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盗月Blog——島村抱月TextData——


■近代文藝之研究|研究|「五人女」に見え…(2)

■近代文藝之研究|研究|「五人女」に見えたる思想 上(2)

文藝の中には理を索め得る、また之れを索めることによつて始めて眞の文藝上の批判の成立する場合がある。從つてまた古風と今風とに論なく、すべての作品は之れを思想の液に浸して始めて其の生命の不朽なる所以が明らめられる。吾等が今西鶴の『五人女』に思想を索めるのも此の意に外ならぬ。
總じて文藝上の作物が、其の發相に於いて情的なるべきの理は、何人といへども之れを否むものはあるまい。其の來たつて我れに觸れ、我れを動かし、我れを醉はすとき、味ひの情にあることは文藝上の第一事實である、何ものも此の事實を覆へす力はない。文藝は情の物である、其の生命の永遠なるは實に其の情の永遠なるが爲めである。情として來たるとき、始めて之れに文藝の銘を打ち、また情として存する限り之れを文藝の類に編み入れる。



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*註1:文藝の中には
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。

*註2:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

*註3:批判
「判」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han_wakaru.jpg

*註4:浸し
「浸」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shin_hitasu.jpg

*註5:所以
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg

*註6:情的・味ひの情・情の物・其の情・情として
「情」の正字体。「月」は「円」。

*註7:覆へす
「覆」の正字。「襾」+「復」。

*註8:永遠
「遠」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註9:編み
「編」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hen_amu.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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2011/04/09 23:35
みれたよ。今日上行こう



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