フェアリング・サーガ<2.5>
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/15 23:47:40
<from 2.4>
彼はヘブンズ・ゲートの♪マークの付いた呼び鈴を連打した。
ボボ、ボンと、煙が上がって、鍵師が呼び鈴を連打した数だけ登場する。
次に、彼は指を鳴らす。ぱちん、ぱちぱちぱちん…以下略…。するとオートボットが指のならされた数だけ、ぼぼん、と出現した。
鍵師の一人がヘブンズ・ゲートの扉を開く。それに続いてオートボットの一体が、開かれたヘブンズ・ゲートの向こうへと消えた。そして、次々と鍵師がその扉を開くたびに、オートボットは扉の向こうへと去って行った。それらは先行し、超星間通信ネットワークの関係するポイントに潜伏、今回のミッションの偽装/隠蔽/陽動/支援/補助を行う。
最後が彼のミラーリング・アバター<ヒム>の番だった。
鍵師がヘブンズ・ゲートを開くと、ヒムは扉に身体を押し込んだ。もちろん抵抗など無いはずだが、その扉を潜る際、何か違和感の様なものヒムは感じた気がした。しかし、ヒムは気にも止めず扉を潜りぬけた。
ヒムは、逆探知を防ぐため、最短ルートで第三ターミナルへ向かわず、エルエータから第五、第一ターミナル、という風に、順々に大幅に迂回したルートで第三ターミナルへ。さらに、そこからもエンターテイメント・パブリック・サイトを巡り巡ってから交通管制システムにアクセスした。
だが道中、ヒムを視覚情報として捉えられたものはいないはずだ。彼を構成するコードには全く表象情報が存在しない。それどころか、それ故に起こるアバターが化けてしまうことを防ぐための措置も施されている。ステルス・ゴーストだ。今やヒムは存在しない幽霊<ゴースト>なのだ。
先行したオートボットの手引きで、第三ターミナル・スフィア・ウェブ、ジベータ‐シグマ第三惑星通信ネットワークが管理する第三惑星圏交通管理システムに侵入。
既にオートボットによって、交通管理システムには仕掛け<ギズモ>が施されている。目標プラットフォームがある第三惑星低軌道交通管理網を事実上それに掌握されていた。
オートボットがアップロードデータに紛れ込ませて交通システムに仕込んだギズモは、交通ネットワークに干渉し、一時的に交通網の安全を保証し続ける。標的プラットフォーム周辺の交通情報をあらかじめ用意してあるシミュレーションデータを上書きするのだ。それも時間的にはほんの数分。もし何らかの緊急事態が生じシミュレーションと異なる交通事態が発生したとしても、イリーガルエラーとして処理されるに違いない。交通データ修正が始まると共にギズモはエラーデータともに消去されてしまうのだから。
交通システムデータリンクに乗ってヒムは標識ブイの電脳へと飛び移った。ここまでの仕事はオートボット任せだ。ヒムの任務は標的プラットフォームに収められた閉鎖電脳に入った後なのだから。
標識ブイが装備しているアクティブレーダーで、標的プラットフォームの接近を感知する。
ギズモが起動したこと確認し、ヒムは支配下に置いたブイの姿勢制御系を起動。ガスプロペラントを噴射し軌道変更する姿勢制御装置<アポジモーター>を使って、プラットフォームとのランデブーを行うため軌道変更を行った。もちろん、ブイの軌道履歴にその軌道変更の痕跡など残さない。もし発覚するとすれば、厳密にガスプロペラントの残量外的センサで精査し、モーターの作動記録とを照合した場合だが、そんなことは万に一つも起こり得ないし、例えそうなったとしても、いつ、どの時点でそれが起きたのかまではわかるまい。だから気にするまでもない。それにガスの噴射時間は僅かに数秒だ。ツンと突かれた様にブイはちょっとだけ違う方向に流れ出す。だが、それで充分だった。ブイは秒速数キロメートル以上の猛スピードで動いている。僅かに向きを変えるだけで、十分にその軌道は変わってしまうからだ。
僅かにそれる軌道でブイとプラットフォームはランデブーする。プラットフォームが通信を開始する時間を狙って、ブイの通信レーザーを照射するのだ。その光に乗ってヒムはプラットフォームに乗り移る。レーザーを使うのにわざわざ近傍のブイを選んだのは、その起こりうる可能性のある通信リスクを減少させるためだ。レーザーを使うとなると、その通信空間に夾雑物、主にデブリ、が存在すると情報劣化が起こる可能性がある。もちろん高出力の通信レーザーを使えば問題にもならないだろうが、それでは計画がバレてしまう危険性も高まる。だから彼は今回このルートを選択したのだ。
標識ブイには緊急通信用の光学通信装置が設置されている。さらに件のプラットフォームにある光学通信経路には防壁はない。というか、普通ない。なぜなら、普通そんな物理通信手段講じた侵入はないからだ。光学通信は局所的なシステムに組み込まれていることはあっても、直接、電脳界には組み込まれてはいない。その分手間と面倒事が多いのだ。誰もやりたがらない。
間もなく、ブイの通信可能域にプラットフォームは入った。
<to be continued>
今回はかなり適当に書いたので、設定を全く作っていませんでした。
近々、小説を中学生ながらに書こうと思っているので、その時は設定もしっかり考えようと思います。
その時は、またアドバイスお願いします。