースはオレンジとレモンの香りが鼻につき、
チョッピリ苦いような甘いような何とも言えない美味しい味だった。
私はポケットから電報を出したて開いた、
その象形文字ともアラビア文字ともいえない文字が紙の上で踊り始めている。
まるで花のつぼみが落ちるかのように消えて、
そして新しい文字が芽を出し、
つぼみから花が咲くようにポンポン音をたてて並んで行った。
何とも不思議な光景も昨夜からの夢のようでさほど驚かなくなったが、
それでも心はウキウキとしているのがわかった。
「もぅ読めるでしょ」少女は言った、
「う・・ぅん」私はどぎまぎしながら答えた。
その文面は・・６月１日25時お迎えが来ます・・必ずお二人でどうぞ・・、
それだけが書かれていた。
６月１日って・・今日じゃん、それに２５時って・・・どう言う事。
私は少女の顔を見た、
「ふふ・・魔法時間ね、魔法がかかると１日は限りが無くなるのょ」
そして少女は自分の腕時計を私に見せた。
その腕時計はとても不思議な文字盤をしていた、
渦を巻きながら数字が無限に続いている。
「これって・・・」
「うん、これで言う２５時は今夜の１時ね」
さすがに私は焦った・・・いきなりの招待状、それに行った事のない魔法の遊園地。
それよりも問題は「必ずお二人でどうぞ」の文字、誰を誘えばいいんだ。
誰が聞いたってこんな話を信用する人なんているものか、
私はがっくりと腰を下ろした。
「仕方ないわね・・・私が一緒に行ってあげるわょ」
「え・・ホント」
私はその言葉を待っていた、だってどう見ても少女は経験者に見えるし。
その方が安心だし、ものすごく心強いし、
何よりもその少女と一緒に1分でも多くいたかったのが本音だろう。
「私の名前はサラ・・よろしくね」
「僕は太郎・・・よろしく」
まだ挨拶も済んでいないのに二人は、もうかなり前から親しかった友達のようだった。
「太郎・・今日時間は大丈夫なの?」
「うん、モチロンさサラと一緒に行けるならどんなことだってするょ」
私は心に思っていたことをポロリとしゃべった、
するとサラは少し頬を赤らめて下を向いた。
「ねぇ、まだ時間があるから森に行かない」
「うん、いいょ」
扉の向こうは、広い竹林が続いてる。
時折、涼しい風が竹の葉をそよがせて吹きすぎる。
「へー、家の裏は竹林とは知らなかったょ」
竹林を抜けると小さな丸太小屋がぼっんと一軒見えた、
「こんなところに家があるんだ」
「ここは昔の炭焼き小屋よ、今では使われていないけどね」
私は初めて知った、竹でも炭を作れることを。
そう言えば竹と言えばかぐや姫、チョット作り話でもサラに聞かせてあげる。
サラも負けじと空の話・・・、二人はとりとめのない話に時間を忘れた。
日も暮れて私はいったん叔母の家に戻ることにした、
「それじゃ・・１２時50分に丘の上でね」
「ラジャ !! 」
夕食を済ませて、お風呂もそそくさに出て。
外出着に着替えて、私はベッドの中で時間が来るのを待った。
「よし!! 時間だ、出かけるぞ」
今晩もかなり月と星とが輝いていてかなり明るかった、
丘の上につくとサラはもう来ていた。
「早いんだね・・まだ20分前だょ」
「うん・・・ほら・・・見てみて」
丘の上から見下ろす遊園地はいつもの通りに綺麗な光を出していた、
ん・・・何か違う。
「気が付いた・・・」
サラは言った、
そう・・その遊園地の乗り物がすべて時計なのだ。
昼間見た時は普通の乗り物だったのに、それが全部時計なのだ。
大きな時計に小さな時計、丸い時計に四角い時計。
色んな形の時計がみんな同じ角度に傾いて、地面にめり込んでいる。
あたりは永遠に時が停止したかのように、
物音ひとつなく静まり返っている。

これが魔法の遊園地なのか・・・、私の胸は高鳴りだしていた。