『精霊の世界、星の記憶』 第2話「森の精霊」
- カテゴリ:自作小説
- 2011/02/26 22:49:02
第一章 シリンダの森
「森の精霊」
少年はまだ夢を見ているかのように、ぼぉーっと周りの景色を見回した。
焦点の合わない目で、大きな大木を見上げた。
――そういえば、大きな樹の夢を見ていた。樹が何か言っていたっけ……。
目が覚めたと思ったんだけど、まだ夢の中なのかな?
と思いながら目線を少しずつ下ろしていくと、ふと隣でこちらを見ているような視線を感じた。
少年は「誰だろう?」と隣でひざを抱えて座っている少女の方を見る。
少年が少女の方を向くと、少女はおもむろに顔を上げた。
少女の目と少年の目が合い、お互いの姿が瞳の中に映る。
にっこりと少女は微笑んだが、少年は少女の姿に釘付けになりじっと見つめたままだった。
――きれいな子だな。髪が金色だ……。
少女は黙ったまますっと立ち上がり、老樹の方を向き手を触れる。
少年もハッとして思わず立ち上がり、もう一度辺りを見回した。
そして、やっと自分がいる場所が一応理解できた。
「こ、ここはどこなんだろう……。ぼくは、大きな樹の夢をみていた。まだ、夢を見ているのだろうか……」
と少年は小さな声でつぶやいた。
その少年の声が、少女の耳に届く。
少女は少年の方を見て、少し首をかしげながら「ココハ?、ドコ?、ナン?、ダロウ」と二回たどたどしくつぶやいた。
そして一度地面の方へ顔を下げて、少年の方へ向き直しおずおずと確かめるように、
「ココハ、ドコ、ナンダロウ。ココハ、セイレイノ、セカイ。ワタシ、ハ、シルビア。アナ、タハ?」
と片言のような言葉でたずねてきた。
少年はあわてて、
「ぼくは星史。森村星史」
と顔を赤くしながら答えました。
「セイ、ジ……。モリ、ムラ、セイジ……」
と少女は、シルビアは繰り返した。
星史は「そうだよ」と大きくうなづく。
「セイジ、ココ、ドコ? ココ、シリンダ=シーリ。シリンダ、ノ、……モリ」
「えっ? シリンダの森? ……、聞いたことがないなぁ。ここ日本じゃないんだね……。どこの国?」
「ク、ニ? クニジャ、ナイ。シリンダ、ノ、モリ……。セイレイノ、セカイ」
「セイレイの世界? ……えっ!、まいったなぁ。まだ夢の中か……」
と星史は頭をかきながら言った。
「チ、ガウ。ユメジャ、ナイ。ホントウノ、セカイ」
「えっ? ……本当の世界。外国じゃないなら、地球じゃないところ?」
と星史が驚きながら言うと、シルビアは、
「エッ?……チ、キュウ……」
とつぶやいて、右手の人差し指を唇にあてて突然クスクスと小さく笑い出した。
笑いがおさまると、
「ゴメン、ナサイ。ココ、地球ヨ」
と星史に言った。
「地球なんだぁ。何か、地球に似ているようだけど……」
と納得がいかないというように、星史はつぶやく。
「デモ、地球ヨ。ソンザイ、シテイル、世界ガ、チガウノ」
「存在している世界が違う? 違うってことは……」
と小さく口に含みながらつぶやき、そして突然、
「ええー! って言うことは、本当にセイレイっていう世界なの?」
とものすごく驚いて言った。
「そうよ」
とシルビアは冷静に大きくうなづきながら言った。
星史はシルビアをじっと見つめた。
「セイレイって、おとぎばなしとかによく出てくる精霊だよね?」
と星史が聞くと、
「タブん……、そう……、かも」
とシルビアは答えた。
「ということは、シルビアも、君も精霊なの?」
「そうよ。もちろん。わたしは、この森、シリンダ=シーリの精霊、なの」
星史はシルビアを頭の上から足までじっと見つめた。そして、
「人間と姿が変わらないんだね」
とひと言、ぽつりと言う。
その言葉を聞いて、シルビアはちょっと苦笑いした。
「姿、形は、そう、変わらないわ。安心、した?」
とシルビアは星史に言った。
「あのさぁ、シルビアは、ぼくの言葉が話せるんだね」
と不思議そうに星史はシルビアに言う。
「ええ。地球の言葉なら、たいてい、話せるわ」
「へぇ、すごいね!」
と星史は思わず感嘆の声を上げた。するとシルビアは恥かしそうに、
「でも、最初は、どこの国、の、言葉か、よくわからなかった、の」
とうつむきながら言った。星史は、そんなシルビアを可愛いと思った。
「そうか。それで最初、片言だったんだね」
とシルビアに笑顔を向けた。そして、
「精霊には、言葉がないの?」
と聞いた。
「あるわ。精霊同士なら精霊言葉を使うわ。でも、木々たちとは心話。しんわ、心で会話するの。あのね、シリンダ=シーリ、シーリは精霊言葉で森っていう意味なのよ」
「へぇ、そうなんだ」
と星史は大きな樹、老樹を見上げながら言った。
「シルビアって、すごいね! この樹とも、話せるんだ!」
「ええ、もちろんよ!」
と言い、シルビアはもう一度老樹を手で触れる。
「セイジ、こうやって。そして目をつぶって」
星史は言われたとおりに老樹に手を触れ、目をつぶった。
「この樹は、セイジを知っている。セイジも、知っているはず。きっと、聞こえるわ。この樹の声が……」
とシルビアはよく澄んだ声で、流れるように言った。
≪・・・・・・つづく≫
とても嬉しいコメント、どうもありがとうございます♬(≡^∇^≡)
星史くんはどうして呼ばれたのでしょう・・・・・・セフィロスさんの真意は?
というところですね?!
森の精霊シルビアさんはやさしい方なので、きっといろいろお世話してくれると思います!^^
ありがとうござます☆
精霊の森 シリンダの迷いこんだ星史
どんな使命を帯びてやってきたのでしょうか
精霊シルビアとこれからどんな旅が始まるのでしょうか
すごく気になります^^