Nicotto Town



『精霊の世界、星の記憶』 第5話「出発」②

「これ、セイジのよ」

「ぼくの?」

「うん、セイジの。スエードの葉で編んだ方の袋にはお水、ピシャの葉で編んだ方の袋には木の実が入っているの」

星史は二つの巾着袋をシルビアから受け取りながら、重い方の袋を上下にゆらし、

「こっちがお水だね」

とシルビアに聞いた。

「ええ、そうよ」

とシルビアは微笑んで答えた。

「セイジ、これを腰に巻くといいわ」

とシルビアはさらに星史にやわらかく丈夫な木の蔓を渡す。

星史はそれを受け取り、ベルトのように腰に巻いた。

「蔓にね、こう袋結び付けておくといいわ」

とシルビアは自分の腰に下げている袋を指しながら言った。

星史はシルビアに言われたように、腰に二つの巾着袋を取り付けた。

「セイジ、出かけましょう」

とシルビアは星史の手を取って、

「こっちよ」

と言いながら引いた。

「シリンダの森は広いの。場所によっては、迷路みたいになっていたりするから」

とシルビアはちょっとうつむきながら言った。

そして、

「大丈夫よ、近道を通って行くから。私だけの秘密の道なの」

とさらにシルビアは星史の手を強く握った。

星史はシルビアに引かれるまま、付いていった。

森の景色が途切れ途切れの断片のように、流れて行くような感じがする。

足場も先ほどの土の上の感覚とは違い、宙を歩いているような分けのわからない感覚がした。

まるで時間を短縮しているような感じだった。

そんな摩訶不思議な道を変な感覚と感触を感じながら、星史はシルビアと三日間歩いてきた。

――本当に広いんだなぁ。

と思いながら、星史はシルビアと時間を飛び越えるように歩いていた。

しばらくすると、どこからともなく甘酸っぱいような香りがしてきた。

「もうすぐぬけるわ」

とシルビアがつぶやいた。

森をぬけると、まぶしい太陽の光が差してきた。

森の中のやさしい光とは違って、ちょっと強い光だった。

見上げた空は、星史の住んでいる世界の灰色がかった空とは違い、とても気持ちがいいスカッとするような青色をしていた。

あまりにも心地よい空だったので、星史は思わず立ち止って、両手を空に上げ大きく伸びをした。

#日記広場:自作小説

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2011/04/17 17:43
>若草さんへ

こんにちは!
とても嬉しいコメント、どうもありがとうございます♬(≡^∇^≡)

お褒めくださり、嬉しいです☆
これからけっこう長い旅になっていくと思います♪
よろしくお願いします!^^

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2011/04/17 00:19
ハルさんの文章はすごく読みやすいです
それに、すっとお話しの中に入れて一緒に旅していくことができます

久しぶりの刊行ですね
ずっと楽しみに待っておりました^^



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