■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味(18)
- カテゴリ:その他
- 2009/04/17 13:22:32
■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味|上 生の哲理|五 (1)
五
生の哲理を終るに臨み、初に立ちかへつて、生の増進とは何であるかといふことを一言して置く必要がある。生の内容は、之れを客觀にしては、やがて天地間の現象がそれであり、之れを主觀にしては、此等の現象に應酬する我れの態度がそれであるから、其の雜多にして果てしなきことは言ふまでもない。而して其の客觀は知識によつて代表せられ、主觀は情意によつて代表せられる。されば生の増進といふは到底生の内容を數字的に算し出だして解釋せらるべき問題ではない。たゞ我等が目安とし得る一つの事實は、要望の滿足から來る快感といふ心理的現象である。此の事實の有無多少によつて生が一層よく其の内容を増進してゐるか否かを判するの外はない。我等は個々雜多の要望を且つ起こし且つ充たして行くところに其の生を營んでゐる。隨つて一層多く要望を起こし且つ充たすのが一層多く増進した生である。同時に一層多くの快感が生ずる。快感の増進が生の増進の目標である所以。
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*註1:終る
「終」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/owaru.jpg
*註2:増進
「増」の旧字体。「土」+「曾」。
「進」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註3:必要・要望
「要」の俗字。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
「望」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bou.jpg
※註4:内容
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。
*註5:知識
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg
※註6:情意
「情」の正字体。「月」が「円」。
※註7:一層
「層」の旧字体。「曽」が「曾」。
*註8:判する
「判」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han_wakaru.jpg
*註9:起こし
「起」の正字体。「走」+「巳」。
*註10:所以
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
(2014/06/16/初校)